中国大使館「大地震の可能性が高い」と日本への渡航や留学中止を呼びかけ? 地震への一般的な注意喚起【ファクトチェック】

駐日中国大使館が、大地震が発生する可能性が高いことを理由に、日本への渡航や留学の中止、帰国を呼びかけたという情報が拡散しましたが、誤りです。大使館は、日本への旅行や留学については慎重に計画し、不動産の購入は慎重に選択することを勧めていますが、渡航中止や帰国を求めてはいません。
検証対象
2025年4月15日、「在日本中国大使館よりお知らせ『日本では大地震が発生する可能性が高いと想定し、中国国民は日本への渡航や留学を中止するよう勧告します。すでに日本にいる中国国民は直ちに帰国してください!』」という投稿が拡散した。
投稿は中国語の投稿を引用している。引用元の投稿をXの機能で翻訳すると拡散した言説と同じ文言になる。
2025年4月17日現在、この投稿は4300件以上リポストされ、表示回数は307万回を超える。投稿について「えっみんな帰るの!」「これでほんとにあったら人工地震」というコメントの一方で「帰国しろとか、留学するなとかは書いてない」という指摘もある。
検証過程
日本ファクトチェックセンター(JFC)は駐日中国大使館のウェブサイトを確認した。
大使館は2025年4月14日に「駐日中国大使館は中国国民に対し、地震災害に注意し、予防するよう呼びかけている」というタイトルの記事を配信している。
記事は、2025年3月31日に日本政府が公表した南海トラフ巨大地震の「新被害想定」に関する報道(NHK、時事通信、読売新聞)を受け、日本に滞在する中国人に対し、地震対策を講じるよう呼びかけている。記事を自動翻訳した内容は次の通りだ。
1.防災意識を効果的に高め、地震時の自助救助知識を適宜理解・習得し、飲料水、食料、防災・救急用品などの防災物資を適切に備蓄します。
2. テレビ、インターネット、ラジオなどを通じて地震の動向、気象警報、防災情報に注意し、携帯電話のアプリを使用して災害リマインダーを設定し、災害発生後はできるだけ早く避難してください。
3. 災害発生後、避難所でのみ食料、休息、通信などの基本的な必需品を安定的に確保できます。事前に近くの避難所の情報を確認し、自治体が発令する防災・避難指示に従い、速やかに避難所など安全な場所へ移動することをお勧めします。
4. 災害が発生したときに、適宜連絡を取り、支援を受けることができるように、「中国領事館アプリ」またはWeChat「中国領事館」アプレットを通じて海外在住者として積極的に登録してください。
5. 関連するすべての要素を考慮して、日本への旅行や留学については慎重に計画し、不動産の購入は慎重に選択することをお勧めします。
記事にはこの他、国交省の避難マップや、気象庁の中国語情報サイト等、災害時に必要な情報のリンクがある。
日本は地震が多く、同様の注意喚起は日本政府自身も繰り返し発信している(内閣府)。中国に限らず、日本に滞在・渡航する自国民に対し、発災時に情報を得る方法を教えたり、災害に備えた準備を促したりする大使館や政府は珍しくない(在日アメリカ大使館、イギリス政府)。
中国大使館は、記事の5項目目に「日本への旅行や留学については慎重に計画」「不動産の購入は慎重に選択」と記しているが、情報提供や安全意識の向上を目的とする一般的な注意喚起の範囲であり、日本への渡航や留学の中止、帰国を勧告しているわけではない。
判定
中国大使館は南海トラフ地震の「新被害想定」をもとに、在日中国人に地震対策を呼びかけ、日本への旅行や留学、日本の不動産購入について慎重になるよう勧めている。しかし、これは日本政府や他国の大使館も実施している一般的な注意喚起で、渡航や留学の中止、帰国の勧告はしていない。よって誤りと判定した。
検証:木山竣策
編集:古田大輔
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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