(動画)トランスジェンダーの格闘家が試合相手の頭蓋骨を折った?【ファクトチェック】

(動画)トランスジェンダーの格闘家が試合相手の頭蓋骨を折った?【ファクトチェック】

総合格闘技のトランスジェンダー格闘家ファロン・フォックス選手が試合相手に勝利した後、インタビューを受ける動画が、「頭蓋骨を骨折させた」という文言とともに拡散しましたが、不正確です。別の試合で相手に骨折を負わせたことはありますが、この試合ではありません。音声も改変されています。

検証対象

拡散したツイートには、女性の総合格闘技の試合の一部と試合後のインタビュー動画が添付され、以下の文言が記されている。

【トランスジェンダーの末路】
トランスジェンダーの格闘家ファロン・フォックスが39秒で相手を倒し、頭蓋骨を骨折させる。

以前はこれを女性に対する暴力と呼んでいましたが、今ではトランスの権利として祝福されています。

画像

投稿は2023年5月16日時点で22万回以上表示され、引用を含めたリツイート数は430件を超えた。返信欄には、「これで勝って嬉しいの?」「ヒデェᕦ(ò_óˇ)ᕤ」などの反応もあった。

このツイートは元々、英語で拡散していたツイートを翻訳したものだ。元ツイートは1000万回以上表示され、4000RTを超えているが、こちらにはユーザーから「対戦相手の頭蓋骨は折れていない」という注釈(コミュニティノート)がつけられている。

英語のツイートに関しては、Reutersが検証記事を公開し、誤りと判定している。また、今回の検証対象である日本語のツイートの投稿者は、4月9日に「一部でデマ情報と出回っております」とも追記している。

検証過程

英語の注釈から、ツイートに添付された動画は2013年3月2日に実施された総合格闘技の試合で、トランスジェンダー格闘家ファロン・フォックス選手とエリカ・ニューサム選手の対戦だとわかる。

YouTube上で試合の全体が映っている動画を見ると、7:05に試合が始まり、7:40ごろ、右膝が試合相手の顔面に当たり、勝利している。

10:22からインタビューで話し始めるが、その声は検証対象のツイートのものとは全く異なる。ツイッター上の動画は不自然に声が低く、元動画を確認すると高い声で話しており、音声が改変されていることが確認できる。

また対戦相手は試合後も意識があり、自分の足で立っている。当時の試合を報じる複数の記事に頭蓋骨の骨折という情報はなく、ファロン・フォックス選手自身も「頭蓋骨を折った」というツイートが拡散した後に否定している

この検証対象の動画とは異なるが、ファロン・フォックス選手は2014年9月13日、タミカ・ブレンツ選手と試合をし、ブレンツ選手は眼窩底(がんかてい)骨折をしている。

判定

ファロン・フォックス選手は対戦相手に眼窩底骨折を負わせたことがあるが、検証対象の試合では骨折をさせていない。また、インタビューの音声は改変されていた。以上のことから、不正確と判定した。

検証:堀口野明
編集:藤森かもめ、古田大輔

検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。

「ファクトチェックが役に立った」という方は、シェアやいいねなどで拡散にご協力ください。誤った情報よりも、検証した情報が広がるには、みなさんの力が必要です。

X(Twitter)FacebookYouTubeInstagramなどのフォローもよろしくお願いします。またこちらのQRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、真偽が気になる情報について質問すると、AIが関連性の高い過去のJFC記事をお届けします。詳しくはこちらの記事を

もっと見る

週刊文春の新谷学元編集長「(取材対象が)結果的に自殺してもしょうがない」と発言? そのような発言はしていない【ファクトチェック】

週刊文春の新谷学元編集長「(取材対象が)結果的に自殺してもしょうがない」と発言? そのような発言はしていない【ファクトチェック】

週刊文春の新谷学元編集長が、報道による取材対象者への影響について「死ねと言ってるわけじゃないけど、結果的に自殺するんだったらしょうがない」と発言したという情報が拡散しましたが、誤りです。そのような発言はしていません。 検証対象 2025年1月23日、新谷氏が「死ねと言ってるわけじゃないけど、結果的に自殺するんだったらしょうがない」と発言したという画像が拡散した。 画像は、新谷氏を「文春砲の生みの親」と紹介した上で「我々は最悪書かれた相手が自殺することも 頭の片隅に置いて それでも書く 僕たちは間違ったことはしていない 死ねと言ってるわけじゃないけど結果的に自殺するんだったらしょうがない」と発言したかのように書いている。 2月4日現在、この投稿は1200件以上リポストされ、表示回数は247万回を超える。投稿について「自惚れるな」「あり得ない」というコメントの一方で、「原典はどちらになりますか」という指摘もある。 検証過程 新谷氏は現在、株式会社文藝春秋の取締役で、文藝春秋総局長だ(文春オンライン)。2012〜2018年に週刊文春の編集長を務め、数々のス

