
コロナワクチン 「重症化予防を示す国内データない」「超過死亡の原因の可能性」で国立感染研所長と一致、は誤り 声明で否定【ファクトチェック】
新型コロナワクチンの効果について「重症化予防を示す国内のデータがない」「超過死亡の原因となった可能性がある」などという意見で「感染研の脇田所長と「意見が一致した」という言説が拡散しましたが誤りです。脇田隆字所長は声明を発表し、拡散した言説を否定し、国内外のデータも示しています。
検証対象
2023年10月28日、X(旧Twitter)上で以下の投稿が拡散した。
・ワクチンの重症化予防を示す国内のデータはない
・超過死亡(日本人の謎の大量死)の原因がワクチンである可能性は、否定できない
(脇田所長と)意見が一致しました

10月28日実施の国立感染症研究所の一般公開のイベントの案内板を映した写真も添付されている。このポストは11月15日時点で6000回以上リポストされ、表示回数は270万回を超える。
返信欄では「これは、極めて重要ですね」や「重要な取材と発信を有り難うございました」など共感する反応が数多くある一方で、「デマはダメ」という指摘もある。
検証過程
SNSでの拡散を受け、感染研は10月30日、ホームページに脇田所長名で「一部SNSにおける投稿について」と題した声明を発表し、拡散した内容を否定した。
声明によると、感染研の戸山庁舎(東京都新宿区)は10月28日、施設の一般公開を実施。500人以上の来場者があり、脇田所長との対話もあったという。その中で「私の意図とは異なる内容が、私の言葉としてSNS等で広まることとなってしまった」と述べた。
声明では「新型コロナワクチン(mRNAワクチンを含む)が新型コロナウイルス感染症による重症化、入院及び死亡を減らすことは、多くの適切にデザインされた研究に基づいて実証されており、学術的に確立された知見です。これは日本国内で実施された複数の研究でも確認されています」と、ワクチンの安全性と有効性を強調している。
また、「超過死亡の原因がワクチンである可能性は、否定できない」という点については、「『新型コロナウイルスのワクチン接種が原因で超過死亡が発生した』と考えられる科学的根拠は、現時点において確認されていません」と、ここも拡散した言説を否定した。
脇田所長の声明は「ワクチンの重症化予防を示す国内のデータ」としてCDC・米疾病予防管理センターやイギリスのネイチャーに掲載された論文、国立感染症研究所など国内外の11の研究を示し、拡散した言説の「ワクチンの重症化予防を示す国内のデータはない」という主張も否定した。
判定
「ワクチンの重症化を示す国内のデータはない、国立感染症研究所長と意見が一致」は誤り。脇田所長はデータを示して、拡散した言説を否定した。
あとがき
感染研の声明で紹介された、ワクチンの重症化予防を示す国内外のデータは以下のとおりです。
声明ではこれらのデータに基づき、以下のように説明しています。
「新型コロナワクチン(mRNAワクチンを含む)が新型コロナウイルス感染症による重症化、入院及び死亡を減らすことは、多くの適切にデザインされた研究に基づいて実証されており、学術的に確立された知見です[1-3]。これは日本国内で実施された複数の研究でも確認されています[4-10]。WHOの予防接種に関する戦略諮問委員会(SAGE)は、こうした学術的知見に基づいて、重症化、入院、死亡のリスクが高い集団に対してワクチン接種を行うことは公衆衛生上の最優先事項であるとしています[11]。」
検証:本橋瑞紀、木山竣策
編集:野上英文、宮本聖二、藤森かもめ、古田大輔
検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。
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