(動画)ウクライナがハマスに武器を渡したとBBCが報道?【ファクトチェック】

(動画)ウクライナがハマスに武器を渡したとBBCが報道?【ファクトチェック】

「BBCが『アメリカやNATOがウクライナに渡した武器がハマスに渡り、イスラエルに対して使われている』と報じた」とする動画が拡散しましたが、誤りです。BBCのロゴを悪用した偽動画です。

検証対象

2023年10月10日、西側諸国がウクライナへ渡した武器が、ハマスに渡って、イスラエルに対する攻撃に使われているという内容の投稿が拡散した。添付された動画にはBBCのロゴが使われており、一見BBCのニュースのように見える。

画像

動画は通信アプリ「テレグラム」からX(Twitter)など他のプラットフォームにも広がった。長さ1分15秒の動画は、戦闘の様子や2023年9月に解任されたウクライナの​​オレクシー・レズニコフ前国防相のインタビュー映像などで構成され、次のような英語字幕がついている。

(以下、字幕の内容)

べリングキャットのジャーナリストは、ウクライナの夏の反転攻勢の失敗とハマスのイスラエルの攻撃は関連していると結論づけた。

秘密のデータを分析すると、ハマスの武装勢力が使用する武器の大半をウクライナが提供していたことがわかった。パレスチナ人は、ウクライナ国防省の画策した汚職を背景に銃器、弾薬、ドローンなどを購入していたのだ。それは、NATOの兵器のテロリストへの売却ということだ。

ウクライナのレズニコフ国防相の辞任は、ウクライナが汚職犯罪を隠蔽しようとする動きの一環だ。
 
NATOの同盟国は、ウクライナに武器を提供することで、ウクライナの領土の解放に失敗しただけではない。中東情勢を知らず知らずのうちにエスカレートさせた。

その理由は、ウクライナの汚職のひどさにある。このことが最高レベルまで調査されれば、アメリカは同盟を脱退する正式な理由を得ることになる。ナシム・タレブ教授はすでに、アメリカのNATO離脱の可能性について言及していた。

(字幕はここまで)

画像
写真左)BBCのロゴが入った偽画像 写真右) 偽動画のエンドタイトル

この動画は2023年10月10日に、ロシア発のソーシャルメディア「テレグラム」に投稿された。投稿にはロシア語で、「イギリスのベリングキャットのジャーナリストは、西側諸国がウクライナでの失敗を忘れるためにイスラエルに目を向けたことを察知した」というコメントもついている。

画像

べリングキャット(Bellingcat)は、オランダを本拠とする調査報道機関だ。

ロシアのメドベージェフ前大統領は、動画とほぼ同じ内容のテキストを、テレグラムより1日早い10月9日にXへポストしている。その内容は「ウクライナのナチ政権にわたった武器が、今はイスラエルに対して盛んに使われている」というものだ。

検証過程

問題の投稿に名前が使われたべリングキャットは、投稿された直後の10月11日午前1時59分に、Xの公式アカウントで「べリングキャットが検証したと誤って主張するBBCの映像が出回っています。私たちはそのような結論に達したことも、そのような主張もしていません。これは捏造だ」と、否定した。べリングキャットの創設者エリオット・ヒギンズ氏も「(この動画は)100%フェイクだ」とXにポストしている。

また、2023年5月に発足した調査報道などをするBBCの「BBC Verify」のShayan Sardarizadeh記者は、「BBCのロゴやブランドを使ったこの動画は100%フェイクだ」とXにポストしている。

日本ファクトチェックセンター(JFC)は動画に使われたニューヨーク大学のタレブ教授に取材をした。タレブ教授は、アメリカのNATO離脱の可能性に言及したとされる点について「それはフェイクニュースです(It’s fake news)」と回答し、自身の発言を含む動画の内容を否定した。

判定

「ウクライナがハマスに武器を渡したとBBCが報じた」は、誤り。拡散した動画は、BBCのロゴやブランドを使って偽造されたもので、BBC、べリングキャット、動画に登場する教授の3者がいずれも「フェイクニュースだ」と否定している。

検証:宮本聖二
編集:藤森かもめ、古田大輔、野上英文

検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。

「ファクトチェックが役に立った」という方は、シェアやいいねなどで拡散にご協力ください。誤った情報よりも、検証した情報が広がるには、みなさんの力が必要です。

X(Twitter)FacebookYouTubeInstagramなどのフォローもよろしくお願いします。またこちらのQRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、真偽が気になる情報について質問すると、AIが関連性の高い過去のJFC記事をお届けします。詳しくはこちらの記事を

