国家公務員や国会議員はワクチン接種をしなくて良いという法律は存在する?【ファクトチェック】
「国家公務員、国会議員はワクチンの接種を受けなくて良いと言う法律が存在します」というツイートが拡散していますが、この投稿は誤りです。国家公務員や国会議員だけを特別に免除するような法律は存在しません。
検証対象
「国家公務員や国会議員はワクチンの接種を受けなくて良い」という言説が度々拡散している。2022年10月29日にも同様のツイートが投稿され、2500件以上のRTがされている。
リプライには「知ってる」「安全です!って言うならそんな法律あるはずないのにね」といったコメントがある一方で、「存在は知っていましたが、その文面がなかなか見つからなくて」「なんという法律ですか?」といったコメントもある。また、「日本国民全員、ワクチン接種は任意では?」といった指摘もある。
検証過程
検証にあたり、東啓綜合法律事務所に所属する弁護士の新間祐一郎氏に、関連する法律について聞いた。
新間弁護士は「国家公務員や国会議員だけを特別に免除する規定はありません」と指摘する。
「ワクチン接種に関する法律を調査したところ、予防接種法がカバーしていると分かりました。予防接種法の中で接種を受ける側に関する規定が*9条にあります。これによると、予防接種は努力義務であることが分かります」
*9条(予防接種を受ける努力義務):定期の予防接種であってA類疾病に係るもの又は臨時の予防接種(B類疾病のうち当該疾病にかかった場合の病状の程度を考慮して厚生労働大臣が定めるもの(第二十四条第六号及び第二十八条において「特定B類疾病」という。)に係るものを除く。次項及び次条において同じ。)の対象者は、これらの予防接種を受けるよう努めなければならない。
つまり、国民全員がワクチン接種は努力義務であり、国家公務員や国会議員に限ってワクチン接種をしなくて良い訳ではない。2021年2月19日の国会で、「予防接種の任意性」に関する当時の菅義偉首相の答弁には「政府としては、新型コロナウイルス感染症に係る予防接種については、国民が自らの判断で受けるべきものと考えている」と述べている。
また、新間弁護士は予防接種法11条で「政令及び厚生労働省への委任」について定められているが、ワクチン接種に関係している予防接種法、予防接種法施行令、予防接種法施行規則、予防接種実施規則にも特に記載がないと指摘する。
では、新型コロナワクチン接種に関する特例はないか。
SNS上で過去に同様のツイートが拡散した際に、投稿者は2020年12月9日付けの厚労省の資料「予防接種法及び検疫法の一部を改正する法律等の施行について」を根拠に挙げた。資料の「第二 改正法による予防接種法の一部改正」一(4)には「政令で、当該規定ごとに対象者を指定して適用しないこととすることができる」とある。
新間弁護士は附則第7条第4項に対応する政令について、「政令で附則7条4項に対応するものを定めているものはなかった」と話す。(編集部注:2023年12月9日の改正で附則第7条4項は削除。詳細は記事下の追記)
日本ファクトチェックセンター(JFC)は、厚労省予防接種担当参事官室にも問い合わせた。ワクチン接種について、①国民全員が努力義務である、②特別扱いする法律はない、③附則にあった指定する政令もない、ことについて確認を求めたところ、それぞれ確認がとれた。
判定
ワクチン接種は努力義務であり、国家公務員や国会議員のみが受けなくて良い訳ではない。よって「国家公務員や国会議員はワクチン接種を受けなくて良いという法律がある」というのは誤り。
検証:杉江隼
編集:藤森かもめ、古田大輔
協力:東啓綜合法律事務所・新間祐一郎弁護士
追記
文中に記したように、附則第7条第4項は検証対象のツイート後の2023年12月9日の改正で削除されました。また、この改正で、予防接種法第9条の2で「政令で、当該規定ごとに対象者を指定して適用しないこととすることができる」が新設されていますが、政令で国家公務員や国会議員だけを特別に免除することを定めているものはありません。ファクトチェックの検証結果には影響ありません。(2023年1月25日)
検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。
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