(動画)エリザベス女王が食べ物を投げ与えている?【ファクトチェック】

(動画)エリザベス女王が食べ物を投げ与えている?【ファクトチェック】

「イギリスのエリザベス女王が子どもたちに食べ物を投げ与えている」という動画が、日本を含む世界で拡散しています。これは女王が生まれる前に撮影された映像で、誤った情報です。

検証対象

FacebookやX(Twitter)などで拡散している動画では、白いドレスに帽子姿の人が子どもたちに小さなものを投げ与えている。コメント欄には「女王がニワトリに餌を与えるように、アフリカの子供たちに食べ物を投げ与えている」などと書かれている。拡散は日本を含む世界にひろがり、多数の事例がある(例1、 例2)。

画像
Twitterで拡散した動画

検証過程

この映像と同じ映像をGoogleの画像検索で調べると、映画の基礎を築いたことで知られるフランスのリュミエール兄弟がつくった会社の作品「Enfants annamites ramassant des sapèques devant la pagode des dames」と一致する。タイトルから判断すると、小銭を拾うベトナムの子ども達を撮った映像のようだ。リュミエール兄弟が、1895年から1905年に制作した全1428作品をまとめたサイトによると、映像の女性2人はフランス人で、エリザベス女王ではない。撮影場所も、当時はフランス領だった安南(現在のベトナム北中部)であり、アフリカではない。

フランス文化庁のサイトから入る「フランス映画アーカイブ」にも、同じタイトルの映像が「1899年に制作され、1901年に販売された」と記されている。映像の説明には「インドシナ総督の妻と、その長女が投げたコインを、インドシナの子供たちが急いで拾おうとする」と書かれている。

画像
フランス映画アーカイブ

判定

2022年9月に96歳で死去したエリザベス女王は1926年4月21日生まれ。投稿された動画は女王が生まれる前に撮影されたものであることから、エリザベス女王が子どもたちに食べ物を投げ与えている、というのは誤り。

検証:JFCリサーチチーム
編集:藤森かもめ


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

「大阪万博にマラリア蚊など様々なウィルスを持った蚊が撒き散らされた」? 人を刺さない虫で感染症リスクは低い【ファクトチェック】

「大阪万博にマラリア蚊など様々なウィルスを持った蚊が撒き散らされた」? 人を刺さない虫で感染症リスクは低い【ファクトチェック】

「大阪万博にマラリア蚊などの様々なウィルスを持った蚊が撒き散らされた」という投稿が拡散しましたが、誤りです。日本国際博覧会協会や専門家によると、蚊に似た虫「ユスリカ」で、人を刺さず、感染症のリスクは低いといいます。 検証対象 2025年5月18日、「とうとう、始まってしまいました。大阪万博にDSビルゲイツのDSマラリア蚊や、様々なウィルスを持った蚊が撒き散らされました。大阪万博からパンデミックが始まります。やはり万博には行ってはいけないのです」という投稿が、画像とともに拡散した。 画像の左側には、ビル・ゲイツ氏の写真と「ゲイツが蚊をまいた2州で20年ぶりにマラリアが再流行」というメッセージがついている。右側は、虫らしきものが木製の柱に大量に止まっている。 この投稿は2025年5月21日現在、264万回以上の閲覧回数と3800件以上のリポストを獲得している。投稿について「本当だとしたら大変なことです」「怖すぎる」というコメントの一方で「これはユスリカです」という指摘もある。 検証過程 発生したのは蚊に似た虫「ユスリカ」 大阪万博の会場で、5月ごろか

