日本政府、能登へ自衛隊を派遣せず補正予算も組んでいない? 各省庁サイトから確認可能【ファクトチェック】

日本政府、能登へ自衛隊を派遣せず補正予算も組んでいない? 各省庁サイトから確認可能【ファクトチェック】

日本政府がアメリカ・ロサンゼルスの山火事に200万ドル支援を発表したことに対し、「能登へ自衛隊を派遣しない、補正予算も組んでない」という情報が拡散しましたが、誤りです。自衛隊は2024年8月末まで継続して派遣され、能登の復旧復興費を盛り込んだ補正予算は2024年12月に成立しています。

検証対象

2025年1月15日、日本政府がアメリカの山火事に200万ドル支援を発表した。これを批判する文脈で「能登へ自衛隊を派遣しない、補正予算も組んでない」「まずは国内の復興や国民の安心を優先すべき」という情報が拡散した。

動画にはNHKが中継した参議院予算委員会の様子が映っている。2025年1月17日現在、この投稿は1.7万件以上リポストされ、表示回数は930万回を超える。

投稿について「自国民差し置いてなぜLA」「国内の危急を救ってからにしろ」というコメントの一方で「能登を政治利用するな」という指摘もある。

検証過程

能登へ自衛隊を派遣していない?

2024年1月1日午後4時10分、石川県能登半島で最大震度7を観測する地震が発生した。直後の午後4時30分、自衛隊は自主派遣で航空機2機による航空偵察、午後4時45分には、石川県知事からの災害派遣要請を受けて、救助活動や警察・消防の輸送を開始している(令和6年1月2日:令和6年能登半島地震に係る災害派遣について)。

1月3日以降は被災者の生活支援なども実施。2024年8月31日の活動終了までに約114万人が派遣された。自衛隊の支援については防衛省「令和6年能登半島地震への対応」で確認することができる。

補正予算を組んでいない?

補正予算とは、予算作成後の事情の変更(災害や物価の高騰など)によって、その予算に不足を生じた場合、また予算の内容を変える必要が生じた場合に当初予算に変更を加える予算(財務省「用語の解説」)。

2024年12月17日、令和6年度補正予算が成立し、6677億円が能登地域の被災者支援などを含めた自然災害からの復旧・復興に当てられている(NHK)。

判定

2024年の能登半島地震では、自衛隊が地震発生直後から2024年8月31日まで活動し、2025年補正予算として能登地域の被災者支援など自然災害からの復旧・復興のために6677億円が組み込まれている。したがって、「能登半島に自衛隊が派遣されていない」「補正予算を組んでいない」は誤り。

検証:木山竣策
編集:宮本聖二、古田大輔

判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

ファクトチェックやメディア情報リテラシーについて学びたい方は、こちらの無料講座をご覧ください。ファクトチェッカー認定試験や講師養成講座も提供しています。

理論から実践まで学べるJFCファクチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介
日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験
JFCファクトチェッカー認定試験 教材と申し込みはこちら
日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や
JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら
日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は12月22日で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei1222.peatix.com/event/4221579/view 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的に

もっと見る

食品の放射能残留基準をゆるく変更? 2012年から逆に厳しくなった【ファクトチェック】

食品の放射能残留基準をゆるく変更? 2012年から逆に厳しくなった【ファクトチェック】

2024年から食品の放射能濃度の残留基準がゆるくなったという情報が拡散しましたが、誤りです。基準の変更は2012年で、拡散した情報とは逆に基準は厳しくなりました。 検証対象 2025年1月8日、「2024年から食品中の放射能濃度(セシウム137) の残留基準は、極めて高濃度に設定されました。特に水は以前の25万倍です」という情報が拡散した。投稿には「事故前(H20年度)の食品放射線量」と「厚生労働省H24年度基準値」を比較した表が添付されている。 2025年1月17日現在、この投稿は1000件以上リポストされ、表示回数は20万回を超える。投稿について「ゴールをずらすってやつ」「こうでもしない限りあちこちで基準値超えがでてくる」というコメントの一方で「注釈ちゃんと読んだ?」と間違いを指摘する声もある。 検証過程 基準値の変更は2012年 拡散した情報には「2024年に変更された」とあるが、添付された画像を確認すると「事故前(H20年)」と比較して「H24年度基準値」とある。西暦では「2012年度」となり、単純な間違いだ。検証対象の投稿をしたアカウント

