鳩山元首相「汚染水には放射性物質に加え、金属腐食による多量の不純物が含まれ、海洋生態系への悪影響が極めて深刻」は本当?【ファクトチェック】
「汚染水には放射性物質に加え、金属腐食による多量の不純物が含まれ、海洋生態系への悪影響が極めて深刻」という言説が拡散しましたが、誤りです。放射性物質以外の化学物質等についても福島県条例に基づく測定が実施され、「異常がない」という結果が公開されています。
検証対象
元内閣総理大臣の鳩山氏による「汚染水には放射性物質に加え、金属腐食による多量の不純物が含まれ海洋生態系への悪影響が極めて深刻」という投稿が拡散した。このツイートは2023年8月28日時点で4300回以上リツイートされ、表示回数は82万回を超える。
リプライには鳩山氏に賛同する声の一方で、「データを示して」などと疑義を唱えるツイートも多い。
検証過程
鳩山氏のツイート内の「汚染水」は、「放出しても」と書いているので、国や東京電力が言う「ALPS処理水」を意味しているとみられる。
国や東京電力は「汚染水」を福島第一原子力発電所の事故により発生している高濃度の放射性物質を含んだ水、「ALPS処理水」をトリチウム以外の放射性物質が安全に関する規制基準値を確実に下回るまで、多核種除去設備(ALPS)等で浄化処理した水としている。両者の違いについて、日本ファクトチェックセンター(JFC)がファクトチェックまとめで解説した。
放射性物質の影響についても、JFCはファクトチェックまとめで解説した。国際原子力機関(IAEA)は「福島第一原子力発電所ALPS処理水の安全審査に関する包括的報告書」で、「ALPS処理水の放出が人々と環境に及ぼす放射線影響は無視できる程度」と結論づけている。
そのためJFCは今回、「金属腐食による多量の不純物が処理水に含まれ、海洋生態系に悪影響を及ぼすか」について検証する。
金属腐食による不純物が海洋生態系に及ぼす影響
ALPS処理前の「汚染水」には、放射性物質以外に金属腐食による不純物が含まれている。JFCの取材に対し、東京電力は「震災当時に津波が流入したことにより、海水に由来する塩分や、建屋内に設置されていた機械の潤滑油などの不純物が含まれる」と説明した。
ALPS処理水はどうか。東京電力は放射性物質を除去するALPS処理装置によって「多くの不純物が除去できている」と説明する。水処理の設備は腐食防止を考えて設計されており、「放射性物質除去の過程において金属腐食による不純物の混入の可能性は低い」という。
海洋放出する際には放射性物質以外の化学物質についても測定している。福島県によると、処理水には水質汚濁防止法や「福島県生活環境の保全等に関する条例」施行規則(別表第5が該当し、同表の1及び2については「その他の水域における許容限度」が適用)のほか、「大気汚染防止法に基づく排出基準及び水質汚濁防止法に基づく排水基準を定める条例」(別表第2の2及び3のE水域)に定める上乗せ排水基準が適用されるという。上乗せ排水基準とは、一律排水基準だけでは水質汚濁の防止が不十分な地域において、都道府県が条例によって定めるより厳しい基準だ。
東電は定期的に測定結果を公開している。放射性物質以外の化学物質については、排水前分析結果の公開資料の一般水質分析がそれに当たり、2023年3月23日時点で、44項目について基準値以下となっている。
判定
放射性物質以外の化学物質等については、国や福島県条例に基づく測定をし、公開された結果では基準値以下となっているため、誤りと判定する。
検証:住友千花
編集:古田大輔、宮本聖二、藤森かもめ
検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。
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