「BBC、コロナワクチンが超過死亡を引き起したと認めた」は誤り。逆にその証拠はないと報じている【ファクトチェック】

「BBC、コロナワクチンが超過死亡を引き起したと認めた」は誤り。逆にその証拠はないと報じている【ファクトチェック】

「イギリスの公共放送BBCが、コロナワクチンが超過死亡の原因であると認めた」という言説が拡散しましたが、誤りです。根拠として引用されたBBCの記事は「コロナワクチンと超過死亡の因果関係の証拠はない」と報じています。

検証対象

「BBCニュースが、コロナワクチンが超過死亡を引き起したと認めた」という言説(例1例2)が拡散した。164万回以上の表示と5500件以上のリツイートを獲得しているツイートもある(5月1日現在)。

言説のもととなったのは、The People’s Voice(TPV)というサイトの記事「BBC News Finally Admits COVID Vaccines Caused ‘Excess Deaths’ in 2022(BBCニュース、ついにコロナワクチンが2022年の超過死亡を引き起したと認める)」だ。

リプライ欄には、ツイートに同調する声もあったが、「デマですよ正しくBBCの記事を読んでいないのがバレバレです」や「(イギリス)在住 毎日 ニュース見てるけど、聞いてないな」などの指摘も多く見られた。

検証過程

TPVは米国に拠点を置くニュースサイトで「大手メディアの扱わないニュースを扱うことで読者に真実を伝える」と自称している。連絡窓口はcontact@newspunch.comで、偽情報の拡散を繰り返していることで知られるNews Punchのドメインとなっている。News Punchについては、日本ファクトチェックセンター(JFC)が過去にも誤情報をファクトチェックした。

今回のTPVの記事を読んでみると、冒頭に「BBCがコロナワクチンが接種者の超過死亡を引き起こしたと認めた」と書いてある。しかし、記事には「BBCが認めた」と言える根拠が書かれていない。

TPVの記事では「BBCがイギリス各地の超過死亡を報じている」と述べ、「BBCは政府の公的資金による宣伝機関であり、コロナワクチンの安全性について故意に嘘をついてきた」と批判している。

続いて、イギリスに拠点を置くメディアThe Exposéの記事やBBCの記事、英国国家統計局の公表資料を引用している。しかし、そのいずれにも、BBCがワクチンによる超過死亡を認めたという事実はない。

なお、The Exposéのコロナワクチンに関する記事は、Health Feedbackから何度も「誤り」の判定を受けている。Health Feedbackは、世界中の科学者のネットワークで構成されたファクトチェック団体で、フランスに拠点を置く。また、2020年からは、世界保健機関(WHO)が主導するワクチンの安全性に関するプロジェクト(Vaccine Safety Net)に参加している。

引用されていたBBCの記事を確認すると、たしかに、ワクチンが心臓への影響など命にかかわる副作用を及ぼす可能性に触れている。しかし、BBCは同じ記事の中で、統計データからコロナワクチンと超過死亡の因果関係は認められない、としている。

BBCの記事の小見出しは、“No evidence of vaccine effect”(ワクチンによる影響の証拠はない)である。BBCがコロナワクチンが超過死亡を引き起こしたと認めていないことがわかる。

判定

ツイートが引用した記事に、BBCがコロナワクチンを超過死亡の原因として認めたという根拠はなく、BBCは逆に「因果関係は認められない」と報じている。「BBC、コロナワクチンが超過死亡を引き起したと認めた」は誤り。

検証:高橋篤史
編集:古田大輔

検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。

「ファクトチェックが役に立った」という方は、シェアやいいねなどで拡散にご協力ください。誤った情報よりも、検証した情報が広がるには、みなさんの力が必要です。

X(Twitter)FacebookYouTubeInstagramなどのフォローもよろしくお願いします。またこちらのQRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、真偽が気になる情報について質問すると、AIが関連性の高い過去のJFC記事をお届けします。詳しくはこちらの記事を

もっと見る

立憲民主・泉健太代表の偽アカウント出現 選挙中のなりすましに注意

立憲民主・泉健太代表の偽アカウント出現 選挙中のなりすましに注意

立憲民主党の泉健太代表が偽アカウントへの注意を呼びかけています。政治家のなりすましアカウントは選挙への影響もありうる他、詐欺的なサイトへの誘導や個人情報を取られる危険があるため注意が必要です。 泉代表が注意喚起 2024年4月23日、立憲民主党、泉健太代表がXの公式アカウントでなりすましアカウントが登場しているとしてユーザーに注意を呼びかけた。 なりすましだとする投稿に「偽アカウントです」と注釈を入れて「決して騙されないでください」と書いている。 検証過程 泉代表が添付した偽アカウントの1つは既に凍結されていた。「テスタ」というアカウント名の偽アカウントは現在も存在し、投資関連の投稿をしている。 プロフィール欄には本人のアカウントと同じ文言が記載されプロフィール画像も同じだが、アカウント名やIDが異なる。 また、公式アカウントのフォロワーは4.4万人いるのに対し、なりすましアカウントは4人しかいない。 あとがき 著名人や政治家を騙る偽アカウントや偽広告が次々と出現しています。詐欺サイトへの誘導や個人情報を取られる危険があり、すでに巨額の被害が

