山火事は兵器によって起こされている? 大規模火災のたび拡散する陰謀論 【ファクトチェック】

全国各地で相次ぐ山火事をめぐって、兵器によって起こされているからだなどといった情報が拡散しましたが、誤りです。日本では、山火事は例年1〜5月に集中して発生しています。大規模な火災のたびに国内外でこうした陰謀論が拡散します。
検証対象
2025年3月24日、「やっぱり直線状に燃えてますね。通常の山火事で、こんな燃え方は絶対しません。明らかにDEW(指向性兵器)で焼き払っていますね」という情報が拡散した。
投稿は愛媛県今治市で撮影された山火事が燃え広がる動画を引用している。
各地で相次いだ山火事に関連して「#スマートシティ火災」「#DEW火災」などのハッシュタグが付いた投稿や「誰かが放火してるんじゃないの?」「DEWで焼き払ってるとしか思えない」という情報も拡散している(例1、例2、例3)。
検証過程
相次いで発生した山火事
2025年2月から3月にかけて大規模な山火事が日本各地で発生している。2月26日、岩手県大船渡市では市の面積の9%にあたるおよそ2900ヘクタールが焼失する山火事が発生し1人が死亡した。3月31日現在消防は警戒を続けている(NHK)。
3月23日には岡山市と愛媛県今治市で山火事が発生し、3月30日現在岡山市は鎮火に至っていないとしている(NHK)ほか、今治市は3月31日午前に鎮圧を宣言した。(朝日新聞)。
さらに、25日には宮崎市で山火事が発生し、26日午後6時半の時点でほぼ消し止められた(NHK)。
DEWとは
大規模な山火事が発生すると、「DEW(指向性兵器)による攻撃」という言説や「スマートシティのための土地を確保するために火災が起こされている」などの言説が投稿される。
DEWはDirected Energy Weaponsの略で、レーザーのような動画と共に拡散することが多い。過去にも山火事と関連付ける言説が拡散し、日本ファクトチェックセンター(JFC)でも検証、「誤り」と判定している。


上から下に燃え下がる場合は「直線状」
拡散した投稿の中には「直線状に燃えてますね。通常の山火事で、こんな燃え方は絶対しません」というものがある。
公益財団法人国際緑化推進センターが公開する「林野火災の特徴」によると、火災が斜面上を燃え上がる場合には、火先線はほぼ楕円形で拡大する。燃え下がる場合には火先線は直線状に拡大するという。つまり、山の上から燃え下がる場合、線状に燃え広がるのは自然な燃え方だ。
年間に平均1279件の山火事が発生
2025年は特に多いのか。林野庁によると、2019〜2023年にかけて、山火事は年間平均1279件発生している。1日あたりにすると、全国で毎日約4件の山火事が発生しているという(林野庁「山火事予防!!」)。
また、山火事の7割は1月から5月にかけて発生し、山林に落ち葉が積もることや、風が強いこと、乾燥などの自然条件が重なることで起きやすくなるという。山火事の原因は分かっているものの中では「たき火」が最も多く、次いで草木などを焼却する火入れだ(林野庁「山火事の直接的な原因にはどのようなものがあるの」)。
一方で、2019年~2023年にかけての山火事における焼損面積は1年平均705ヘクタールとなっており、2900ヘクタールあまり焼失した大船渡市の山火事は近年でも規模は大きい。
大船渡市の火災については警察の情報として「作業小屋から火が出て燃え広がったと見られる」という報道もある(NHK)
判定
例年、山火事は1300件ほど発生し、約7割が1~5月に集中して発生している。また、拡散している投稿が引用した動画は林野火災として自然な燃え方だ。よってDEWによって起こされたという情報は誤りと判定する。
検証:木山竣策
編集:宮本聖二、古田大輔
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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