食品添加物の認可数は日本が世界一?【ファクトチェック】

食品添加物の認可数は日本が世界一?【ファクトチェック】

「食品添加物の認可数は日本が世界一」という言説が拡散しましたが、誤りです。食生活や制度の違いなどにより、添加物の定義や対象の範囲、使用可能量などが異なるため、認可数を単純に比較することは難しいですが、例えば、アメリカの認可数は、日本のおよそ2倍あります。

検証対象

2023年11月14日、「食品添加物も遺伝子組み換え食品も農薬も抗がん剤もワクチンも、その使用量は日本が世界一です。 どう考えても、これはおかしなことです」というポストがSNSで拡散した。投稿文には「使用量」と書いているが、添付のグラフは「食品添加物の認可数」と記している。

画像

この投稿は、2023年12月5日時点で1800回以上リポストされ、表示回数は19万回を超える。投稿について同調するコメントの一方で、「各国の定義が違うので比較できない」「どこに使用量って書いてあんの?」という指摘もある。

また、2023年12月1日にも「日本は世界一の添加物大国」という同様のポストが拡散している。

検証過程

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、この投稿のうち「食品添加物の認可数は日本が世界一」という点を検証した。

厚生労働省はウェブサイトで日本の食品添加物のルールや他国との比較などについて説明している。

食生活や制度の違いなどから「添加物の定義、対象食品の範囲、使用可能な量などが異なっていることから、単純に比較することはできません」と前置きした上で、日本とアメリカの食品添加物の数を比較している。それによると、アメリカの認可数は約1600品目(2013年2月時点)だが、日本は831品目(2022年10月26日時点)。アメリカの添加物の数え方については、「果汁や茶などの日本では添加物に含まれないもの」や「日本で1品目と数えている品目が、米国では物質ごとに指定されて数十品目になるもの」も含むとの付記がある。それを考慮しても、検証対象に添付された日本の数値が突出しているグラフは根拠不明だ。

判定

食品添加物は、各国でその定義、対象食品の範囲、使用可能量などが異なり、認可数を単純比較することは難しい。だが、仮に認可数だけで比較してもアメリカは日本の2倍あることから誤りと判定した。

あとがき

今回の言説で示されている、食品添加物以外の項目についても「世界一」かどうかを検証しました。その中には、明らかに間違っているものもあれば、データの根拠が不明だったり、「世界一」の定義が曖昧で検証不能なものもありました。

遺伝子組み換え食品の使用量が世界一
農林水産省は「日本に輸入される農産物の9割程度が遺伝子組み換え作物品種であると推測されます」と説明しています。また、バイテク情報普及会は、日本人の遺伝子組み換え農作物の年間消費量はコメの年間消費量(約800万トン)の2倍以上に相当すると推測しています。しかし、世界一であることを示す国際比較データは見つかりませんでした。

抗がん剤の使用量が世界一
厚生労働省は、抗がん剤の使い方の国際比較について「日本の抗がん剤の使い方が施設ごとにあまりにバラバラなためデータがとれていない」とする資料を公開しています。

農薬使用量が世界一
国連食糧農業機関(FAO)によると2021年時点で農薬使用量が最も多いのはブラジルの71万9507トンで、日本は4万8889トンです。また、2021年の農地面積あたりの農薬使用量が最も多いのはブルネイ・ダルサラームで1ヘクタールあたり33.91kg、日本は1ヘクタールあたり11.24kgでした。

ワクチン使用量が世界一
この言説は、何のワクチンを指すのか不明ですが、たとえば、新型コロナウイルスのワクチンの場合、オックスフォード大学のデータベース「Our World in Data」によると、人口100人あたりの接種回数が最も多いのは英領ジブラルタル、2位はキューバと続き、日本ではありません。

画像
Coronavirus (COVID-19) Vaccinations - Our World in Dataより

SNS上には数多くの「わかりやすい画像」が存在しますが、そのような画像をシェアする前に自分で根拠を確認したり、発信元を確かめたりする必要があります。

検証:住友千花、木山竣策、高橋篤史
編集:宮本聖二、藤森かもめ、野上英文、古田大輔

検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。

「ファクトチェックが役に立った」という方は、シェアやいいねなどで拡散にご協力ください。誤った情報よりも検証した情報が広がるには、みなさんの力が必要です。

X(Twitter)FacebookYouTubeInstagramなどのフォローもよろしくお願いします。またこちらのQRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、真偽が気になる情報について質問すると、AIが関連性の高い過去のJFC記事をお届けします。詳しくはこちらの記事を

