アルフィヤ候補に1分で6000票も、不正疑惑?有効票の確認によるもので開票速報では一般的【ファクトチェック】

アルフィヤ候補に1分で6000票も、不正疑惑?有効票の確認によるもので開票速報では一般的【ファクトチェック】

衆議院補選千葉5区で初当選した英利アルフィヤ候補の得票数について、NHKの報道を元に開票中に1人の候補者だけ「1分で6000票が増える」不審な動きがあったかのような投稿が拡散していますが、誤りです。千葉県選挙管理委員会の発表に異常な動きはありません。開票所の一部でアルフィヤ候補への投票の表記が有効か無効か確認する作業があり、その後に確認された得票分が一気に加算された、とNHKは報じています。

検証対象

2023年4月23日に投開票があった衆院補選千葉5区で、初当選した自民党の英利アルフィヤ候補の開票で不正があったと疑う情報が拡散した。

投稿は、NHK開票速報の画像と共に「1分で6000票 たまたまやんね?w」などのコメントがつけられている。矢崎堅太郎候補(立憲民主)が4万4000票で変わらないなか、1分の差で英利アルフィヤ候補の票数だけが急激に増えたように見えると指摘している(例1例2)。表示回数が40万件、引用を含めたリツイート数が3000件を超えるものなど複数の投稿がある。

画像

投稿のハッシュタグには、2020年アメリカ大統領選で「票が急激に増えた」と指摘された(後に不正は無いことが証明されている)バイデン大統領にちなんで「バイデンジャンプ」「アルフィヤジャンプ」などと書かれている。

検証過程

日本ファクトチェックセンター(JFC)は千葉県選挙管理委員会の開票速報を確認した。7人の候補者のうち、アルフィヤ候補と競っていたのは矢崎候補だ。開票率が30%を超えた4月23日午後11時の時点で両候補の得票数は1万2000票ずつだった。

その後の票の動きは以下の通り。午後11時半頃から徐々に差が開き、開票率が88.94%に達した4月24日0:00以降、さらに差が開いていった事がわかる。

画像

折れ線グラフにすると、以下の通りだ。

画像

「1分間で6000票がアルフィヤ候補に入った」という事実はない。ではなぜ、拡散した画像のように、選挙速報で1分間でアルフィヤ候補1人だけの得票が増えたように見えるのか。JFCは速報したNHKに問い合わせた。

回答があり次第、記事に追記するが、問い合わせ後、NHK千葉放送局が千葉5区での開票作業について記事を出した。記事では、NHKのホームページでアルフィヤ候補の票数が一気に6000票増えた理由について、千葉5区の市川市選管の発表を反映させたためと説明している。

市川市選管の午後11時の発表ではアルフィヤ候補の得票数は2万7000票だった。しかし、午後11時半の発表で3万3000票に増えた。投票用紙に書かれた名前の一部に、英利さんの届け出た「アルフィヤ」ではなく、「アルフィア」や「アリフィヤ」などと書かれたものがあり、立会人から「有効な票と認められないのではないか」との指摘があったため、確認に時間がかかった。そのため、確認後にアルフィヤ候補の得票数が一気に増えたという。

つまり選管による「有効・無効」の判断を待つ票がたまり、確認された後に得票数に一度に加えられた、ということだ。NHKは市川市選管の発表を速報ホームページに反映させたため、一分で6000票増えたように見えた。こうした開票発表や選挙速報ではよくある現象で、選挙に不正があったという意味ではない。

判定

以上のことから、アルフィヤ候補の得票数に選挙不正を疑わせる動きがあったという情報は誤り。

検証:堀口野明、宮本聖二
編集:古田大輔、藤森かもめ

検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。

「ファクトチェックが役に立った」という方は、シェアやいいねなどで拡散にご協力ください。誤った情報よりも、検証した情報が広がるには、みなさんの力が必要です。

X(Twitter)FacebookYouTubeInstagramなどのフォローもよろしくお願いします。またこちらのQRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、真偽が気になる情報について質問すると、AIが関連性の高い過去のJFC記事をお届けします。詳しくはこちらの記事を

もっと見る

立花氏の投稿削除と新聞のファクトチェック/コロナワクチン ロットによって接種者全員死亡?/拡散続く兵庫県知事選の偽情報【今週のファクトチェック】

立花氏の投稿削除と新聞のファクトチェック/コロナワクチン ロットによって接種者全員死亡?/拡散続く兵庫県知事選の偽情報【今週のファクトチェック】

元兵庫県議の急死をめぐる自らの投稿を立花孝志氏が投稿を削除しましたが、その背景に新聞によるファクトチェックがありました。去年11月の兵庫県知事選挙で、県警内部で斎藤氏以外の候補を応援するよう通達が出たという誤った情報を姫路市議が拡散させました。川田参院議員の発言で拡散したコロナワクチンの特定のロットで接種者全員が死んでいるという情報を検証しました。官民共同で偽・誤情報対策のためのリテラシー向上の啓発活動が始まることになりました。 ✉️日本ファクトチェックセンター(JFC)がこの1週間に出した記事を中心に、その他のメディアも含めて、ファクトチェックや偽情報関連の情報をまとめました。同じ内容をニュースレターでも配信しています。登録はこちら。 JFCからのお知らせ セミナー「新たなテクノロジーと偽情報 -AIの脅威と活用-」中止 1月30日に予定していたセミナー「新たなテクノロジーと偽情報 -AIの脅威と活用-」(共催:日本ファクトチェックセンター(JFC)、Code for Japan、早稲田大次世代ジャーナリズム・メディア研究所、協力:アメリカ大使館)は、