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
米フロリダ州の調査でコロナワクチンが生物兵器と判明? ニュースを誤読【ファクトチェック】

米フロリダ州の調査でコロナワクチンが生物兵器と判明? ニュースを誤読【ファクトチェック】

アメリカ・フロリダ州の調査で新型コロナワクチンが生物兵器だと判明したという情報が拡散しましたが、誤りです。根拠とされているニュースは共和党員から「ワクチンは生物兵器で違法にせよ」と州知事に訴える動きがあると伝えたものです。 検証対象 2025年1月13日、Xでアメリカのニュース映像に日本語で「フロリダ州の調査で、新型コロナワクチンが生物兵器であることが判明しました」と書かれた投稿が拡散した。 この投稿は、30万を超す閲覧と2800以上のリポストがあり、「全てのワクチンは人口削減兵器」「日本でも報道してほしい」といったコメントがついている。 コミュニティノートがついて「フロリダの調査で判明ではなく、フロリダのブラバード郡の共和党の執行部が、何かに基づいて、そういう主張をしているに、すぎません」と指摘している。 検証過程 映像は米フロリダ州CBS系列局のニュース 日本ファクトチェックセンター(JFC)は、投稿のニュース映像を確認した。映像の中に見えるCBS12やI-TEAMでGoogle検索するとフロリダ州のWPECというCBS系列局のニュースである

By 宮本聖二
日向灘の地震で揺れた宮崎のショッピングモールの映像? 1年以上前に富山県で撮影【ファクトチェック】

日向灘の地震で揺れた宮崎のショッピングモールの映像? 1年以上前に富山県で撮影【ファクトチェック】

2025年1月13日、日向灘を震源とする地震が起きました。この地震の様子として、ショッピングモール内で人々がしゃがみこむ映像が拡散しましたが、誤りです。この映像は1年以上前に富山県高岡市で撮影されたものです。 検証対象 1月13日午後9時19分頃、日向灘を震源とするマグニチュード6.6の地震が起き、宮崎市などで震度5弱を観測した。直後に「宮崎付近の人地震大丈夫ですか?」などと書いたポストがXに投稿され、拡散した。 投稿には9秒間の映像も添付され、ショッピングモール内が揺れ、人々が座りこむ様子が映っている。この動画は同じく13日、「南海トラフの震源地、宮崎地震時のイオンモール」というタイトルをつけてYouTubeにも投稿されている。 Xの投稿は52万を超える閲覧があったほか190あまりのリポストがつき、「立ってられないね」「すぐに動画撮影してたのすごい」というコメントの一方で、「これいつの?」「宮崎の地震で能登の地震の映像見せるのまじでやばいやろ」といった指摘もある。 検証過程 拡散した映像の中に見える看板に「AEON MALLからのご案内」という文字

By 宮本聖二
NHKは地震が起こるのを知っていたから対応が早い? 速報システムがある【ファクトチェック】

NHKは地震が起こるのを知っていたから対応が早い? 速報システムがある【ファクトチェック】

NHKがニュース番組放送中に地震があった際、キャスターが地震の原稿をすぐに読み始めたことについて「NHKは地震が起こることをあらかじめ知っていた」という投稿が拡散しましたが、誤りです。速報の仕組みが整えられています。 検証対象 2025年1月13日、「速報鳴ってから映像に見切れるFDフロアーディレクターが原稿渡すまでわずか11秒です。いくら何でも早過ぎやしませんかね😅」という投稿がXで拡散した。投稿に続くスレッドではこの地震が「人工地震」であるかのような主張もある。 2025年1月14日現在、この投稿は300件以上リポストされ、表示回数は35万件を超える。「確かに不自然なぐらい原稿渡されるまでが早い」と同調するコメントの一方、「日々相当な訓練をされてるんですね」というコメントもついている。 検証過程 動画はNHKニュースの切り取り 日本ファクトチェックセンター(JFC)が確認したところ、この動画は1月13日午後9時からのニュースウォッチ9。NHKプラスで見ることができ、拡散した動画は午後9時19分41秒から44秒間を切り取ったものだ。内容は改変さ

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)