サウナで年間1万7000人が死亡している?【ファクトチェック】

サウナで年間1万7000人が死亡している?【ファクトチェック】

「サウナで年間1万7000人が死亡している」という言説が拡散しましたが、誤りです。引用元の記事にはヒートショックの年間の死亡者が1万7000人いるとの研究があると書かれているだけで、サウナでの死者数とは書いていません。ただし、サウナにもヒートショックのリスクはあります。

検証対象

「サウナで心臓停止が相次ぐ、交通事故死の3倍、年間1万7000人が死亡」というコメントとともに、Webサイトへのリンクを埋め込んだポストが拡散した。8月21日現在、表示回数が330万回以上、リポスト件数が6000件以上となっている。

画像

返信欄では「水風呂までキメると確かに気持ちいいが寿命を削っている感覚になるものまた事実」と同意の声がある一方で、「データが2011年のだ」など不備を指摘するコメントもある。

ハフポスト日本版も同様の言説に対してファクトチェックをし、不正確だと判定している。

検証過程

検証対象のリンク先を見ると、読売新聞の「夏のサウナ安全に『ととのう』」(2023年8月11日)という記事が元の記事だとわかる。記事に書かれている該当部分は以下の通りである。

「ヒートショックは脱衣場と浴槽の温度差が大きい冬に起きやすい。2011年には交通事故による死者(約4700人)の3倍超の約1万7000人が亡くなったとする研究もある」

「ヒートショック」とは、消費者庁のウェブサイトによると、「温度の急激な変化で血圧が上下に大きく変動する等によって起こる健康被害」であり、失神や心筋梗塞、不整脈、脳梗塞が例示されている。

ヒートショックを念頭に「冬のお風呂やサウナが危険!」と警鐘を鳴らす専門家はいる()が、引用された読売新聞の記事では、ヒートショックの死亡者が17000人と推計する研究があると述べられるだけで、サウナとの関連は触れられてない。また、調査は2011年のものである。

この研究の裏付けを検証するため、キーワードである「ヒートショック 研究 17000人」などとGoogle検索すると、東京都健康長寿医療センター研究所の2011年の研究のページが見つかる。

画像
画像

プレスリリース資料によると、高齢者の入浴中の急死の実態の把握のための調査である。同研究所の関連するヒートショック対処への提言でも同調査は引用されており、読売新聞の記事に記載されているように「2011年の1年間で約17,000人もの人々がヒートショックに関連した入浴中急死をしたと推計」と記されている。

なお、同資料には以下のように注記されている。

「ヒートショックは医学用語ではないので死亡診断書にヒートショックという用語は出てこず、『溺死』や『病死』と記入されているため、ヒートショックが原因と思われる死亡の正確な統計データはありません」

判定

検証対象や読売新聞の記事で引用されている東京都健康長寿医療センター研究所の研究はサウナに関連するものではなく、主に高齢者のヒートショックについての研究である。したがって、「サウナで年間1万7000人が死亡している」というのは推計調査を正しく引用しておらず、誤り。

検証:鈴木刀磨
編集:藤森かもめ、野上英文


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

ハンタウイルスにも効く新型コロナの情報ワクチン/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

ハンタウイルスにも効く新型コロナの情報ワクチン/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

大西洋を公開中のクルーズ船で集団感染のニュースが報じられたハンタウイルス。世界中で話題を呼んでおり、すでに多数の偽・誤情報も流れています。 関連ニュースで紹介した記事「I'm fighting misinformation online. False hantavirus claims follow a now-familiar playbook(オンラインで誤情報と闘う:ハンタウイルスをめぐる虚偽の主張は見慣れたパターンを辿る)」は、ハンタウイルスに関する偽・誤情報が、新型コロナウイルスのときに拡散したものに類似していると指摘しています。 「イベルメクチンが効く」という主張。「感染拡大の理由は新型コロナワクチン」という主張。「製薬業界の陰謀」「中国の生物兵器」など様々です。 類似の偽・誤情報は新型コロナのときにも拡散しました。状況がまだわからない状況で根拠のない主張をするものもあれば、科学的に完全に間違っている主張もあります。 あっという間に大量に拡散する偽・誤情報を、一つずつファクトチェックしても間に合いません。こういうときに役立つのが、ウイルスが拡散する前に「

