(更新あり)「櫻井翔がラグビー日本代表アンバサダー『降板』へ」は誤り【ファクトチェック】

(更新あり)「櫻井翔がラグビー日本代表アンバサダー『降板』へ」は誤り【ファクトチェック】

「櫻井翔がラグビー日本代表アンバサダー『降板』へ」という言説が拡散しましたが、誤りです。元になった記事は、降板について筆者の意見を述べているに過ぎず、日本ラグビーフットボール協会は9月15日時点で「変更の予定はない」と説明しています。

注:2023年9月15日現在の記事です。状況に変化があれば追記します。
注2:2023年9月18日にラグビーフットボール協会が公開した見解を追記しました(2023年9月19日)。

検証対象

2023年9月8日、「櫻井翔がラグビー日本代表アンバサダー『降板』へ…W杯開催国フランスが『性加害イメージがあり不適切』指摘で」というタイトルとともに、タレントの櫻井翔氏の画像を埋め込んだポストが拡散した。9月15日現在、表示回数が440万回以上、リポストが3500件以上となっている。

画像

また返信欄に連なる英語版のポストでは、表示回数が31万回以上、リポスト件数が100件以上となっている。

画像

返信欄では「やっぱりそういう流れになりますよね」という声がある一方で、「ニュースのソース読むと記者の感想しか書いてないけど、ミスリードのタイトルじゃないのコレ?」と指摘するコメントもある。

検証過程

ラグビーワールドカップ2023フランス大会が2023年9月8日(日本時間9日)、始まった。10月28日の決勝まで全48試合が行われる。

この大会に向けて、公益財団法人日本ラグビーフットボール協会(JRFU)は2023年5月20日、櫻井氏が「ジャパンラグビーアンバサダー」に就任したと発表した。認知度アップや大会の機運醸成などを目的に、「JRFUオウンドメディアへの出演や日本代表に関するイベント出演などにご協力頂きます」と説明。委嘱期間は11月20日までとなっている。

検証対象にあるリンク先の記事は、櫻井氏の降板について以下のように述べている。

「ラグビー日本代表が、フランスをはじめ世界から好奇の眼に晒されないためには、試合に集中できる環境を作り史上最高の成績を収めるためには、櫻井さんの一刻も早い降板が必須と言えるだろう」

記事に「降板する」とは書かれておらず、筆者の意見として「一刻も早い降板が必須と言えるだろう」と述べているだけだ。

公益財団法人日本ラグビーフットボール協会のWebサイトには、2023年9月15日午後1時の時点で、櫻井氏が降板または降板予定とは書かれていない。

日本ファクトチェックセンター(JFC)が協会の広報担当者に取材したところ、「11月20日まで委嘱をしているが、現時点(2023年9月15日午後0時10分)で特段の変更の予定はありません」と回答した。

判定

記事の本文は筆者の意見を述べているだけだ。また、日本ラグビーフットボール協会も「現時点で特段の変更の予定はない」と否定している。よって誤りと判定した。

検証:鈴木刀磨
編集:藤森かもめ、宮本聖二、古田大輔、野上英文

追記

日本ラグビーフットボール協会は9月18日、「当協会においては、いかなる性加害も容認いたしません」として、以下の内容の見解を公表した。

「このたび、櫻井翔氏の所属事務所が認め謝罪した性加害の問題は遺憾であり、当協会では断じて容認するものではなく、明確な被害者救済と再発防止の取組みについて、今後の事務所の対応を注視してまいります。なお当該事務所による十分な改善がみられない限り、所属タレントを新たに起用することはありません」

見解の中では、櫻井氏自身については以下のように述べて、今後については触れていない。

「『ジャパンラグビーアンバサダー2023』として2023年5月20日から11月20日の期間、元ラグビー競技者でラグビーファンとしても常にラグビーを応援頂いているタレントの櫻井翔氏に、ラグビーワールドカップ開催にあわせ、ラグビー日本代表の認知度向上及び大会機運醸成等へご協力いただいています」

ジャパンラグビーアンバサダー2023起用タレント所属事務所に対する当協会の見解について|日本ラグビーフットボール協会|RUGBY:FOR ALL「ノーサイドの精神」を、日本へ、世界へ。ラグビーを世界一楽しもう!ラグビー日本代表のニュース・試合日程・結果およびイベント情報など最新情報が満載。ラグビーの普及・www.rugby-japan.jp


検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。

「ファクトチェックが役に立った」という方は、シェアやいいねなどで拡散にご協力ください。誤った情報よりも、検証した情報が広がるには、みなさんの力が必要です。

X(Twitter)FacebookYouTubeInstagramなどのフォローもよろしくお願いします。またこちらのQRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、真偽が気になる情報について質問すると、AIが関連性の高い過去のJFC記事をお届けします。詳しくはこちらの記事を

