マイナンバーカードの暗証番号が判らないと医療を受けられなくなる?【ファクトチェック】
「マイナンバーカードの暗証番号が判らないと医療を受けられなくなる」というツイートが拡散していますが、誤りです。本人確認は顔認証や職員による目視という手法もあります。また、暗証番号を忘れた場合は、本人がマイナンバーカードを市町村の窓口に持参することで再設定ができます。
検証対象
10月9日に投稿された「認知症になると暗証番号が判らなくなり,マイナンバーカードは使えません。(中略)医療を受けれなくなります」というツイートが1.1万件以上のいいね、7500件以上のリツイートを獲得した。
認知症になると暗証番号が判らなくなり,マイナンバーカードは使えません。
(暗証番号が判らないと電子証明の更新が出来なくなるため)
医療を受けれなくなります。
#保険証廃止
リプライには「自分の親が認知症なので、これは切実な事です。」「そういう作戦??」といった反応も見られた。また、検証対象としたツイート以外にも、脳梗塞で暗証番号が言えなくなった親族の例を出して懸念する声もあった。
認知症などで暗証番号がわからなくなるとマイナンバーカードが使えなくなり、医療が受けられないのか、検証する。
検証過程
厚生労働省のマイナンバーカードの健康保険証利用についてというページにはQ&Aコーナーが設けられており、Q5には以下のような記述がある。
受付時に、患者自らがマイナンバーカードを窓口に設置されたカードリーダー(※)に置きます。
1.「顔認証付きカードリーダー」の場合は、
・顔認証(カードのICチップ内の写真データと窓口で撮影した顔を比較) 又は
・患者が4桁の暗証番号を入力
により、本人確認を行います(窓口職員の目視も可)。
2.「汎用カードリーダー」の場合は、
・患者が4桁の暗証番号を入力 又は
・窓口職員の目視
により本人確認を行います。
※マイナンバーカードのICチップの読み取り機能があるカードリーダー
ここにおける暗証番号とはマイナンバーカードを受け取った際に、利用者が設定した4桁の数字(利用者証明用電子証明書パスワード)。
日本ファクトチェックセンター(JFC)が厚生労働省に問い合わせたところ、医療機関で受け付けする際は、暗証番号を入力する他、1. 顔認証付きカードリーダーの場合は顔認証(機器の故障などの場合は窓口職員による目視も可)、2. 汎用カードリーダーの場合は暗証番号を入力できない事情(機器の故障や暗証番号を忘れた場合など)があれば窓口職員による目視ができる、とのことだった。
つまり、暗証番号がわからなくても、他の手法がある。また、マイナンバーカードの暗証番号がわからなくなり、入力を3回間違えてロックがかかってしまった場合は「一旦(市町村の)窓口でロックを解除した上で診療を受けていただく」という。
JFCが地方公共団体情報システム機構に問い合わせたところ、本人が来庁する場合はロックのかかったマイナンバーカードのみの持参で住民票がある市町村の窓口でパスワードの再設定手続きがとれる。「手続きにかかる時間は、(待ち時間を除いて)10-15分程度」という。
判定
暗証番号以外にも、本人確認の手段は設けられており、再設定も可能であることなどから、「暗証番号がわからなくなるとマイナンバーカードが使えなくなり、医療が受けられなくなる」は誤りと判定した。
あとがき
政府が2024年に現在の健康保険証を廃止して、マイナンバーカードと統合する方針を発表して以来、保険証やマイナンバーカードに関する様々な情報が拡散しています。認知症などで暗証番号がわからなくなったときにどうすればいいか、というのもその一つです。
JFCが認知症で暗証番号がわからなくなった場合の対応について、厚労省に問い合わせたところ、以下のような回答でした。
ご本人が暗証番号を失念・不明し、本人での解除ができない場合のお手続きについて、現状は個別のFAQを作成しておりませんが、失念・不明の場合はお住いの市区町村窓口にご相談いただくよういくつかのサイトにて記載しております。
■https://faq.myna.go.jp/faq/show/2404?site_domain=default
■https://www.kojinbango-card.go.jp/faq_pin1/
■https://www.jpki.go.jp/procedure/password.html
また、お住いの自治体やコールセンター・当窓口へお問い合わせいただけますと回答させていただきます。
検証:本橋瑞紀
編集:古田大輔
検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。
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