By リサーチ チーム
「(動画)『裏金議員、増税メガネを選んだのは国民』と著名人が語りかけている」は誤り 投票を呼びかける2022年の映像を加工【ファクトチェック】

「(動画)『裏金議員、増税メガネを選んだのは国民』と著名人が語りかけている」は誤り 投票を呼びかける2022年の映像を加工【ファクトチェック】

著名人が選挙の投票を呼びかける動画に「裏金議員、増税メガネを選んだのは国民」などの字幕がついた投稿が拡散しましたが、誤りです。元の動画は、2022年の参議院議員選挙で政治参加や投票の大切さを訴えた動画です。字幕は後から加えられたものです。 検証対象 2024年4月8日、「裏金議員、増税メガネを選んだのは国民」「無関心、無投票は無責任」「立ち上がれ日本!」という文言とともに、著名人らが政治参加や投票について語る動画がX(旧Twitter)で拡散した。このポストは2024年4月24日時点で130万回以上表示され、1400件のリポストを得ている。 「裏金議員や国民を苦しめる政党ではいけないという事を芸能人達が伝えてる動画ですね」や、「自民党をぶっ壊せ!」などのコメントがつく一方で「動画自体は投票はあなたの声2022という運動の一環で作成されたもの」という指摘もある。 検証過程 動画は「中立的な」市民グループが制作 拡散した動画の元動画は、政治への関心を高めて投票率をあげる目的で、市民団体「VOICE PROJECT」が、2022年6月の参議院選挙に合わせ

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
国民民主党玉木代表の偽アカウント出現 次々に現れる「なりすまし」に注意

国民民主党玉木代表の偽アカウント出現 次々に現れる「なりすまし」に注意

国民民主党の玉木雄一郎代表のX(旧Twitter)のなりすましアカウントが現れて、玉木氏が自身の公式のアカウントで注意を呼びかけています。なりすましアカウントは次々に出現し、詐欺的なサイトへの誘導や個人情報を取られる危険があるため注意が必要です。 玉木代表が注意喚起 2024年4月23日、玉木代表がXの公式アカウントで、自身のなりすましアカウントが登場しているとしてユーザーに注意を呼びかけた。 なりすましだとする投稿にバツマークを書き入れて、「詐欺アカウントです。騙されないでください!通報に協力してください。」と書いている。 なりすましアカウントを見分ける なりすましアカウントは、玉木氏のアカウントのデザインとほぼ同じだ。 しかし、おかしな点が二箇所ある。IDが@tamakiyuiaihiro、ローマ字読みで「タマキユイアヒロ」となっている。また、フォロワーが公式アカウントは36万人以上いるが、なりすましアカウントは4人しかいない。 あとがき 著名人のなりすましアカウントや偽の広告は、SNSに次々と出てきています。詐欺サイトへの誘導や個人情報を

By 宮本聖二
「ゼレンスキー、辞職」は誤り ウクライナ政府から発表はない【ファクトチェック】

「ゼレンスキー、辞職」は誤り ウクライナ政府から発表はない【ファクトチェック】

ウクライナのゼレンスキー大統領が辞任するとの言説が広まりましたが、誤りです。ウクライナ政府の発表はありません。ゼレンスキー政権で閣僚の一部が辞任するのではないかという議員の発言がありますが、大統領ではありません。 検証対象 2024年4月20日、「【速報】ゼレンスキー、辞職」という、ツイッター速報の記事のリンク付きのポストが拡散した。拡散したポストは、4月22日現在で130万回以上の表示回数と1100件以上のリポストを獲得している。 検証対象についた記事は、インターネット掲示板「5ch」の書き込みを引用元に挙げているが、その書き込みの情報源は何も書かれていない。また、同じく5chを引用元とする言説は、他のまとめサイトでも拡散している。 検証過程 日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ゼレンスキー大統領が辞任するという発表があったかを検証した。 まず、ウクライナ大統領府の公式ページを確認した。この情報が拡散した2024年4月20日の一週間前の4月13日ごろから4月23日まで、ゼレンスキー大統領の辞任に関連するニュースなどは見つからない。 一方で、

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)