もっと見る

(画像)「トランプ氏が『キシダというのはどこがいいんだ?』と発言」は不正確 文脈無視の切り抜きでミスリード【ファクトチェック】

(画像)「トランプ氏が『キシダというのはどこがいいんだ?』と発言」は不正確 文脈無視の切り抜きでミスリード【ファクトチェック】

米国のトランプ前大統領が、2024年4月24日(日本時間)に自民党の麻生太郎副総裁と会談した内容について「キシダというのはどこがいいんだ?」と発言したとする画像が拡散しましたが、ミスリードで不正確です。発言には続きがあり、投稿はテレビ番組の一部を切り取っています。 検証対象 2024年4月28日、米国のトランプ前大統領が、麻生副総裁との会談で「岸田のどこがいい?」と発言したとする言説がX(旧Twitter)で拡散した。投稿には、テレビ画面のような画像が添付され、右上に「日曜報道」とロゴがある。 画面には麻生氏が「岸田首相をよろしく」と述べ、トランプ氏が「シンゾーは素晴らしかった でもキシダというのはどこがそんなにいいんだ?」と返している様子が描かれている。 このポストは4000件以上のリポストを獲得し、630万回以上表示された。リプライや引用リポストで「バイデン民主党の下僕がトランプ大統領に気に入られるはずがない」「トランプも流石に岸田の無能さとそれを信じ続ける無能な国民に呆れてんだろうね」などと岸田首相を批判するコメントが相次ぐ一方で、「切り取り」と指

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
「『条』の『木』を『ホ』と書くのは中国の表記で日本語ではない」は誤り 常用漢字表にも記載【ファクトチェック】

「『条』の『木』を『ホ』と書くのは中国の表記で日本語ではない」は誤り 常用漢字表にも記載【ファクトチェック】

「9条で世界平和を」と訴える横断幕について、「条」という漢字の書き方が日本語ではなく中国で使われる「簡体字」ではないかとの言説が広まりましたが、誤りです。横断幕の「条」の部首は「木」でなく「ホ」と書かれていて簡体字と一致しますが、日本の「常用漢字表」でも記載されています。 検証対象 2024年4月21日、X(旧Twitter)で「9条の『条』に注目」というコメントと共に、「9条で世界平和を」と書かれた横断幕の画像が拡散した。画像の「条」の文字は、部首の「木」が「ホ(縦の棒ははねている)」と表記されている。 このポストは18万回以上表示され、700件以上リポストされている。このポストのリプライや引用リポストには「日本人ではない漢字使い」「中国共産党の指示が裏にあるんですかねぇ」「中国の工作員ですね」などといったコメントが付き、部首の「木」を「ホ」と表記することは、日本の書体では誤りで、

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
「遺族厚生年金が廃止」は誤り 制度改正を議論しているが廃止の検討ではない【ファクトチェック】

「遺族厚生年金が廃止」は誤り 制度改正を議論しているが廃止の検討ではない【ファクトチェック】

「遺族年金廃止とか馬鹿じゃないの?」という言説が拡散し、Xのトレンドにも入りましたが誤りです。引用されたNHKの記事は2023年7月のもので、遺族厚生年金受給の男女差について2025年に向けて議論を始めるという内容です。 検証対象 2024年4月23日、「遺族年金廃止とか馬鹿じゃないの?」という言説が拡散した。その後、遺族年金を巡って様々な投稿が拡散し、Xで「遺族年金」がトレンド入りした(例1、例2)。 投稿には、2023年7月のNHKの記事「『遺族厚生年金』再来年の制度改正に向け議論へ 厚労省審議会」のリンクがついている。 拡散したポストは4月30日現在で5500件以上リポストされ、表示回数は55万回を超える。遺族年金について「頭おかしい」「なんでこんなことになるんだ」というコメントの一方で「選挙前の不安煽り」という投稿もある。 検証過程 遺族年金とは 遺族年金とは、一家の生計の中心者である被保険者が死亡した時、その人によって生計を維持していた遺族に支給される年金だ。「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があり、亡くなった人の年金加入状況や、受けと

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
「ドイツ政府、新型コロナ・パンデミックはなかったと認める」は誤り ドイツ大使館が否定【ファクトチェック】

「ドイツ政府、新型コロナ・パンデミックはなかったと認める」は誤り ドイツ大使館が否定【ファクトチェック】

「ドイツ政府が新型コロナ・パンデミックはなかったと認めた」とする言説が拡散しましたが、誤りです。ドイツ大使館が否定しました。また、情報の発信者は誤情報の発信を繰り返すサイトです。 検証対象 2024年4月4日、「ドイツ政府、パンデミックは存在しなかったと認める」とする投稿が拡散した。この投稿は2024年4月30日現在、146万回以上の表示回数と3600件以上のリポストを獲得している。 検証過程 拡散した投稿はThe People’s Voice(TPV)というサイトの記事「German Gov’t Admits There Was No Pandemic(ドイツ政府がパンデミックはなかったと認める)」を引用している。 記事は「ドイツ政府のデータによると、パンデミックはまったくなく、悲惨な結果をもたらす実験用ワクチンを大衆に受け入れさせるために綿密に仕組まれた軍事級の心理作戦が行われただけだった」と伝えている。 TPVは「大手メディアの扱わないニュースを扱うことで読者に真実を伝える」と自称するサイトで、米国に拠点を置く。日本ファクトチェックセンター

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)