朝鮮学校の京都国際高校に高野連が出場資格を与えた? ヘイトや誤解が拡散【ファクトチェック】

朝鮮学校の京都国際高校に高野連が出場資格を与えた? ヘイトや誤解が拡散【ファクトチェック】

2024年、夏の全国高校野球で優勝した京都国際高校について「朝鮮学校が名前を変えただけなのに高野連が出場資格を与えた」などの言説が拡散しましたが、誤りです。京都国際高校は2004年に日本の「一条校」の認可を受けている高校です。また、各種学校は甲子園に限らず、インターハイなどにも出場しています。

検証対象

2024年夏の全国高校野球で優勝した京都国際高校に関して、「朝鮮学校が名前変えただけ」「出場資格与える高野連が悪い」などの投稿が拡散した。

投稿は8月21日時点で2000件以上のリポストと150万件以上のインプレッションを獲得している。「まさに仰る通り。キムチ国際=場違い」「校歌斉唱で特亜語が響き渡る悪夢」などといったコメントが寄せられる一方で、「朝鮮学校じゃねーよ。韓国学校だわ」「日本の学習指導要領を韓国学校で使ってるから、日本の教育やしなんの問題があるのこれ」といった指摘もある。

検証過程

「一条校」と「各種学校」

学校教育法第1条は「この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする」と定めており、ここで定義される学校は「一条校」と呼ばれる。

一方で、同法第134条は「第一条に掲げるもの以外のもので、学校教育に類する教育を行うもの(当該教育を行うにつき他の法律に特別の規定があるもの及び第百二十四条に規定する専修学校の教育を行うものを除く。)は、各種学校とする」とし、各種学校の規定を設けている。

京都国際高校は一条校

京都国際中学高等学校公式サイトの学校紹介ページによると、1947年に「京都朝鮮中学」として開校後、校名変更を経て1958年に前身の学校法人「京都韓国学園」が設立され、京都府知事の認可を受けた。2003年に学校法人「京都国際学園」が設立され、新たに京都国際中学・高等学校として一条校の認可を受けている。

京都府の私立高等学校一覧の資料にも高等学校として、他の私立高校とともに京都国際の名前がある。

朝鮮学校など各種学校の参加は一般的

なお、高野連は定款第5条で「学校教育法第12章第134条に定められた各種学校のうち、日本国内に居住する外国人を専ら対象とする学校」を加盟団体として認めている。

また、野球に限らず、朝鮮高校など各種学校のインターハイなどへの参加は認められており、サッカーやラグビーなどでも活躍している。  

判定

京都国際高校は一条校で、各種学校の参加も一般的。高野連から特別に出場資格を得たわけではない。よって、言説は誤りと判定する。

あとがき

京都国際高校をめぐっては、今回検証したような偽・誤情報だけでなく、韓国や北朝鮮への反感を煽るような言説が拡散しています。

情報環境を悪化させるものには、意図的ではないが誤っている「誤情報」、意図的に誤っている「偽情報」だけでなく、悪意をもって個人や集団を攻撃する「悪意のある情報」があります(JFC「フェイクニュースの実態」)。

誤情報や偽情報に基づいて反感を募らせ、悪意のある情報でさらに憎悪を煽られるというヘイトのスパイラルが生まれやすいことに注意が必要です。

検証:リサーチチーム
編集:古田大輔、宮本聖二


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

「ファクトチェックしたことない」半数、フィルターバブルなどの知識も普及せず 情報インテグリティ調査から見える課題と対策

「ファクトチェックしたことない」半数、フィルターバブルなどの知識も普及せず 情報インテグリティ調査から見える課題と対策

偽・誤情報の影響やその対策などの状況を総合的に把握するため、日本ファクトチェックセンター(JFC)は電通総研と共同で「情報インテグリティ調査」を実施しました。予備調査2万人、本調査5000人を対象に、JFCが実際に検証した15の偽・誤情報を使った影響調査の他、望ましい対策などを聞きました。 偽・誤情報の影響として「ストレスや不安を感じる」(48.3%)や、「ニュースに関する関心が低下した」(44.4%)などの回答が目立っています。 一方で「ファクトチェックをおこなったことがない」(47%)、「検証方法を学んだことはない」(64.3%)など、個人でも実践できる対策は普及しておらず、デジタル時代の情報環境を理解するための基礎的な用語の理解もほとんど広がっていないことが明らかになりました。 詳細版は月内に発表予定で、ここでは概要を紹介します。 偽・誤情報の影響「ストレス感じる」「ニュースに対する関心が低下した」 調査によると、「インターネット上の誤った情報・ニュースの存在があなたのニュースに対する態度や行動にどのような影響を与えていますか」という質問に対して「

