「選択夫婦別姓制度が適用されると、名字の異なる人が増えて郵便配達に支障がある」は誤り【ファクトチェック】

「選択夫婦別姓制度が適用されると、名字の異なる人が増えて郵便配達に支障がある」は誤り【ファクトチェック】

選択的夫婦別姓になると、名字の異なる人が同じ地番に住むことになり、郵便屋さんに支障が出るという言説がありますが、誤りです。同じ住所に異なる姓の人が住む例は現在までも数多くあり、郵便局は郵便物に記された宛名にこれまでも届けていると説明しています。

検証対象

「選択的夫婦別姓制度が適用されると、家長がはっきりせず、バラバラの名字で同じ家に住む人が増えて郵便屋さんが困ると言っている」などという内容のツイートが拡散した。4月17日現在、610万件以上の表示があり、リツイート・引用リツイートは2500を超える。

画像

この書き込みに対して「配達員はマジで困る!」というリプライもあったが、「我が家はそれぞれ世帯主で苗字が違いますが郵便屋さんが混乱したことはありません」「私の旧姓と家族の苗字を併記した郵便受けで10年以上ですが、郵便も宅配も混乱なく届けていただいてます」など否定する書き込みも多数あった。
「困る」かどうかは個々の配達員によって感じ方が異なる可能性がある。日本ファクトチェックセンター(JFC)は、実際に郵便配達に支障が出るのか検証した。

検証過程

そもそも、二世帯・三世帯住宅や旧姓で働く人など、同じ地番に異なる名字の人たちが住んでいる事例は現在でも多い。日本ファクトチェックセンター(JFC)は、日本郵便株式会社に問い合わせた。日本郵便の広報からは以下の回答があった。

「弊社では、同一住所に異なる姓の方がお住まいであっても、郵便物等に記載されたあて名へ配達しております。引き続き、正確な配達を行うよう努めてまいります」

これまでも同一住所に複数の名字の人が住んでいても、郵便物の宛名通りにそれぞれの人に届けているように、今後、選択的夫婦別姓が実現したとしても、対応は変わらないということだ。

また、選択的夫婦別姓制度について調査検討を進めてきた「内閣府男女共同参画局」に問い合わせたところ、これまで姓の異なる人が増えると郵便配達に支障が出るかに関して検討や調査を実施したことはないという。

この投稿をしていたアカウントに、問い合わせフォームを通して取材を申し入れたが、17日の午後5時までに返信はなかった。

判定

以上により「選択的夫婦別姓でバラバラの名字で同じ家に住む人が増えると郵便配達に支障が出る」というのは誤り。

あとがき

検証:宮本聖二
編集:古田大輔、藤森かもめ

検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。

「ファクトチェックが役に立った」という方は、シェアやいいねなどで拡散にご協力ください。誤った情報よりも、検証した情報が広がるには、みなさんの力が必要です。

X(Twitter)FacebookYouTubeInstagramなどのフォローもよろしくお願いします。またこちらのQRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、真偽が気になる情報について質問すると、AIが関連性の高い過去のJFC記事をお届けします。詳しくはこちらの記事を

もっと見る

「NATO各国首脳がウクライナの政策に失望しているとBBC報道」は誤り 捏造された動画【ファクトチェック】

「NATO各国首脳がウクライナの政策に失望しているとBBC報道」は誤り 捏造された動画【ファクトチェック】

NATOがウクライナの政策に不満を抱いているというBBCニュースを装った映像が拡散しましたが、誤りです。ニュースの引用元とされた欧州の調査報道機関べリングキャットの創設者が「偽物だ」と否定しています。 検証対象 2024年5月14日、ロシア発のSNSテレグラムに、BBCのロゴとタイトルをつけたニュース映像が拡散した。動画は1分45秒で、NATO各国とウクライナの間で戦闘への動員などを巡って意見が対立していると主張している。ニュースソースは「ベリングキャット」としている。 動画のキャプションにはロシア語で「NATOがウクライナの戦闘動員に不満を抱いている」と書かれ、13万6000を超える閲覧と1600以上のいいねを獲得している。 検証過程 検証対象の動画がテレグラムに投稿された翌日の5月15日、べリングキャットの創設者エリオット・ヒギンズ氏が、自身の公式Xで、拡散した動画は偽物だと投稿した。「BBCとべリングキャットの偽動画が、またテレグラムで拡散している。2023年11月以降、これで少なくとも7本目だ」と指摘している。 誤・偽情報や映像などを検証する

