能登半島地震 「ボランティアを募集していない」は不正確 被災地域によって異なる【ファクトチェック】

能登半島地震 「ボランティアを募集していない」は不正確 被災地域によって異なる【ファクトチェック】

4月1日で能登半島地震の発生から3ヶ月。「ボランティアを募集していない」という言説が拡散しましたが、不正確です。募集していない自治体もありますが、被害の大きい地域を中心に人手が今も必要で、ボランティアを募集しています。

検証対象

2024年3月26日、「震災から3ヶ月たったが現在ボランティアは殆どいない状況。募集をしていない、しても来ない、それは寝泊まりする場所も水も食料もないからです」という言説が拡散した。270万の閲覧と4700のリポストがあり、「3ヶ月放置?」「この惨状を伝えないメディア」などの書き込みがある一方で「随時募集しています、他府県の自治体からも応援が来てくれています」などの指摘もある。

検証過程

被害の大きい地域ではボランティアを募集している

能登半島地震では、道路の寸断や断水などの影響でボランティアの受け入れが困難な期間が長く続いた(NHK)。受け入れが始まってからもボランティアの数や活動が少ないという指摘がある(産経新聞)。

しかし、被害の大きい地域を中心に4月5日現在、ボランティアを募集している(能登半島地震・石川県災害ボランティア情報)。

例えば、能登町では、人手を必要としており、4月もボランティアをほぼ毎日受け入れる予定だ。能登町災害ボランティアセンターは「ボランティア活動者の募集について」というページを公開している。

能登町災害ボランティアセンターの4月のスケジュール

能登町では4月14日まで、1泊2日で40人を募集。内容は「災害ゴミの片付け、運搬など」で、1日目の朝、金沢駅に集合し、現地で活動後はベースキャンプで宿泊。翌日も活動して金沢駅で解散する(石川県災害ボランティア情報・1泊2日型災害ボランティア募集)。

輪島市は4月8日に日帰りで活動できるボランティアを30人程度募集。金沢駅発着のバスで移動し、現地では「災害ゴミの片付け、運搬など」を担う。

ボランティアを募集していない地域も

一方、液状化の被害が深刻だった新潟市西区では現在ボランティアの募集をしていない(新潟市西区社会福祉協議会)。

富山県氷見市は、県外からのボランティアは受け入れていない。ボランティア登録している県内居住者も活動が止まっているという(氷見市災害ボランティアセンター)。

被害の大きい石川県では地域別に人数、期間を限ってボランティアを募っている。被災した各市町からの要望をもとに県が一括して募集する。日本ファクトチェックセンター(JFC)は石川県災害対策ボランティア本部に取材した。

担当者は、ボランティアの人数を制限する理由について、「壊れた家の片付けには住民の立ち会いが必要だが、離れた避難所で暮らしているケースが多い。また、地震によってひどく損壊した家屋が多く、それらの家屋は公費解体の対象となるなど、ボランティアの活動できる範囲が限られている」と話す。

宿泊施設の整備、水や食料の問題

被災地域では、発災からしばらくはボランティアが来ても宿泊する専用施設がなかった。

石川県は、被災地でボランティアが長時間活動できるように、2月26日に穴水町の中学校の体育館にテントを並べたベースキャンプを開設。これによって奥能登地域で長く活動できるようになった(奥能登ベースキャンプ)。

穴水町に設けられたボランティア宿泊用の「奥能登ベースキャンプ」 写真:石川県災害ボランティア本部

3月24日には、七尾市にもボランティアが宿泊するテント村が開設された(NHK)。JFCが七尾市災害ボランティアセンターに取材したところ、壊れた住宅の片付けなどの依頼・要望は4月2日現在でも多くあり、今後もボランティアを必要としているという。

ただし、コンビニなどがない地域も多い。奥能登ベースキャンプでの1泊2日型のボランティア活動では、昼食や夕食の弁当などは用意されるが、飲用水はボランティア自身が持参するように石川県災害対策ボランティア本部が呼びかけている。

判定

「能登半島地震から3ヶ月、ボランティアを募集していない」は不正確。地域によって異なる。被害の大きい地域を中心にボランティアを募集している。

検証:宮本聖二
編集:野上英文、藤森かもめ、古田大輔

判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。検証記事を広げるため、XFacebookYouTubeInstagramでのフォロー・拡散をよろしくお願いします。毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンからどうぞ。

また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報について質問すると、AIが関連性の高い過去のJFC記事をお届けします。詳しくはこちらの記事を

