トルコ・シリア大地震でシリアを支援する国はロシアだけ?【ファクトチェック】

トルコ・シリア大地震でシリアを支援する国はロシアだけ?【ファクトチェック】

トルコ・シリア大地震をめぐって、「シリアを支援している国はロシアだけ」という言説が拡散していますが誤りです。国連機関や日本やアメリカなど各国の政府、非政府組織が支援しています。

検証対象

2023年2月6日に発生したトルコ・シリア大地震について「シリアを支援する国はロシアだけ」という言説が拡散した(例1例2)。表示回数が25万回、リツイート・引用リツイートが1000を超えるものもある。(2月28日現在)

画像

リプライには「NATOには支援するお金もないのかも!」「正義はロシア」「ひどい。地震のときは助けるべきじゃないか?」と同調するコメントの一方で、「UNHCRで義援金受け付けています」などと反論する内容もある。

検証過程

中東の衛星放送局「アルジャジーラ」は、トルコ・シリア大地震をうけて、世界各国の政府が資金援助や救助隊の派遣、支援物資の供与などの支援を表明・実施していると報じている。記事内では各国による支援の内容が紹介されており、シリアに対する支援を表明・実施している国のなかにはドイツやニュージーランドなどの西側諸国、EUなども含まれている。

ドイツの公共放送「DW」は、シリアのアサド政権によって開放されたトルコ・シリア国境にある「支援ルート」から運び込まれた国際機関の支援物資がシリアの人々に届けられる様子を報じている。DWの動画内では、「支援ルート」を通って支援物資を運ぶトラックや支援物資が入った段ボールが現地の人々の手に渡る様子が映っている。トラックにはカタールの国旗、段ボールには世界食糧計画(WFP)のマークがあることも確認できる。

NHKの報道によると、シリアのアサド政権は、2月13日、国連安保理が定めた反政府勢力が支配する地域に対する「支援ルート」を、期限付きで、2カ所増やすことを表明した。この「支援ルート」から国際機関を通じた支援がされる。UNHCR(世界難民高等弁務官事務所)やWFP(世界食糧計画)、日本赤十字社、国境なき医師団、セーブ・ザ・チルドレンなどの国際機関やNGO(非政府組織)がシリアでも活動することを見込んで寄付を受けつけている。

日本赤十字社のホームページを確認すると、シリアでは、シリア赤新月社の「巡回診療チーム」が被災地で活動していることがわかる。シリア赤新月社は日本赤十字社の支援を受けており、日本赤十字社は、2月7日、シリア赤新月社に対して1000万円の資金援助を決定したと発表した。また、日本赤十字社は現地にも職員を派遣している。

外務省によると、日本政府は2月10日、シリア政府の要請に基づき国際協力機構(JICA)を通じてテントや毛布などの緊急支援物資を供与することを決定した。政府は国際機関やNGO、シリア復興信託基金を通じてシリアへの支援をしており、その額は総額1850万ドル(約25億2200万円)に及ぶ(2月24日現在)。

アメリカ国際開発庁は、2月9日、トルコとシリアに対して8500万ドル(約114億円)規模の緊急人道支援を提供すると発表した。また、アメリカ財務省国外資産管理室(OFAC)は2月9日、シリアに対する人道支援のために180日間にわたって制裁を免除するという声明を発表しており、災害支援であればアメリカからもシリアに対する寄付や支援が可能となっている。

シリアへの直接の支援以外でも、イギリスはシリアで活動するボランティア救助組織「シリア民間防衛隊」(通称ホワイトヘルメッツ)に地震発生以降、合計380万ポンド(約6億2100万円)の資金援助をしたとCNNは報じている。

判定

以上のことから、シリアを支援している国はロシアだけという言説は誤り。

検証:リサーチチーム
編集:古田大輔

検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。

「ファクトチェックが役に立った」という方は、シェアやいいねなどで拡散にご協力ください。誤った情報よりも、検証した情報が広がるには、みなさんの力が必要です。

X(Twitter)FacebookYouTubeInstagramなどのフォローもよろしくお願いします。またこちらのQRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、真偽が気になる情報について質問すると、AIが関連性の高い過去のJFC記事をお届けします。詳しくはこちらの記事を