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
トランプ米大統領「まず潰すべき国はメキシコ、カナダ、中国、そして日本だ」と発言? まとめサイトによるもの【ファクトチェック】

トランプ米大統領「まず潰すべき国はメキシコ、カナダ、中国、そして日本だ」と発言? まとめサイトによるもの【ファクトチェック】

トランプ米大統領が「まず潰すべき国はメキシコ、カナダ、中国、そして日本だ」と発言したとする投稿が拡散しましたが、誤りです。トランプ大統領の実際の発言ではありません。掲示板サイトのスレッドタイトルを引用しているだけです。 検証対象 2025年1月21日、「🚨トランプ「まず潰すべき国はメキシコ、カナダ、中国、そして日本だ」/🔥🔥🔥日本🇯🇵ランクイン🔥🔥🔥」というポストがX上で拡散した。このポストは2025年1月24日現在、405.9万回以上の表示回数と3100件以上のリポストを獲得している。 検証過程 日本ファクトチェックセンター(JFC)が「トランプ氏の発言」として拡散した「まず潰すべき国はメキシコ、カナダ、中国、そして日本だ」をGoogle検索で調べたところ、掲示板サイト5ちゃんねるのスレッドのタイトル「トランプ『まず潰すべき国はメキシコ、カナダ、中国、そして日本だ』」と完全に一致した。 拡散した投稿とこのスレッドはともに2025年1月21日に投稿されている。このスレッドには以下のスクリーンショットが添付されている。 「トランプ氏の

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
厚労省審議会の委員に年間1845万円の報酬?常勤の特別職と混同(修正あり)【ファクトチェック】

厚労省審議会の委員に年間1845万円の報酬?常勤の特別職と混同(修正あり)【ファクトチェック】

厚生労働省の社会保障審議会の委員の報酬が年間で1845万円だという情報が拡散しましたが、誤りです。この審議会の委員は非常勤で会議開催ごとに謝金が支払われ、その額は1日最大1万9700円です。 検証対象 2025年1月20日、厚労省の社会保障審議会年金部会の委員一覧表と国家公務員特別職の給与一覧とともに「本当に日本政府はクソだな なんで社会保障を審議する委員が年に1845万ももらえるんだ?都合の良い事をいってもらう為だろ?」という情報が拡散した。 この投稿は、59万以上のインプレッションのほか、1500以上のリポストがあり「こいつらの報酬だけで4億円かかってるってこと? こんなのが無数にあるんだからいくら税金あってもたりないよな」「一般市民でこんなに年収もらえる人、どんなに真面目に働いても極々僅かですわ…」といったコメントがついていたが、22日夜この投稿は削除された。 この投稿に対して、委員一覧の中で赤い線が引かれていた委員の1人たかまつなな氏は、Xに誤りだとして、削除と訂正を求める投稿をした。 検証過程 日本ファクトチェックセンター(JFC)が拡散し

By 宮本聖二
立憲民主・野田代表「弱い人を助けるための政治はもう終わり」と発言? 切り取りでミスリード【ファクトチェック】

立憲民主・野田代表「弱い人を助けるための政治はもう終わり」と発言? 切り取りでミスリード【ファクトチェック】

立憲民主党の野田佳彦代表が「弱い人を助けるための政治はもう終わり」と話したかのような情報が拡散しましたが、ミスリードで不正確です。発言の一部を切り取って原文と異なる印象を与えています。 検証対象 2025年1月22日、「もう政治家やめてくれ」という文言と共に、立憲民主党の野田代表が「弱い人を助けるための政治はもう終わり」と発言しているような画像が拡散した。 2025年1月24日現在、この投稿は1.3万回以上リポストされ、表示回数は270万回を超える。投稿について「弱い人を助けるのが、政治の役目だろ」「こんな奴を代表にするな」というコメントの一方で「切り取りだね、これ」という指摘もある。 検証過程 画像の左上には「MBS NEWS」、右上には「立憲野田新代表選出『政権をとりにいく』」という文言がある。 毎日放送報道情報局が運営するYouTubeチャンネル「MBS NEWS」を確認すると、文言が一致する動画「『打倒自民党。戦いの準備を進めていきます』立憲新代表の野田佳彦氏 27日には自民党総裁選(2024年9月23日)」が見つかる。 2024年9月に投

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)