もっと見る

「遺族厚生年金が廃止」は誤り 制度改正を議論しているが廃止の検討ではない【ファクトチェック】

「遺族厚生年金が廃止」は誤り 制度改正を議論しているが廃止の検討ではない【ファクトチェック】

「遺族年金廃止とか馬鹿じゃないの?」という言説が拡散し、Xのトレンドにも入りましたが誤りです。引用されたNHKの記事は2023年7月のもので、遺族厚生年金受給の男女差について2025年に向けて議論を始めるという内容です。 検証対象 2024年4月23日、「遺族年金廃止とか馬鹿じゃないの?」という言説が拡散した。その後、遺族年金を巡って様々な投稿が拡散し、Xで「遺族年金」がトレンド入りした(例1、例2)。 投稿には、2023年7月のNHKの記事「『遺族厚生年金』再来年の制度改正に向け議論へ 厚労省審議会」のリンクがついている。 拡散したポストは4月30日現在で5500件以上リポストされ、表示回数は55万回を超える。遺族年金について「頭おかしい」「なんでこんなことになるんだ」というコメントの一方で「選挙前の不安煽り」という投稿もある。 検証過程 遺族年金とは 遺族年金とは、一家の生計の中心者である被保険者が死亡した時、その人によって生計を維持していた遺族に支給される年金だ。「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があり、亡くなった人の年金加入状況や、受けと

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
「ドイツ政府、新型コロナ・パンデミックはなかったと認める」は誤り ドイツ大使館が否定【ファクトチェック】

「ドイツ政府、新型コロナ・パンデミックはなかったと認める」は誤り ドイツ大使館が否定【ファクトチェック】

「ドイツ政府が新型コロナ・パンデミックはなかったと認めた」とする言説が拡散しましたが、誤りです。ドイツ大使館が否定しました。また、情報の発信者は誤情報の発信を繰り返すサイトです。 検証対象 2024年4月4日、「ドイツ政府、パンデミックは存在しなかったと認める」とする投稿が拡散した。この投稿は2024年4月30日現在、146万回以上の表示回数と3600件以上のリポストを獲得している。 検証過程 拡散した投稿はThe People’s Voice(TPV)というサイトの記事「German Gov’t Admits There Was No Pandemic(ドイツ政府がパンデミックはなかったと認める)」を引用している。 記事は「ドイツ政府のデータによると、パンデミックはまったくなく、悲惨な結果をもたらす実験用ワクチンを大衆に受け入れさせるために綿密に仕組まれた軍事級の心理作戦が行われただけだった」と伝えている。 TPVは「大手メディアの扱わないニュースを扱うことで読者に真実を伝える」と自称するサイトで、米国に拠点を置く。日本ファクトチェックセンター

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
「衆院補選、8時に当確はおかしい、不正選挙だ」は誤り 出口調査や事前の取材によるゼロ票打ち【ファクトチェック】

「衆院補選、8時に当確はおかしい、不正選挙だ」は誤り 出口調査や事前の取材によるゼロ票打ち【ファクトチェック】

衆院補選について「開票が始まっていないのに当確が出たのは不正選挙」という言説が拡散しましたが、誤りです。報道各社が事前取材と有権者への調査などに基づいて投票締め切り直後に当選確実を報じたもので、一般的な手法です。 検証対象 4月28日午後8時、3つの選挙区で実施された衆院補選で、投票締切時刻の夜8時に報道各社が当選確実を出したことから「開票が始まっていない段階の当確はおかしい」「不正選挙」だという言説が拡散しました。 当確が出た直後から、SNSには「ハッシュタグ不正選挙」がついた投稿が次々と広がった。開票されていないのに当選確実が出るのはおかしいという内容のほか、「ある候補が落ちるのはあり得ない、票の操作が行われた」などの書き込みも数多くある(例1、例2)。 検証過程 投票締め切り直後の当確報道 今回の3つの衆院補選の結果は以下の通りだ(東京15区は当選者と次点の立候補者のみ)。当選者と他候補とは大きく差が開いた。 東京15区 酒井菜摘   4万9476票  須藤元気  2万9669票 島根 1区  亀井亜紀子  8万2691票  錦織攻政  5

By 宮本聖二
衆院補選をめぐる偽情報/政治家のなりすまし/コミュニティノートの効果【注目のファクトチェック】

衆院補選をめぐる偽情報/政治家のなりすまし/コミュニティノートの効果【注目のファクトチェック】

✉️日本ファクトチェックセンター(JFC)がこの1週間に出した記事を中心に、その他のメディアも含めて、ファクトチェックや偽情報関連の情報をまとめました。同じ内容をニュースレターでも配信しています。登録はこちら。 2024年4月22-28日のファクトチェック週報です。4月28日に投開票が行われる衆院補選をめぐって様々な誤情報/偽情報が拡散しました。詐欺サイトに誘導する政治家のなりすましアカウントが今も次々に出現しています。新型コロナワクチンの誤情報に関してコミュニティノートが正確に機能しているという研究も。 JFCのファクトチェック記事 四国の地震で過去映像など拡散 2024年4月17日深夜、豊後水道を震源とする大きな地震が発生し、愛媛県と高知県で震度6弱を観測しました。地震発生後、無関係な過去の映像や画像が拡散しました。これは被害状況の把握や避難、救護活動に悪影響を及ぼしかねません。 四国の地震で過去映像など拡散 画像検索などで確認を2024年4月17日深夜、豊後水道を震源とする大きな地震が発生し、愛媛県と高知県で震度6弱を観測しました。地震発生後、無関係

By 宮本聖二, 古田大輔(Daisuke Furuta)