By リサーチ チーム
日本は農薬使用量が世界一? 国連食糧農業機関の2022年データは16位【ファクトチェック】

日本は農薬使用量が世界一? 国連食糧農業機関の2022年データは16位【ファクトチェック】

日本が農薬使用量世界一だという主張が拡散していますが、誤りです。国連食糧農業機関(FAO)の最新データによると、日本は第16位で、農地面積あたりの農薬使用量は27位です。 検証対象 2025年5月17日、「日本が世界一農薬を使用している」という投稿がXで拡散した。 投稿には「日本が世界一農薬を使用しているのはただの事実だとして、何が問題なの?」や「日本の農地ってアメリカよりも格段に狭いってこと知らないの?」などのコメントがついているほか、「事実誤認です。農地面積あたりの農薬使用量、国あたりの総農薬使用量のいずれも、日本は世界一ではありません」というコミュニティーノートの指摘もある。 検証過程 国連食糧農業機関(FAO)のデータの検索欄に「農薬使用(Pesticide use)」と入力し、すべての国(All Countries)、農業使用(Agricultural Use)、最新の2022年と選んで検索すると、210か国の農薬使用量が表示される。 結果は1位がブラジルで80万0652トン、2位は米国46万7677トン、3位はインドネシア29万4670ト

By 根津 綾子
中国のクルーズ船が大量の汚水を海洋投棄している動画? AI生成によるディープフェイク【ファクトチェック】

中国のクルーズ船が大量の汚水を海洋投棄している動画? AI生成によるディープフェイク【ファクトチェック】

「中国のクルーズ船が大量の汚水を海洋投棄している」という動画が拡散しましたが、誤りです。この動画はAIで生成されています。 検証対象 2025年5月19日、「中国のクルーズ船が大量の汚水を海洋投棄しているという動画」「本当なら緊急に国際会議を招集すべき重大案件」という投稿が拡散した。投稿は大型の船が汚水を廃棄しているような動画を引用している。 2025年5月20日現在、この投稿は1500件以上リポストされ、表示回数は38万回を超える。投稿について「ちょっと耐えられんね」「汚い」というコメントの一方で「AI生成画像」という指摘もある。 検証過程 AI特有の不自然な描写 動画の10秒時点を確認すると、クルーズ船の下側を撮影していたはずの動画にも関わらず、小さなクルーズ船(赤丸)が出現している。また、下の小型ボートに乗っている人物たちと比較すると不自然に大きい人物(青丸)が写っている。 アメリカのコロラド州に拠点を置く2015年に設立されたファクトチェック団体「LEAD STORIES」は2025年5月にこの動画をファクトチェックし、「複数のAI検知ツ

By 木山竣策
遺伝子組み換えバナナはシールの数字で見分けられる?  遺伝子組み換えを示す数字はない【ファクトチェック】

遺伝子組み換えバナナはシールの数字で見分けられる? 遺伝子組み換えを示す数字はない【ファクトチェック】

市販されているバナナが遺伝子組み換えかどうか、シールの数字で見分けられると主張する投稿が拡散しましたが、誤りです。遺伝子組換え作物かどうかを示す数字はありません。 検証対象 2025年4月9日、「Doleのバナナ 遺伝子組み換えかどうかの見分け方」という投稿が、画像とともに拡散した。画像には「輸入果物のシールにあるバーコードの番号で遺伝子組み換えかどうかが判別できる」「8で始まる番号=遺伝子組み換え」などと書いてある。 この投稿にはThreadsの投稿のスクリーンショットが添付されており、元の投稿は約2.4万件のいいねを獲得している。 2025年5月19日現在、この投稿は1000件以上リポストされ、表示回数は50万回を超えている。 この投稿について、「遺伝子組み換えだったの!」「9で始まるものを選ぼうっと」などのコメントの他、「デマです」「令和7年3月21日現在、遺伝子組み換えバナナは認可されておらず、生産・輸入されていません」などのコミュニティノートの指摘もある。 検証過程 日本ファクトチェックセンター(JFC)は、果物のシールの番号で、遺伝子組

By リサーチ チーム

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は6月21日(土)午後2時~3時半で、お申し込みはこちら。 https://jfckousiyousei0621.peatix.com 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にどのよう

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験  教材と申し込みはこちら

JFCファクトチェッカー認定試験  教材と申し込みはこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)