能登半島地震、発生直後から変化する偽情報【ファクトチェックまとめ】
能登半島地震をめぐって、大量の誤情報/偽情報が拡散しました。日本ファクトチェックセンター(JFC)では、継続的に情報を検証し、事実確認を続けています。災害発生時から復旧・復興など、それぞれの段階で何が話題になるかの傾向があります。他メディアの記事も含めてまとめて解説します。
JFCの能登半島地震関連記事
JFCが地震の発生時から継続的に発信している検証記事です。今後も新しい記事を更新していきます(最終更新2024年1月27日)。
災害時に広がる偽情報5つの類型
2024年1月5日配信。災害時に広がりやすい偽情報を5つの類型に分類しています。災害発生から4日と初期の段階なので、発生時に多い「実際と異なる被害報告」「不確かな救助要請」などの事例を多く取り上げています。
「輪島市の集団避難はビルゲイツの別荘に連れていかれる」は誤り
2024年1月22日配信。アメリカで性的人身売買で起訴されたエプスタイン元被告に関する話題が世界的に拡散したタイミングで広がった陰謀論です。避難生活が長引くにつれ、避難所をめぐる偽情報が増えています。
「志賀原発から海上に油19800リットルが漏れ始めた」は誤り
2024年1月22日配信。地震によって志賀原発でトラブルが発生したのは事実です。しかし、発表の一部を抜き出して、実際よりもはるかに大量の油が流出し始めたように書くのは誤りです。発信元はこれまでにもJFCが検証している信頼性が低いサイトです。
「隆起で障害と化した消波ブロック」は誤り
2024年1月17日配信。今回とは関係ない映像を使って、実際の被害と勘違いさせることは誤情報/偽情報の定番です。画像検索を使えば、すぐに検証できます。ツールを活用した方法はJFCファクトチェック講座5をご参照ください。
政府の被災者への貸付はたった20万円」は不正確
2014年1月17日配信。意図的ではなくとも、限られた情報をもとにして誤った言説を拡散してしまう例もあります。政府の支援策は広範で複雑なので、公式サイトなどで確認しなければ間違いやすい話題です。
「仮想通貨で寄付を呼びかけるサイト」は誤り
2024年1月15日配信。実在するサイトに見せかけた偽サイトは、災害に限らずネット詐欺で非常に多い手口です。URLを確認する、実在するサイトの名前を検索して本物と比較するなど、個人情報を入力する前に慎重な対応が必須です。
報道ヘリは救助の妨げか 災害で拡散する批判の検証
2024年1月13日配信。この記事は純粋なファクトチェック記事ではありません。被災地を飛んだ多くの報道ヘリが救助の妨げになった例があるかを全て確認するのは非常に困難です。そのため、関連する情報を列挙して、1995年の阪神・淡路大震災で問題視された報道ヘリの運用が現状どうなっているかを解説しました。
「金沢市が用意した1.5次避難所 入るのに罹災証明書が必要」は誤り
2024年1月12日配信。行政を批判する情報も災害時には拡散します。混乱の中で行政が問題のある対応をした事例は過去にも多数あります。しかし、誤った情報に基づく批判は被災者の間に誤解を生み、現場にさらなる混乱をもたらします。
「ヤマザキパンは添加物だらけ、人口削減のためにパンを運んでいる」は誤り
2024年1月10日配信。食品添加物に関する誤情報/偽情報は、普段から大量に拡散しています。JFCでもこれまでに何度も検証してきました。添加物に批判的な人たちの間でこういった情報は拡散しがちです。
“変電所で爆発音”の記事削除は「人工地震工作の隠蔽」は誤り
2024年1月3日配信。人工地震説は地震に関する陰謀論で最も典型的なものです。JFCは地震のたびに専門家の解説を引用した検証記事を出しています。今回は「変電所で爆発音」という記事がニュースサイトから削除されたことが疑念を広げました。爆発の事実がなかったことが確認されたための削除でしたが、こういった疑いを呼ぶこともあることから、修正情報の配信などの対応が重要であることがわかります。
過去の津波映像や人工地震説など
2024年1月3日配信。地震などの災害については、YouTubeやTikTokなどで大量の過去動画が見つかります。誰でも簡単に動画編集できるようになったことから、東日本大震災の動画を使って「能登半島の津波」と嘘をついたり、「人工地震の証拠」と語ったりする事例が、特に動画プラットフォームで蔓延し、LINEオープンチャットやテレグラムで共有されています。ソーシャルメディアよりも閉鎖された空間であるメッセージングアプリでの陰謀論の拡散については、ほとんど対策がとられていない状況です。
他メディアによるファクトチェック
JFC以外にもファクトチェックに取り組んでいる事例はあります。ここではそのいくつかを紹介します。
NHKによる検証記事
NHKは「フェイク対策 ウソの情報対策 関連ニュース」というページで、災害に限らずあらゆる誤情報/偽情報の検証や解説などの関連記事をまとめています。能登半島地震をめぐっても「偽の救助要請(1月5日)」「避難や生活支援に関する誤情報(1月15日)」などの記事を公開しています。
ファクトチェック団体による記事
日本にはJFC以外に国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)の認証を得たファクトチェック団体が2つあります。
そのうち、リトマスは1月27日現在、「石川県知事のヘリ輸送言及『今頃』はミスリード」「『志賀原発、海上に19800リットル油漏れ始める』はミスリード」「『気象庁が能登の地震波形人工的と認めた』は誤り」の3本の検証記事を出しています。
また、InFactも1月27日現在、「岸田首相はテレビで総裁選への思いなどをふんぞり返りながらベラベラ喋っていたか?」という検証記事を出しています。
その他のファクトチェック
ハフポスト日本版も1月27日現在、「ドアが壊れ外に出られない…3年半前の『拾い画』で被害装う?」「能登地方地震の被災者装う詐欺か。PayPayで自身への寄付募る投稿」という2本の検証記事を出しています。
偽情報は繰り返し拡散 予習して予防を
記事の冒頭で掲載した「災害に関する偽情報の5類型」でも指摘したように、同じような誤情報/偽情報が災害のたびに繰り返し拡散します。過去の事例を学ぶことが、これからの災害での偽情報拡散の予防につながります。
JFCではAIを活用してユーザーからの質問に応じて、関連するJFCの検証記事を届けるLINEアカウントを運用しています。そちらもぜひ活用してください。
検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。
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