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
朝鮮大学校生は司法試験一次試験免除? 繰り返し拡散する誤情報【ファクトチェック】

朝鮮大学校生は司法試験一次試験免除? 繰り返し拡散する誤情報【ファクトチェック】

「朝鮮大学校生は司法試験の一次試験を免除される」という情報が拡散していますが、誤りです。現在の司法試験には一次試験はありません。また、旧司法試験でも朝鮮大学校だけでなく大学や大学に相当する機関の卒業生は一次試験を免除されていました。 検証対象 2025年1月30日、Xで「朝鮮大学校生 優遇措置 国家試験一次司法試験免除される こんなバカな話があるかよ」という情報が拡散した。投稿には日本第一党の桜井誠氏が演説する動画がついている。 2月4日現在33万を超す閲覧と5500以上のリポストがあり、「これじゃ日本の司法を反日に譲り渡す」「そんな馬鹿な話日本だけじゃないですか」というコメントのほか、「現在の司法試験には一次試験はありません」と指摘する書き込みもある。 同様の情報は繰り返し拡散しており、日本ファクトチェックセンター(JFC)はすでに一度検証している。 検証過程 この情報は、投稿につけられた動画の発言に基づいている。 2024年の東京都知事選挙に立候補した桜井氏が「朝鮮大学校を卒業した人間は 司法試験、一次試験免除なんです こんな馬鹿な話しあるかよ

By 宮本聖二
「在日特権」 働かずに年600万円もらって税金は払わない? 繰り返し拡散する誤情報【ファクトチェックまとめ】

「在日特権」 働かずに年600万円もらって税金は払わない? 繰り返し拡散する誤情報【ファクトチェックまとめ】

「在日特権」という見出しで「働かず年600万円貰って遊んで暮らす優雅な生活」「税金は納めません」などと書かれたチラシの画像が拡散しました。その多くは誤りで、同様の情報は長年にわたって拡散し続けています。 検証対象 2024年11月頃、「差別被害者を装った特権階級 在日特権」と題したチラシの画像がSNSで拡散した。 タイトルの下には「働かず年600万円貰って遊んで暮らす優雅な生活」「犯罪犯しても実名出ません」「税金は納めません」「相続税も納めません」「医療、水道、色々無料」「住宅費5万円程度なら全額支給」などと書かれている。 この投稿には2月3日現在、1.2万超のリポストと170万超の閲覧がある。「こんな在日養うために税金納めてると思うとバカバカしい!」「祖国に帰れ」といったコメントがついている一方で、「ウソを流すのは止めましょう」という指摘もある。 検証過程 ネットで言及される「在日特権」とは 「在日特権」という言葉は、ネット上で繰り返し拡散している。1945年の太平洋戦争終結後、日本による植民地支配が終わったことに伴って日本国籍から離脱した後も

By 宮本聖二
ワクチンで自閉症の発生率が増加?トランプ氏が過去の誤情報を再び拡散【ファクトチェック】

ワクチンで自閉症の発生率が増加?トランプ氏が過去の誤情報を再び拡散【ファクトチェック】

トランプ氏が子どもへのワクチン接種に関連して「自閉症(Autism)は25年前にはほとんど存在しなかった。当時は10万人に1人程度の発生率だったが、今では100人に1人に近い状況だ」などと発言しましたが、誤りです。トランプ氏はワクチン接種により自閉症が増えたと示唆していますが、ワクチンと自閉症との関連性を示す根拠はなく、これまでに何度も検証されてきた誤情報です。 検証対象 2024年12月8日、トランプ氏が米NBC報道番組「Meet the Press」で子どもへのワクチン接種に関して、以下のように発言した(YouTube)。 「If you take a look at autism, go back 25 years, autism was almost nonexistent. It was, you know, 1 out of 100,000 and now it’s close to

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)