もっと見る

斎藤知事は「全国知事会議」の出席率36%? 2つの会議を混同【ファクトチェック】

斎藤知事は「全国知事会議」の出席率36%? 2つの会議を混同【ファクトチェック】

兵庫県の斎藤元彦知事が、百条委員会の尋問を欠席して政府主催の全国知事会議に出席すると報じられました。この件について「斎藤知事のこれまでの全国知事会議出席率=36%」という主張が拡散しましたが、誤りです。全国の知事が集まる会議には、斎藤知事が今回出席する政府主催の「全国都道府県知事会議」と、全国知事会が主催する「全国知事会議」があり、拡散した表は全国知事会主催の出欠です。斎藤知事1期目の全国都道府県知事会議への出席率は約7割です。 検証対象 2024年11月19日、「斎藤知事のこれまでの全国知事会議出席率=36%」という投稿が拡散した。投稿には「全国知事会議 知事出席状況」という表が添付され、斎藤知事は1期目の2021年8月30日から2024年8月2日までの11回中4回出席(出席率36%)したことになっている。 投稿は2024年11月22日時点で約6000件のリポストと約230万件のインプレッションを獲得している。 「今まで通り休むべき。百条委員会の方が大切だ」「2期目当選して最初の知事会、最優先に決まってるやろ」と賛否のコメントが付く一方で、「今回は政府主

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
「(斎藤知事の)パワハラはなかった」と百条委の委員長が発言? 前後の文脈を無視した切り取り動画【ファクトチェック】

「(斎藤知事の)パワハラはなかった」と百条委の委員長が発言? 前後の文脈を無視した切り取り動画【ファクトチェック】

兵庫県知事選で再選した斎藤元彦知事をめぐって、百条委員会(調査特別委員会)の奥谷謙一委員長が「パワハラはなかった」と発言したという動画付きの言説が拡散しましたが、不正確です。拡散した動画は発言の一部を切り取ったもの。奥谷委員長は拡散した動画の発言後、「厳しい叱責を受けたという人はいたか?」と問われて「整理できていないが、『厳しい叱責を受けたことがある』と答えた人は結構おられたと思う」と説明。パワハラに当たるかどうか評価したいと答えています。 検証対象 2024年11月19日、「奥谷委員長が発言してます。パワハラはなかったと」という言説が拡散した。 添付された25秒間の動画では、奥谷委員長が記者から、この日の証人尋問に呼ばれた6人について「パワハラを受けたという人は何人いるのか」という質問を受け、「私の認識では明確に知事の方からパワハラを受けたという方はいらっしゃらなかった」と答えている。 2024年11月20日現在、この投稿は180件以上リポストされ、表示回数は32万回を超える。投稿について「これが正解」「まだ言うかね」というコメントがつく一方で、「そんな

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
アメリカでは帰化して三世代おかないと政治家になれない? 大統領や連邦議会議員に親の国籍は関係ない【ファクトチェック】

アメリカでは帰化して三世代おかないと政治家になれない? 大統領や連邦議会議員に親の国籍は関係ない【ファクトチェック】

「アメリカでは帰化して三代、間におかないと政治家になれない」という言説が拡散しましたが、誤りです。大統領や連邦議会上下院議員になるために、年齢や在住期間の規定はありますが、親の国籍は関係ありません。また、添付画像は日本に関する「帰化した国会議員」のリストですが、実際に帰化した人物はわずかで、ほとんどが誤ったものです。 検証対象 2024年11月3日、X(旧Twitter)で「米国では帰化してから3代間にないと選挙に出られない、つまり政治家になれない」という言説が拡散した。11月19日現在、230万以上の閲覧と1万件を超えるコメントがついている。 コメントには「日本も規制した方がいいですね」「日本も帰化3世までは立候補出ないようにする必要がある」などと同調する意見が続く一方で、「米国で、流石に三世代はないです。」という指摘もある。 検証過程 大統領と連邦議会上下院議員の資格要件を調べると、合衆国憲法に規定がある。 米国大統領の資格要件 合衆国憲法では、大統領は年齢35歳以上であること、生まれながらのアメリカ国民であること、最低14年間アメリカに居住

By 宮本聖二
潜在的な国民負担率は62.9%? 過去のデータで現在は改善【ファクトチェック】

潜在的な国民負担率は62.9%? 過去のデータで現在は改善【ファクトチェック】

「財務省『潜在的国民負担率、62.9%に達しちゃった』」という言説が拡散しましたが、ミスリードで不正確です。2020年にはそのレベルに達していますが、現在は改善傾向で50%台です。 検証対象 2024年11月12日、「財務省『潜在的国民負担率、62.9%に達しちゃった』」「1日8時間働いて5時間分は国に取られる。五公五民どころじゃねーな」という言説が拡散した。投稿にはまとめサイトのリンクが添付されている。 2024年11月12日現在、この投稿は1.1万件以上リポストされ、表示回数は185万回を超える。投稿について「財務省が全国民の敵」「働くの馬鹿みたい」というコメントが付く一方で「公式の報道機関やニュースサイトではありません」というコミュニティノートも付いている。 検証過程 国民負担率と潜在的国民負担率 国民負担率とは、国民の所得に占める税金や年金、社会保険料などの負担の割合だ。租税負担率と社会保障負担率を合計したものを国民負担率、これに財政赤字を加えたものを潜在的な国民負担率という(財務省)。 2023年投稿のまとめサイト記事を引用 検証対

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)