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
日本年金機構を騙ってPayPayで送金させる偽メールに注意 「国民年金保険料の未納」と嘘

日本年金機構を騙ってPayPayで送金させる偽メールに注意 「国民年金保険料の未納」と嘘

日本年金機構を騙り、国民年金保険料の未納があるとしてPayPayなどで送金させる不審なメールが確認されています。日本年金機構は、Xなどで「全国的に多発していますので、ご注意ください」と呼びかけています。 「最終通知」などと不安を煽り、送金に誘導 偽メールは筆者のもとにも届いた。2026年5月から立て続けに私用メールアドレスに8件届いたメールの件名はいずれも「【重要】差押予告通知書(最終通知)- 日本年金機構」。 送信元のFrom欄には「日本年金機構」と表示されているが、メールアドレスのドメインはchance.comで、日本年金機構のドメイン(nenkin.go.jp)とは別のものだ。このため、メールには「認証情報のドメインとFromアドレスのドメインが一致していません」という警告が出ていた。 メールには「差押予告通知書」とあり、「この期限を過ぎた場合、差押手続きを即刻開始いたします」という文面とともに締め切り日時と、「PayPay  |  18,500円を今すぐ納付」と書かれたリンクが添付されている。 メール本文にあるリンクをクリックすると、実際にPay

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)
話題の書『フェイクニュースの免疫学』から学ぶ情報のワクチンの重要性 ファクトチェックだけではなぜ足りないのか

話題の書『フェイクニュースの免疫学』から学ぶ情報のワクチンの重要性 ファクトチェックだけではなぜ足りないのか

ファクトチェックは、偽・誤情報がすでに広がった後の「治療」です。流れた情報を検証し、誤りを指摘する。日本ファクトチェックセンター(JFC)が3年余りにわたって続けてきた仕事の中心も、ここにあります。しかし、誤情報の量と拡散速度はファクトチェックを遥かに上回ります。JFCに限らず、ファクトチェックは偽・誤情報に比べて常に遅すぎ、少なすぎます。 サンダー・ヴァン・ダー・リンデン著『フェイクニュースの免疫学--信じたくなる心理と虚偽の構造』(みすず書房)は、2023年に出版されて話題となった『Foolproof』の翻訳書。偽・誤情報が拡散する理由と、効果的な対策について解説しています。 人は事実と誤情報を見分けられない まず、人はどれだけ騙されてしまうのか。以下のような事例が紹介されています。 ・6本のニュース見出し(真偽が半分ずつ)を約1500人に提示し、すべての真偽を見分けられた人は4%。 ・数百人の中学生に「広告記事」を見せたら80%以上が「ニュース記事」と誤認、70%が石油企業の広告記事が世界の温暖化に関する科学的ニュース記事より「信頼できる」と回答。

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
高市首相が「自動車税の廃止」を正式決定? ニュース映像を加工した偽画像【ファクトチェック】

高市首相が「自動車税の廃止」を正式決定? ニュース映像を加工した偽画像【ファクトチェック】

高市早苗首相が自動車税を廃止したと発表したかのような画像つきの投稿が拡散しましたが、誤りです。そのような発表はなく、画像は加工されたものです。 検証対象 2026年4月、「高市首相がついに『自動車税の廃止』」を正式決定」などの投稿が相次いだ(例1)。「高志市長が自動車税の廃止を正式に決定」と書いている投稿もあり、これは「高市首相」の誤記と思われる(例2)。 検証する理由 例1、例2の投稿には、ともに2枚の画像が添付されており、一見、テレビのニュース番組から切り出した画像に見える。2枚目の画像を使った投稿は、ほかにもある(例3、例4)。 これらの投稿をしたアカウントの一部は5月7日時点ですでに凍結されているが、XやThreadsなど、多くのSNSで同じ画像が拡散しているため検証する。 検証過程 拡散した画像の1枚目は「速報 自動車税を廃止へ!! 家計負担の大幅軽減で関連株に追い風!」と書かれたもので投資を促す内容だ。 2枚目は高市氏の発言を取り上げたニュースのスクリーンショットのような画像で、画像の左上にテレビ朝日系列ANNのロゴがあり、「高市総

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は5月16日(土)午前10時~11時30分で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei0516.peatix.com 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にどのような

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験

JFCファクトチェッカー認定試験

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)