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
ファクトチェック記事の増加と多様化 メディアリテラシー教育やAIツール開発など検証の実践的な知見を活用【JFC活動報告】

ファクトチェック記事の増加と多様化 メディアリテラシー教育やAIツール開発など検証の実践的な知見を活用【JFC活動報告】

日本ファクトチェックセンター(JFC)は2022年10月の設立からの活動をまとめた報告書を公開しました。詳しくはJFCサイトの「JFCとは」で章ごとにまとめていますので、そちらを御覧ください。 JFCとは日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェック(事実の検証)の実践とメディア情報リテラシーの普及に取り組む非営利組織です。民主主義の基盤であるデジタル公共空間の健全性を維持・向上させることを目的として活動します。 JFC活動報告「情報インテグリティのために」 JFCの設立経緯と組織構造:独立性を保つために JFCの設立経緯、体制、ファクトチェック組織としての独立性を保つための取り組みなどを説明しています。 JFCの設立経緯と組織構造日本ファクトチェックセンター(JFC)は、民主主義の基盤となるインターネットの言論空間の健全性を向上させることを目的とし、ファクトチェックとメディアリテラシー普及に取り組む非営利組織です。 拡散する不確かな情報について、証拠に基づいて真偽を確かめる「ファクトチェック(事実の検証)」、現代の情報環境への理解と対応力を高める「メディアリ

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
仏政府「第三次世界大戦が来る」と国民に食料備蓄指示? まとめサイトによるもの【ファクトチェック】

仏政府「第三次世界大戦が来る」と国民に食料備蓄指示? まとめサイトによるもの【ファクトチェック】

フランス政府が「第三次世界大戦が来る」として国民に食料備蓄を指示したとする投稿が拡散しましたが、誤りです。拡散した投稿はまとめサイトのXアカウントで、見出しは掲示板サイトのスレッドタイトルを引用しているのみです。 検証対象 2025年3月25日、「フランス政府、国民に食糧備蓄を指示『今年第三次世界大戦が来る』」という投稿が拡散した。この投稿は2025年3月31日までに296万回以上の閲覧回数と4500件以上のリポストを獲得している。 検証過程 検証対象のリンクは、まとめサイト「ツイッター速報〜BreakingNews」の記事だ。タイトルは掲示板サイト5ちゃんねるのスレッド「フランス政府、国民に食糧備蓄を指示『今年第三次世界大戦が来る』」で、The People’s Voice(TPV)が2025年3月20日に配信した記事「France Orders Citizens to Stockpile Food: “World War 3 Is Coming This Year”」を引用元にしている。 TPVは「大手メディアの扱わないニュースを扱うことで読者に真

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
運営委員会報告書及び監査委員会報告書を公開

運営委員会報告書及び監査委員会報告書を公開

運営委員会報告書及び監査委員会報告書を公開しましたのでお知らせいたします。JFCでは運営委員会を設置し、編集部がファクトチェックガイドラインに則って検証を実施しているかなど評価しています。運営委員会の内容は、運営委員会報告書として掲載されます。 また運営委員会と編集部全体のガバナンスが適正か確認する監査委員会を設置し、運営委員会報告書を閲覧するなどして監査を行っています。監査委員会の内容は監査委員会報告書として掲載されます。  なおこれらの適切な運用を図るためにルールを制定しており、「日本ファクトチェックセンター設置規程」(規程全文はこちら)及び「日本ファクトチェックセンター監査委員会運営規程」(規程全文はこちら)を公開しています。 これからもJFCは透明性確保のため、情報公開に努めて参ります。 運営委員会報告書2024年12月12日(報告書全文はこちら) 第1 運営委員の任命並びに委員長及び副委員長等の任命プロセス 第2 編集部メンバーの採用等編集に関わる人員 第3 外部機関との連携 第4 プラットフォーマー連携 第5 ファクトチェック記事の公開状況 第6 財務報告 第7 国

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は4月19日(土)午後2時~3時半で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei0419.peatix.com/ 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にどのような知識と

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験  教材と申し込みはこちら

JFCファクトチェッカー認定試験  教材と申し込みはこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)