もっと見る

週刊文春の新谷学元編集長「(取材対象が)結果的に自殺してもしょうがない」と発言? そのような発言はしていない【ファクトチェック】

週刊文春の新谷学元編集長「(取材対象が)結果的に自殺してもしょうがない」と発言? そのような発言はしていない【ファクトチェック】

週刊文春の新谷学元編集長が、報道による取材対象者への影響について「死ねと言ってるわけじゃないけど、結果的に自殺するんだったらしょうがない」と発言したという情報が拡散しましたが、誤りです。そのような発言はしていません。 検証対象 2025年1月23日、新谷氏が「死ねと言ってるわけじゃないけど、結果的に自殺するんだったらしょうがない」と発言したという画像が拡散した。 画像は、新谷氏を「文春砲の生みの親」と紹介した上で「我々は最悪書かれた相手が自殺することも 頭の片隅に置いて それでも書く 僕たちは間違ったことはしていない 死ねと言ってるわけじゃないけど結果的に自殺するんだったらしょうがない」と発言したかのように書いている。 2月4日現在、この投稿は1200件以上リポストされ、表示回数は247万回を超える。投稿について「自惚れるな」「あり得ない」というコメントの一方で、「原典はどちらになりますか」という指摘もある。 検証過程 新谷氏は現在、株式会社文藝春秋の取締役で、文藝春秋総局長だ(文春オンライン)。2012〜2018年に週刊文春の編集長を務め、数々のス

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
朝鮮大学校生は司法試験一次試験免除? 繰り返し拡散する誤情報【ファクトチェック】

朝鮮大学校生は司法試験一次試験免除? 繰り返し拡散する誤情報【ファクトチェック】

「朝鮮大学校生は司法試験の一次試験を免除される」という情報が拡散していますが、誤りです。現在の司法試験には一次試験はありません。また、旧司法試験でも朝鮮大学校だけでなく大学や大学に相当する機関の卒業生は一次試験を免除されていました。 検証対象 2025年1月30日、Xで「朝鮮大学校生 優遇措置 国家試験一次司法試験免除される こんなバカな話があるかよ」という情報が拡散した。投稿には日本第一党の桜井誠氏が演説する動画がついている。 2月4日現在33万を超す閲覧と5500以上のリポストがあり、「これじゃ日本の司法を反日に譲り渡す」「そんな馬鹿な話日本だけじゃないですか」というコメントのほか、「現在の司法試験には一次試験はありません」と指摘する書き込みもある。 同様の情報は繰り返し拡散しており、日本ファクトチェックセンター(JFC)はすでに一度検証している。 検証過程 この情報は、投稿につけられた動画の発言に基づいている。 2024年の東京都知事選挙に立候補した桜井氏が「朝鮮大学校を卒業した人間は 司法試験、一次試験免除なんです こんな馬鹿な話しあるかよ

By 宮本聖二
「在日特権」 働かずに年600万円もらって税金は払わない? 繰り返し拡散する誤情報【ファクトチェックまとめ】

「在日特権」 働かずに年600万円もらって税金は払わない? 繰り返し拡散する誤情報【ファクトチェックまとめ】

「在日特権」という見出しで「働かず年600万円貰って遊んで暮らす優雅な生活」「税金は納めません」などと書かれたチラシの画像が拡散しました。その多くは誤りで、同様の情報は長年にわたって拡散し続けています。 検証対象 2024年11月頃、「差別被害者を装った特権階級 在日特権」と題したチラシの画像がSNSで拡散した。 タイトルの下には「働かず年600万円貰って遊んで暮らす優雅な生活」「犯罪犯しても実名出ません」「税金は納めません」「相続税も納めません」「医療、水道、色々無料」「住宅費5万円程度なら全額支給」などと書かれている。 この投稿には2月3日現在、1.2万超のリポストと170万超の閲覧がある。「こんな在日養うために税金納めてると思うとバカバカしい!」「祖国に帰れ」といったコメントがついている一方で、「ウソを流すのは止めましょう」という指摘もある。 検証過程 ネットで言及される「在日特権」とは 「在日特権」という言葉は、ネット上で繰り返し拡散している。1945年の太平洋戦争終結後、日本による植民地支配が終わったことに伴って日本国籍から離脱した後も

By 宮本聖二
ワクチンで自閉症の発生率が増加?トランプ氏が過去の誤情報を再び拡散【ファクトチェック】

ワクチンで自閉症の発生率が増加?トランプ氏が過去の誤情報を再び拡散【ファクトチェック】

トランプ氏が子どもへのワクチン接種に関連して「自閉症(Autism)は25年前にはほとんど存在しなかった。当時は10万人に1人程度の発生率だったが、今では100人に1人に近い状況だ」などと発言しましたが、誤りです。トランプ氏はワクチン接種により自閉症が増えたと示唆していますが、ワクチンと自閉症との関連性を示す根拠はなく、これまでに何度も検証されてきた誤情報です。 検証対象 2024年12月8日、トランプ氏が米NBC報道番組「Meet the Press」で子どもへのワクチン接種に関して、以下のように発言した(YouTube)。 「If you take a look at autism, go back 25 years, autism was almost nonexistent. It was, you know, 1 out of 100,000 and now it’s close to

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)