なぜニュースにならないの? 静岡県内の水害画像は本物【ファクトチェック】
台風15号の豪雨被害を受けた静岡県内の様子とされる画像がTwitter上で拡散していますが、AIで作成された画像など真偽不明な情報も混じって混乱を招いています。9月25日に「なぜニュースにならないの?」という文章とともに投稿された3枚の画像は、静岡市南部・巴川の氾濫による被害だと確認できます。
検証対象
9月25日午後10時54分、「なぜニュースにならないの?」という文言と共にTwitterに投稿された3枚の画像は、台風15号の被害の凄まじさを示すものとして大きく拡散した。
このツイートを引用する形で「これもフェイクなのか?」「写真には一部フェイクが混ざってる」といった疑念の声も上がった。台風15号被害をめぐっては数多くの投稿があり、その中には別の災害の写真や、AIで作成した画像などがあるためだ。
検証過程
1枚目の冠水画像に関して出典元をGoogle画像検索とTwitter検索で探したところ、Jリーグ・清水エスパルスの地元ファンだというアカウントが9月24日午前5時9分に「結局床上浸水&車2台アウト」と投稿していた。続くツイートで、撮影場所を静岡市清水区の能島周辺だとコメントしている。
Googleマップで能島地区内のバイパスを背にした駐車場付きのアパートを探したところ、一致する場所を見つけた。
静岡県土木防災課への取材によると、能島近くの巴川には水位が設置されている。県の防災情報サイトSIPOS-RADARで能島の水位グラフを担当職員と一緒にチェックしたところ、9月23日午後10時半ごろ、水位(水色の線)が、4段階のうち最も高い「氾濫危険水位」(赤色の横線)に達して、超えたことが確認できる。
静岡土木事務所は23日深夜、巴川について「午後10時45分に氾濫の危険性が非常に高い『氾濫危険水位』に達した」と発表した。
投稿があった翌24日午前5時ごろの水位を同様にみると、危険水位を超えて氾濫した状況も確認できる。
静岡県河川海岸整備課は「巴川の北側から北街道までに一帯で、浸水被害を職員が現地で確認した」とJFCの取材に答えた。浸水写真の投稿があった能島は、巴川と北街道の間に位置しており、県の情報と一致する。
同課職員が巴川の付近で撮影した複数の写真について、JFCは提供を受けた。「現地調査が広範囲にわたったこともあり、浸水時に撮影できた写真は限られている」というが、痕跡が見てとれる。
静岡新聞は24日、「近くを流れる巴川からは一部地域で堤防を越水、周辺では道路や車が水没する様子が見られた」と報じている。
2枚目の冠水画像について「#清水区 #冠水」とTwitter検索したところ、静岡市清水区にある不動産会社のアカウントが9月24日午前0時12分に「あー、この光景は何年振りかしら」と投稿していた。その後、午前8時過ぎまで約2時間おきに計4回、冠水した様子を複数の写真付きで投稿している。
Googleマップで特徴的な赤い塀の場所を探したところ、静岡市清水区内に同様の塀がある。
3枚目の災害ごみの画像に関して「清水区 災害 ごみ」とTwitter検索したところ、静岡在住というアカウントが9月25日午後4時46分に「清水区押切南の災害臨時ごみ置き場の様子」と投稿していた。
Googleマップから災害ゴミが置かれた場所を探したところ、清水区押切にある「押切南ふれあい公園」で、後ろに見える建物などが一致した。
この状況について、静岡新聞が9月26日に「大量の災害ごみ 静岡市清水区、仮置き場ひっ迫 台風15号」との記事で、「川沿いの押切地区の公園にある仮置き場は25日昼、壊れた家電製品や戸棚などで敷地の半分が埋まった」と写真付きで報じている。
判定
これらを総合すると、3枚の画像はすべて台風15号による静岡市南部の被害の画像で間違いないとわかる。
あとがき
AI作成による偽画像に関するニュースが広がった影響で、静岡豪雨に関する正しい情報までも疑われる事態になっています。偽情報はそれ自体が問題なだけでなく、正しい情報に関しても疑心暗鬼にならざるを得なくなるという悪影響があります。JFCでは間違った情報の検証だけでなく、正しい情報についても確認していきます。
ちなみに、検証対象とした冒頭のツイートについて、静岡市清水区で起きた台風15号による豪雨被害に関する報道は、NHKが9月25日午前11時52分に「静岡市清水区 約5万5000世帯で断水続く 復旧のめどたたず」で、「各地で浸水の被害も相次ぎ、25日朝6時の時点で12の市と町で合わせて2458棟の床上・床下浸水が確認されています」と報じています。
検証対象としたツイート以前に、報道がなかった訳ではありません。地元の静岡新聞は現地で撮影した写真付きで冠水や災害ゴミについて継続的に報じており、その他のメディアも今回の水害を取り上げ続けています。
しかし、安部晋三元首相の国葬など、非常に大きなニュースと時期がかぶったこともあり、水害の報道が少ないと感じた人もいるようです。
検証:杉江隼、JFCリサーチチーム
編集:野上英文、古田大輔
修正
静岡県の防災情報サイトSIPOS-RADARから、検証に使った能島の水位グラフのリンクを加えました。県内の他の水位を確認するには、SIPOS-RADARの左タブから「観測データ」を選び、「雨量・水位一覧表」へ。地図が表示されるので「静岡市南部」などをクリックした後、「観測局名」を選びます。日時を指定すれば、水位とその推移を確認できます。(2022年9月30日)
検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。
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