(動画)太平洋沿岸の津波? 過去の映像が拡散 被害状況の確認に注意を

(動画)太平洋沿岸の津波? 過去の映像が拡散 被害状況の確認に注意を

地震や津波など大規模な災害が発生すると、被害に関する動画がSNSで拡散します。しかし、それが実際の映像とは限りません。過去の別の災害の映像の使い回しや、生成AIで作った映像などに注意が必要です。誤情報の拡散で実際の被害状況がわかりにくくなり、避難や救助に影響を与える危険性があります。

検証対象

2023年12月2日夜、フィリピン近海を震源とする地震によって津波が発生、南西諸島から日本列島の太平洋側沿岸に3日朝まで津波注意報が出た。その際、過去の津波映像を使って、海岸に近づかないように呼びかけるSNSの投稿が拡散した。映像にはANN(テレビ朝日をキー局としたネットワーク)のロゴが左上にある。

画像

この投稿自体は、この映像が今回の地震にともなって発生した津波であるとは書いていない。しかし、過去の映像とも書いていないために誤解を招く危険性がある。同じ動画を紹介する投稿はSNSで広く拡散した。

検証過程

投稿された映像のスクリーンショットで画像検索をすると、YouTube上のANNのアカウント「ANNnewsCH」がアップロードした全く同じ映像が見つかった。

動画タイトルは「【動画】津波がトンガに押し寄せた瞬間映像 1.2mを観測(津波映像が含まれています)(2022年1月16日)」。概要欄には「南太平洋のトンガ近くの火山で大規模な噴火が発生した影響で、トンガでは1.2mの津波が観測されました。こちらの映像は15日にトンガで撮影された映像」とある。

画像

判定

今回拡散した言説は偽情報や誤情報とは言えない。12月2日夜の地震によるものとは説明していないからだ。しかし、注意喚起のために過去動画を紹介したとしても、2日夜に発令された津波注意報と結びつけて投稿することで誤解する人はいる。発信者も受信者も誤解の拡散を防ぐための注意が必要だ。

あとがき

大規模な自然災害が発生すると、その災害とは直接関係のない映像が拡散することがあります。過去の災害映像やAIで生成・加工した映像の拡散が目立ちます。

日本ファクトチェックセンター(JFC)では、2022年9月の台風15号による静岡県の災害で拡散した画像がAIによる偽画像だったという記事を配信しています。

善意から注意を呼びかけたとしても、誤解を生む可能性は常にあります。拡散によって閲覧数を伸ばすことを狙うコンテンツも存在します。投稿元や過去映像の使い回しではないかなど確認しましょう。

検証:宮本聖二
編集:古田大輔

検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。

「ファクトチェックが役に立った」という方は、シェアやいいねなどで拡散にご協力ください。誤った情報よりも、検証した情報が広がるには、みなさんの力が必要です。

X(Twitter)FacebookYouTubeInstagramなどのフォローもよろしくお願いします。またこちらのQRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、真偽が気になる情報について質問すると、AIが関連性の高い過去のJFC記事をお届けします。詳しくはこちらの記事を

もっと見る

ワクチン接種で献血禁止の偽情報/AI動画にラベルをつける取り組み/欧州議会選挙と偽情報・情報工作【注目のファクトチェック】

ワクチン接種で献血禁止の偽情報/AI動画にラベルをつける取り組み/欧州議会選挙と偽情報・情報工作【注目のファクトチェック】

✉️ 日本ファクトチェックセンター(JFC)がこの1週間に出した記事を中心に、その他のメディアも含めて、ファクトチェックや偽情報関連の情報をまとめました。同じ内容をニュースレターでも配信しています。登録はこちら。 ワクチン接種で献血が禁止になるという言説が再び拡散。詐欺サイトに誘導するために新聞社を装ったアカウントが登場しました。AIで生成された動画・画像にラベルをつける取り組みをTikTokが開始するという発表がありました。欧州では、来月に迫った欧州議会選挙を前に偽情報の拡散や情報工作への警戒感が高まっています。 JFCのファクトチェック記事 「日本政府がコロナワクチン接種者の献血を禁止」は誤り 日本政府がコロナワクチンを接種した人の献血を禁止するという言説が拡散しましたが、誤りです。日本赤十字社では接種から一定期間が経過すれば献血を受け入れています。「ワクチン接種者の献血禁止」は繰り返し拡散しています。 「日本政府がコロナワクチン接種者の献血を禁止」は誤り 接種から一定期間経過すれば献血できる【ファクトチェック】日本政府がコロナワクチンを接種した人の献

