台風15号で被災した静岡市で給水所に行った車に警察が駐禁切符を切っていた?【ファクトチェック】
2022年9月、台風15号で被災した静岡市清水区の給水所で「水を貰いに行った車に警察が駐禁切符を切っていたとの複数の目撃証言」というツイートが拡散しました。県警によると、交通整理のために出動しましたが、駐禁切符を切った事実はないとのことです。
検証対象
2022年9月24日にTwitterに投稿された「【悲報】大雨により取水設備が被害を受け5万世帯以上で断水が発生中の静岡市清水区さん、『仕方なく給水所へ水を貰いに行った車に警察が駐禁切符を切っていた』との複数の目撃証言」というツイートが、1.2万件近くのリツイート、3万件以上のいいねを獲得した。
被災地の給水所で水を貰いに行った車が駐禁を切られたのかを検証する。
検証過程
日本ファクトチェックセンター(JFC)は「給水所付近で駐禁切符を切っていた」といわれる静岡市清水区三保を管轄する静岡県警清水署に取材した。
清水署副署長によると、9月24日に給水所の周辺住民から「給水所付近で渋滞している」「車を出せない」という通報が数件あり、署員を派遣した。「用件が終わり次第、速やかに移動してください」などと交通整理するためだったという。緊急事態のため駐車禁止などの取り締まりはしておらず、駐禁切符について「切った事実がないので記録はない」という。
交通整理をしていた件について、県警本部は9月25日、公式Twitterで「豪雨災害に伴う給水所周辺における駐車方法に関する苦情が寄せられています。ルールに則った駐車にご協力をお願いします。県警からも注意喚起又は指導をさせていただきます」と呼びかけている。
「駐禁を切ったという目撃証言」と記している検証対象ツイートは、4枚の画像でツイートを紹介している。そのうち「駐禁」に触れているのは2つあり、片方はツイートの中身や返信でも「目撃した」という明言はしておらず、現在は削除されている。もう片方は伝聞形式だ。両者とも、駐禁の現場を実際に見たという「目撃証言」ではない。
JFCは静岡市にも取材をしたが「駐禁を切られた」という苦情電話などは来ていないという。
判定
県警は「駐禁で切符を切った記録は無い」と説明。周辺住民の通報を受けて、給水所付近へ出動したという目撃情報は正しいが、駐車については「注意喚起または指導」のみをしていたという。
県警だけでなく、静岡市への取材などから「静岡市清水区の給水所付近で駐禁切符を切っていた」という言説は不正確と判定した。
あとがき
この件については、地元の静岡新聞社も「給水所付近で駐禁切符「切った事実はない」 静岡県警、SNS投稿を否定 台風15号清水区断水」という記事を配信しています。
検証対象となったツイートが拡散したのは、台風で現地が被災した9月24日当日。県警本部や清水署、静岡市には、災害の混乱に対応している最中に、この件で非難や事実確認の電話がかかってきたそうです。
災害時は混乱が広がり、現場の目撃証言であっても、正確であるとは限りません。確認が取れないままに非難の声などが寄せられると、災害救助や復旧に支障を来す恐れもあります。良かれと思った拡散が問題を引き起こさないよう、注意が必要です。
検証:金子祥子
編集:古田大輔
検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。
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