アイスランド政府、国民の突然死急増を受けコロナワクチンを中止?【ファクトチェック】
新型コロナワクチンについて「アイスランド政府、国民の突然死急増を受けコロナワクチンを中止」という言説が拡散しましたが誤りです。アイスランド保健局は「新型コロナウイルスのワクチンを禁止していないし、突然死の急増もない」と否定しています。
検証対象
2023年12月6日、「アイスランド政府、国民の突然死急増を受けコロナワクチンを中止」という言説がX(旧Twitter)で拡散した。2023年12月11日現在、このポストは3000回以上リポストされ、表示回数は61万件を超える。
投稿について「ワクチンは無駄」というコメントの一方で、「非常に怪しい情報」との指摘もある。
ロイターやAFPは、「アイスランドで新型コロナワクチンの接種が中止された」という言説についてファクトチェックしており、いずれも「誤り」と判定している。
検証過程
拡散した投稿は、新型コロナウイルスのワクチンの危険性などを発信するBrainDead Worldというサイトの「アイスランド政府、国民の突然死急増を受けコロナワクチンを中止」という記事を引用したものだった。この記事には「アイスランドの日刊紙Morgunbladidでこのニュースを発表した」との記述があるが、Morgunbladid紙へのリンクはない。
記事の署名欄を確認したところ、The People’sVoice(TPV)という別サイトの英語の記事を翻訳したものだとわかった。日本ファクトチェックセンター(JFC)は過去にも新型コロナに関する言説をファクトチェックしているが、TPVは新型コロナやワクチンをはじめ、偽情報の拡散を繰り返すNews Punchに関連するサイトだ。TPVの記事にはMorgunbladid紙へのリンクがついているが、リンク先に該当する記事は存在しなかった。
JFCは今回拡散した言説について、アイスランド保健局に問い合わせた。
アイスランド保健局の担当者は「アイスランドは新型コロナウイルスのワクチンを禁止しておらず、突然死の急増もない」と、拡散した言説を否定した上で、「この秋冬は、60歳以上の全員、5歳以上の基礎疾患のある人々、医療や介護に関わる人々を対象にワクチンの接種を実施・推奨している」と回答した。
担当者は、現在のアイスランドの新型コロナワクチンの確保と利用の方針について、「(ワクチンの)廃棄を最小限にするため、ワクチンの購入量を減らすとともに、複数回の接種による効果と健康上のニーズがある人に重点を置いている」という。
判定
アイスランド保健局はJFCの取材に対し、「新型コロナウイルスのワクチンを禁止しておらず、突然死の急増もない」と回答した。したがって、「アイスランド政府、国民の突然死急増を受けコロナワクチンを中止」は誤り。
あとがき
アイスランド保健局は、人口の82%(5歳以上のほぼ全て)が新型コロナウイルスのワクチンの接種を受け、3回以上接種した人は人口の56.1%、4回は17.3%になるというデータを公表しています
アイスランドにおける新型コロナワクチンの情報については、以下のウェブサイトが参考になります。
・アイスランドにおけるワクチン接種の概要(英語・アイスランド語)
・新型コロナワクチンの最新状況(アイスランド語)
・新型コロナワクチンの最新状況(英語)
・60歳以上の国民の2回目接種率について(英語)
検証:木山竣策、高橋篤史
編集:宮本聖二、藤森かもめ、古田大輔、野上英文
検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。
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