By 宮本聖二, 古田大輔(Daisuke Furuta)
国民民主党、榛葉賀津也幹事長の偽アカウントが出現 政治家のなりすましに注意

国民民主党、榛葉賀津也幹事長の偽アカウントが出現 政治家のなりすましに注意

国民民主党の榛葉賀津也幹事長のなりすましアカウントがX(旧Twitter)に現れて、本人が注意を呼びかけています。投資詐欺に誘導されたり、個人情報を抜き取られたりするなどの危険性があります。 榛葉幹事長本人が注意を呼びかけ 2024年5月8日、国民民主党の榛葉幹事長はXアカウントで、自身のなりすましアカウントが出現したことに「 【ご注意ください】榛葉賀津也を名乗る『なりすまし』の偽アカウントが確認されました。絶対にURLをクリックしないでください」と注意を促しました。 このなりすましアカウントは、Xによってすでに凍結されている。 なりすましアカウントの特徴 デザインは、榛葉幹事長のアカウントと全く同じだが、@から始まるIDはアルファベットと数字の羅列で、フォロワーはゼロだ。 これまでも著名人や政治家のなりすましアカウントが次々に出現しているが、その多くがこうしたIDやフォロワーがゼロかわずかである。 あとがき こうしたなりすましアカウントの多くは、LINEなどに誘導した後投資に関する情報を提供すると言った文言でユーザーからお金を騙し取ったり、個

By 宮本聖二
「ファッションの祭典『メットガラ』にケイティ・ペリーが登場」は誤り 画像は生成AI【ファクトチェック】

「ファッションの祭典『メットガラ』にケイティ・ペリーが登場」は誤り 画像は生成AI【ファクトチェック】

歌手のケイティ・ペリーが、バラをあしらったドレス姿で、ファッションの祭典「メットガラ」に参加したかのような画像が拡散しましたが、誤りです。画像はAIで生成されたもので、ケイティ本人がメットガラに出席していないと否定しています。 検証対象 2024年5月7日、歌手のケイティの白いドレス姿の画像がX(旧Twitter)で拡散した。投稿には「メットガラ」のハッシュタグが付けられて、あたかも5月6日(現地時間)にニューヨークのメトロポリタン美術館で開かれた「メットガラ」に、ケイティが参加したかのようだ。 拡散したポストは5月9日現在で6.7万件以上リポストされ、表示回数は1696万回を超える。投稿について「素晴らしい」「美しい」というコメントの一方で「これはAI」という指摘もある。 検証過程 メットガラ(MET GALA)は、年に一度開かれるファッションの祭典。今年のドレスコードは「The Garden of Time(時間の庭)」で、各界の著名人らが華やかで個性的な姿で登場した。  ケイティは、過去に何度もメットガラに独創的なドレスで参加して話題となってい

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
能登半島地震「5月14日から珠洲市で弁当なくなる」は不正確 避難所では提供を継続【ファクトチェック】

能登半島地震「5月14日から珠洲市で弁当なくなる」は不正確 避難所では提供を継続【ファクトチェック】

「5月14日から珠洲市では弁当がなくなる」という言説が拡散しましたが不正確(ミスリード)です。5月15日以降支給されなくなる人はいますが、珠洲市は避難所で生活している人や生活に困窮している人などには弁当の提供を続けます。 検証対象 2024年5月6日、能登半島地震で被災した珠洲市について、X(旧Twitter)で、「5月14日から珠洲市では弁当すら無くなります...」「理由は食中の危険性があるから」などと書いた投稿が拡散した。投稿には、珠洲市健康増進センターとの電話のやりとりだとする内容も載せている。この投稿は2024年5月10日現在、320万回以上の表示回数と9900件以上のリポストを獲得している。 検証過程 珠洲市は3月14日から、被災者に夕食弁当を支給してきた(NHK、北陸中日新聞七尾支局)。 これは避難所で申し込み用紙に記入した人全てに提供してきたもので、避難所で生活している人以外も弁当を受けとっており、5月10日現在で約2000人の市民が利用している。 珠洲市のウェブサイトによると、仮設住宅の完成・入居が進んだことや、気温の上昇による食

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)