(イスラエル・パレスチナ)瓦礫から救出される乳児の動画?【ファクトチェック】

(イスラエル・パレスチナ)瓦礫から救出される乳児の動画?【ファクトチェック】

イスラエル・パレスチナの武力衝突に関連し、瓦礫から救出される幼い子どもの動画が拡散しました。これは誤りです。拡散したポストは2023年2月のトルコ・シリア大地震の時の動画です。

検証対象

2023年10月13日、「言葉もありません...とても辛く、恐ろしい状況です。どうか戦争を止めてください」というコメントと共に、瓦礫から救出される幼い子どもの動画がX(旧Twitter)で拡散した。ポストには、「#TelAviv 」「#Israel」「#HamasWarCrimes(ハマス戦争犯罪) 」「#HamasMassacre(ハマス虐殺)」「#Syria」「#AaryaS3OnHotstar(配信ドラマのシーズン3について)」などのハッシュタグがつき、イスラエル・パレスチナの武力衝突を示唆している。

リプライ欄には、「Heart breaking(胸が張り裂けそうだ)」などの動画に同情するコメントが多くある。その一方で、拡散した動画が2023年2月6日に起きたトルコ・シリア大地震に関連した動画だと指摘するコメントもある。

検証過程

リプライ欄の中に、この動画はボランティア救助組織「シリア民間防衛隊」による投稿だという指摘があった。同組織のXのアカウントを確認すると、元の動画があった。救出にあたる人物の服の色、救出時に見ることができる子どもの傷などから、縦横比が違うものの同一であることが分かる。

元の動画は2023年2月のトルコ・シリア大地震の際に、シリア北西部で活動するボランティア救助組織「シリア民間防衛隊」(通称ホワイトヘルメッツ)がXに投稿したもの。ホワイトヘルメッツの説明によると、動画の子どもはシリア北西部、アレッポ県北部のアフリンで救出されたという。

この救出劇は2023年2月、トルコの放送局TELE1や、ロイターも報じている。

判定

拡散したのは、2023年2月にシリア北西部で瓦礫の中から幼い子どもを救出する動画だ。拡散したポストには「#Israel」「#HamasWarCrimes(ハマス戦争犯罪) 」などのハッシュタグがついているが、動画はイスラエル・パレスチナの武力衝突とは関係ない。したがって、「イスラエル・パレスチナ、瓦礫から救出される乳児」の動画は誤りと判定した。

検証:高橋篤史、木山竣策
編集:藤森かもめ、宮本聖二

イスラエル・パレスチナに関するファクトチェック

イスラエル・パレスチナ情勢をめぐり大量の誤情報/偽情報 検証方法を解説【ファクトチェックまとめ】
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判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

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検証か見送りか、あいまいな投稿の判断【ファクトチェックの舞台裏】

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参政党・神谷代表「多国籍企業がパンデミックを引き起こした」? 検証済みの誤情報【#参院選ファクトチェック】

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7月2日の党首討論会で、参政党・神谷宗幣代表が「彼ら(多国籍企業)はいろんなことをやります。パンデミックを引き起こしたということも噂されています」と発言しました。そういう「噂」はありますが、過去に繰り返し誤りだと検証されています。 検証対象 7月2日、参議院選挙に向けて日本記者クラブ主催の党首討論会が開かれた。討論会の様子はYouTubeでも配信されている。 討論会の中で、参政党の神谷宗幣代表は多国籍企業について触れ、「彼らはいろんなことをやります。パンデミックを引き起こしたということも噂されています」と発言した(JNPC”8党党首討論会 2025.7.2”)。 検証過程 「噂」に触れつつ、根拠の提示はなし 神谷代表は討論会で一番訴えたいこととして「日本人ファースト」を掲げ、多国籍の企業について以下のように発言した(JNPC”8党党首討論会 2025.7.2”)。 (以下、引用) この30年の経済、停滞している背景にはグローバリズム、というものがあると思います。 多国籍の企業が国境を超えて規制を緩和し、自分たちのところにお金を集める、そうすると

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石破首相「マイナポータルで給付の事務費大幅削減」? 自治体からは批判【#参院選ファクトチェック】

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石破茂首相は7月2日の党首討論で、2万円給付にともなう事務経費について「マイナポータルの活用で大幅に減らせる」と発言しましたが、根拠不明です。給付金事業の実施主体である自治体は「負担感は変わらない」と述べています。また、マイナポータルを使うことで、どのぐらい経費が削減できるかという見積もりは、総務省もデジタル庁も出していません。 検証対象 7月2日、参院選を控え、日本記者クラブで党首討論が行われた。与党公約の2万円給付について、国民民主党の玉木雄一郎代表は、自民党の石破茂首相に次のように質問した。 「ばらまき2万円、これはいつ配られるのか。そして配るための事務経費をどれぐらいかかると考えているのか。税収の上振れを使うとおっしゃったが、去年の補正から比べると1.9兆円しか上振れありませんが、2万円全員に配るだけでも2兆円 以上かかる。財源は足りていますか」 これに対し、石破氏は次のように回答した。 「マイナンバーを持っていらっしゃる方が8割、口座と紐づけていらっしゃる方が5割、これ紐づけはマイポータルで簡単にできますから、そうすると経費というのがガタンと減

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参政党・神谷代表「減税が一番スピーディー」? 減税は給付より時間がかかる【#参院選ファクトチェック】

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参政党の神谷宗幣代表が「給付金を配るのは自治体の負担」「減税が一番スピーディー」などと発言しましたが、不正確です。政府が2020年、全国民を対象に給付した新型コロナウイルス感染症緊急経済対策の特別定額給付金は、早いところで閣議決定から11日後に給付されています。一方、減税には法改正やシステム改修が必要で、少なくとも数ヶ月以上はかかると見られています。 検証対象 TBS「news23」で7月1日に実施された党首討論で、物価高対策は減税と給付どちらによるべきかという質問に、参政党の神谷代表が次のように発言した。 「われわれもですね、集めて配るよりまず『減税』というキャッチコピーでやっています。集めて配ると、それだけで手間も費用もかかるし、自治体の負担がかかったこともありますので、まず『減税』が一番スピーディーで公平だろうと考えている」(TBS NEWS DIG”【選挙の日、そのまえに】news23で党首討論 物価高対策などめぐり論戦 7月3日公示・参議院議員選挙” ) 検証過程 「集めて配ると手間も費用もかかるし自治体の負担」? 給付金事業が自治体にと

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ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

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日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は7月22日(火)午後2時~3時15分で、お申し込みはこちら。 https://jfckoushiyousei0722.peatix.com/ 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的に

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理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

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