モデルナ社CEOが逮捕された?【ファクトチェック】

モデルナ社CEOが逮捕された?【ファクトチェック】

モデルナ社ステファン・バンセル最高経営責任者(CEO)が逮捕されたという情報が拡散していますが、これは誤りです。添付されている画像は本物のニュースではなく、モデルナ・ジャパン社は取材に「完全なフェイクニュース」と回答しています。

検証対象

「モデルナCEO逮捕のニュースです いよいよ始まりましたね 殺人罪で逮捕」というツイートが拡散している。

画像

2022年11月16日時点で5300件以上のいいねがつき、「来ましたね!」「モデルナワクチンもかなり被害者が多いですからね」といったコメントがある一方、「事実確認できません」「残念ながらパロディニュースのサイトです」といった指摘も見られる。

検証過程

ツイートに掲載されている記事の画像は「REAL RAW NEWS」というウェブサイトから引用されている。

記事では、バンセルCEOが米疾病対策センター(CDC)のロシェル・ワレンスキー所長とワシントンDCでの会食を予定していたが、ワレンスキー氏は現れず、レストランから出たところを米軍特殊部隊が逮捕した、としている。「バンセル氏は新型コロナとインフルエンザの予防接種を1つにすることで得られる利益について、ワレンスキー氏と話し合う予定だった」と書かれている。

だが、このウェブサイトはニュースサイトではない。「About Us(私達について)」の項目には免責事項として次のように書かれている。「このウェブサイトは情報提供、教育、娯楽を目的としています。ユーモア、パロディ、風刺が含まれています」

最近は、米中間選挙に関連して「コロラド州では不法移民が民主党に投票」「米軍、選挙違反の証拠を発見」といった真偽不明の記事を配信している。

「モデルナ社CEO逮捕」について、日本ファクトチェックセンター(JFC)がモデルナ・ジャパン社に問い合わせると、「完全なフェイクニュースです」と回答を得た。逮捕が事実であれば、世界的なニュースになる内容だが、主要な報道機関で逮捕を報じているものはない。

判定

「モデルナ社ステファン・バンセルCEOが逮捕」は誤り

あとがき

海外には事実無根の作り話をニュースのように報じる、いわゆる「フェイクニュースサイト」が多数存在します。また、日本で人気の虚構新聞のように、娯楽として冗談や皮肉を掲載するパロディサイト・風刺サイトも存在します。見た目が立派で、一見、しっかりした報道機関に見えるサイトも多いので注意が必要です。

検証:落合俊
編集:野上英文、古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

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高市氏を「褒める」偽・誤情報、今後どう変わるか/JFC検証など7本【今週のファクトチェック】

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政治に関する偽・誤情報には、対象となっている政党や政治家にとってプラスになるものもあれば、マイナスになるものもあります。単純に言えば、「褒める」か「貶す」のどちらかです。 自民党の高市早苗新総裁は、ネット上でも人気が高かった安倍晋三元首相の路線の継承者を自認し、高市氏自身もネットで人気の高い保守系政治家です。総裁に選ばれて注目度がさらに上がったことで、当然、偽・誤情報が流れています。 現在のところ、「褒める」傾向の拡散が多いのが特徴です。日本ファクトチェックセンター(JFC)が検証したまとめサイトからの偽・誤情報の見出しの冒頭に「朗報」とついているところが象徴的です。「貶す」方向性であれば、これが「悲報」になりがちです。 公明党が連立離脱を発表し、高市氏はいきなり厳しい立場に立たされています。少数与党で政権運営に苦労すれば、支持率が伸び悩み、批判も増えてくるでしょう。そうすると、偽・誤情報は「貶す」方向に転じていきます。その方が拡散するからです。 褒める内容であれ、貶す内容であれ、間違っているものは間違っています。まずは、事実関係の確認が不可欠です。(古田大輔)

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総理大臣が高市氏に代わるからトランプ政権が態度を変えた? 軽減措置など総裁選前から報道【ファクトチェック】

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自民党総裁選で高市早苗氏が選ばれたことを受けて、米トランプ政権が関税の軽減措置を決めたという主張が拡散しましたが、誤りです。トランプ政権が軽減措置を検討していることは総裁選の前から報じられており、高市氏の選出とは無関係です。 検証対象 2025年10月5日、「あれだけ苦労した関税交渉。総理が高市早苗氏に代わるだけで軽減措置決定」「おまけにトランプ大統領自らが来日」という投稿がXで拡散した。 10月10日現在、投稿は1.3万回以上リポストされ、表示は718万件を超える。 投稿には「すごい👍すでに高市早苗効果が現れる✌️」などの反応の一方で、「最初にロイターが報じたのは日本時間早朝5:51です 総裁選の前です」などの指摘もある。 検証過程 日本ファクトチェックセンター(JFC)は時系列を確認した。下記の通りだ。 関税軽減措置は総裁選投開票前に報じられた 拡散した投稿は、毎日新聞が10月4日午後0時34分に配信した「トランプ政権、トヨタ・ホンダなどへの関税軽減措置を決定へ 米報道」という記事を引用している。 記事は、ロイター通信が10月3日に、ト

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欧州で移民が暴れる動画? ネパールの宮殿【ファクトチェック】

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欧州で移民による暴動が起きているかのような動画が拡散しましたが、誤りです。動画はネパールの宮殿で撮影されたもので、2025年9月の政府に対する抗議行動と見られます。 検証対象 2025年10月6日、「他国の文化への不寛容が止まらない 果たして、いつ日本は欧州のようになるのか」という文言付きの動画がXで拡散した。動画には、シャンデリアや大きな鏡のある洋風の広間のような部屋で、若者達が暴れている様子が映っている。 10月9日現在、投稿は940回以上リポストされ、表示は37.6万件を超える。 投稿には「欧州の人は何故怒らないの?」「えっどこ、パリ?ベルサイユ宮殿じゃないよね。噓でしょ。もうこんな奴らのその国のモスク全部破壊すべき」など、移民が建物を壊す様子だととらえた反応がある。 一方で、「ネパール旧首相官邸らしいです。2025年9月の抗議デモでの破壊映像。他国の文化に対してじゃなくて自国の政府に対して抗議してるようです」などのコメントもある。 日本保守党・北村晴男参議院議員が、この投稿を引用して「今ならギリギリ間に合います」と投稿したことで、動画はさらに拡

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