もっと見る

USAIDが日本のメディアを操作?/女性へのAED使用で訴えられる?【今週のファクトチェック】

USAIDが日本のメディアを操作?/女性へのAED使用で訴えられる?【今週のファクトチェック】

「女性にAEDを使うと訴えられる」という情報がたびたび拡散します。ほぼありえないリスクを考慮して、女性の命を危険にさらすことになります。アメリカから広がったUSAIDデマが日本にも。背景も含めて解説しました。 ✉️ 日本ファクトチェックセンター(JFC)がこの1週間に出した記事を中心に、その他のメディアも含めて、ファクトチェックや偽情報関連の情報をまとめました。同じ内容をニュースレターでも配信しています。登録はこちら。 今週の解説記事 繰り返し拡散する「女性にAED使用で訴えられる」 警察や弁護士の解説による正しい知識で救命を 男性が女性にAEDを使うと「性被害などで訴えられるリスクがあるので、使わない方がよい」と呼びかける情報が、何度も拡散しています。 そのためにAED使用をためらってしまうと、女性の命を脅かす事態を招きかねません。日本ファクトチェックセンター(JFC)は警察や専門家への取材で、AED使用をめぐる現状をまとめました。 繰り返し拡散する「女性にAED使用で訴えられる」 警察や弁護士の解説による正しい知識で救命を男性が女性にAEDを使う

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
兵庫・迎山県議 「私を批判すれば国民にツケが回る」と発言? コメントを歪曲【ファクトチェック】

兵庫・迎山県議 「私を批判すれば国民にツケが回る」と発言? コメントを歪曲【ファクトチェック】

兵庫県の迎山志保県議が「私を批判すれば国民にツケが回る」などと発言したという情報が拡散しましたが、不正確です。公人に向けた批判に対する迎山県議のコメントを歪曲したものです。 検証対象 迎山県議が「私を批判すれば、やがては国民にツケがまわる」などと言ったかのような情報が繰り返し拡散している(例1、例2)。 2024年11月の投稿は「迎山しほ議員、斎藤知事を辞任させておいて 私を批判するな!批判を続ければ政治は劣化する!国民にツケが回るからな!この態度は流石にヤバくないか?」という内容で、斎藤知事を擁護し、迎山議員を批判する内容だ。 この投稿は2025年2月18日にも「迎山しほ議員『私を批判すれば、やがては国民にツケがまわる』国民にこんな事言う県議初めて見ました」という文言と共に再び拡散している。 これらの投稿には迎山県議の「全てが公人ということでさらされるのが当たり前 批判されるのが当たり前」「政治の世界もどんどんと結果的には劣化をしていく」「国民にツケが回っていく」などのコメントが抜き出された画像が添付されている。 検証過程 画像にある「報道特集」

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
「USAIDが日本メディアを操作」 デマ拡散の背景にある報道不信

「USAIDが日本メディアを操作」 デマ拡散の背景にある報道不信

「USAIDは世界中のメディアに資金提供」「言論操作している」などの情報が世界中に拡散しました。その多くはすでに検証されていますが「日本メディアも関係している」というリストまで出回りました。何が事実で何が誤りか。デマが拡散する背景も含めて解説します。 きっかけはトランプ政権によるUSAID批判 発端は1月に就任したトランプ大統領がアメリカ政府の対外援助を管轄するUSAID(アメリカ国際開発庁)を通じた対外援助を90日間停止する大統領令に署名したことです。トランプ政権が掲げる「アメリカ・ファースト」に沿った動きでした。 2月に入り、トランプ大統領や政府効率化省トップについたイーロン・マスク氏は、USAIDを批判する発言を繰り返しました。 トランプ氏の発言 「急進的な狂人たちによって運営されている」(CNN, 2月3日) 「USAIDやその他の機関で何十億ドルもの資金が盗まれ、その多くが民主党に有利な報道をするための『報酬』としてフェイクニュースメディアに支払われているようだ」(CBS, 2月13日) マスク氏の発言 「USAIDは犯罪組織だ」(CN

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
兵庫・百条委員会が議事録をすべて破棄? 県議会サイトで公開【ファクトチェック】(追記あり)

兵庫・百条委員会が議事録をすべて破棄? 県議会サイトで公開【ファクトチェック】(追記あり)

兵庫県の斎藤元彦知事がパワハラの疑いなどで告発された問題で、調査をしている県議会百条委員会が、議事録を公開せずにすべて破棄したという情報が拡散しましたが、誤りです。議事録は県議会のウェブサイトで公開されています。 検証対象 2025年2月18日、兵庫県議会の百条委に関して、「百条委員会の議事録は全部破棄ってホントですか? 全部公開されずに破棄? 兵庫県議員アタマオカシイやろ」という情報が拡散した。 この情報に対して「百条委員会に使った金は委員に全部払ってもらうしかないな」「そもそも百条委員会がデマだったということか」などのコメントがついているほか「兵庫県文書問題会議録で全部見ることできるけど」と疑問を投げかけるものがある。 検証過程 兵庫県議会は2024年6月13日、地方自治法百条に基づいて斎藤知事のパワハラ疑惑などを調べる「文書問題調査特別委員会(通称:百条委員会)」を設置した。 6月14日から始まった委員会は、2025年1月27日まで計15回開かれている。県議会は、12月25日の分を除く、計14回分を 議会検索システムで公開している。「会議録の閲

By 宮本聖二