By 宮本聖二
「韓国のソウル金浦空港には日本語の表示がない」は誤り 各所に案内表示がある【ファクトチェック】

「韓国のソウル金浦空港には日本語の表示がない」は誤り 各所に案内表示がある【ファクトチェック】

「韓国のソウル金浦空港には日本語の表示がない」という言説が拡散しましたが、誤りです。金浦国際空港には、日本語の案内表示が各所にあります。 検証対象 2024年5月7日、「『国際線出国ゲート』日本の成田空港にはハングルの案内があるが 韓国のソウル金浦空港に日本語の案内は無い」という投稿が、空港内とみられる2つの写真とともに拡散した。この投稿は2024年5月15日現在、30万回以上の表示回数と1800件以上のリポストを獲得している。 検証過程 投稿にある写真をGoogle画像検索(写真1、写真2)で検索したところ、写真1(エスカレーター頭上の案内表示)は旅行代理店サイトにある成田空港第1ターミナル地下1階エスカレーターの写真と一致した。写真2は金浦空港の保安検査場の入り口だとわかった。 日本ファクトチェックセンター(JFC)は、金浦国際空港に日本語の表示があるかどうかをGoogle Mapを使って調べた。 Google Mapの検索窓に金浦国際空港を入れて検索すると12000枚あまりの写真が出てくる。そのうち空港内の表示を見ると、韓国語のほか、英語、中国

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
(動画)「米軍機を追い払うロシアの戦闘機」は誤り シミュレーションゲームの映像【ファクトチェック】

(動画)「米軍機を追い払うロシアの戦闘機」は誤り シミュレーションゲームの映像【ファクトチェック】

「米空軍のSR-71ブラックバードを追い払うロシアのSu-27戦闘機2機」という動画が拡散しましたが誤りです。動画はゲームをもとに作成されたものです。 検証対象 2024年5月、「米空軍のSR-71ブラックバードを追い払うロシアのSu-27戦闘機2機」という動画が拡散した。動画には米空軍の偵察機SR-71にロシアの戦闘機2機が接近する様子が映っている。 拡散した言説はロシアの外務省情報局長を名乗る人物のアカウントがXに投稿し、現在は削除されている。その後、別のアカウントから同じ文言と動画を使った言説が投稿されている。 検証過程 拡散した言説にある戦闘機の名称「SR-71」と「Su-27」でGoogle検索すると、2024年5月7日に投稿されたYouTubeの動画がヒットする。Xで拡散した動画と同じものだ。 動画の概要欄には「Created with DCS」と明記されている。DCSとは、ロシア人が設立したソフトウェア会社「Eagle Dynamics」のDigital Combat Simulatorというフライトシミュレーションゲームの略称だ。拡散

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
ワクチン接種で献血禁止の偽情報/AI動画にラベルをつける取り組み/欧州議会選挙と偽情報・情報工作【注目のファクトチェック】

ワクチン接種で献血禁止の偽情報/AI動画にラベルをつける取り組み/欧州議会選挙と偽情報・情報工作【注目のファクトチェック】

✉️ 日本ファクトチェックセンター(JFC)がこの1週間に出した記事を中心に、その他のメディアも含めて、ファクトチェックや偽情報関連の情報をまとめました。同じ内容をニュースレターでも配信しています。登録はこちら。 ワクチン接種で献血が禁止になるという言説が再び拡散。詐欺サイトに誘導するために新聞社を装ったアカウントが登場しました。AIで生成された動画・画像にラベルをつける取り組みをTikTokが開始するという発表がありました。欧州では、来月に迫った欧州議会選挙を前に偽情報の拡散や情報工作への警戒感が高まっています。 JFCのファクトチェック記事 「日本政府がコロナワクチン接種者の献血を禁止」は誤り 日本政府がコロナワクチンを接種した人の献血を禁止するという言説が拡散しましたが、誤りです。日本赤十字社では接種から一定期間が経過すれば献血を受け入れています。「ワクチン接種者の献血禁止」は繰り返し拡散しています。 「日本政府がコロナワクチン接種者の献血を禁止」は誤り 接種から一定期間経過すれば献血できる【ファクトチェック】日本政府がコロナワクチンを接種した人の献

By 宮本聖二, 古田大輔(Daisuke Furuta)