「拉致された横田めぐみさんと母が、毎月密会していた」は誤り【ファクトチェック】

「拉致された横田めぐみさんと母が、毎月密会していた」は誤り【ファクトチェック】

「拉致された横田めぐみさんと母が、毎月密会していた」という言説が拡散しましたが、誤りです。添付されている写真は、2014年に横田めぐみさんの母・早紀江さんと、めぐみさんの娘・ウンギョンさんが面会した時のもので、めぐみさんと早紀江さんの写真ではありません。

検証対象

2023年6月3日、「拉致されたはずの横田めぐみさんと母の早紀江さんが、実は毎月プライベート空港(横田基地)で行き来して密会してた?😳」というコメントとともに、女性3人が映った写真を添付したポストがX(Twitter)で拡散した。この投稿は2023年10月12日時点で1700回以上リポストされ、表示回数は42万回を超える。

画像

リプライ欄には「皇族の血統にあたる方ですね」などの声の一方で、「有名なネタです…」と指摘するツイートもある。

検証対象が引用したポストをたどると、元のポストは「毎月横田基地で恵さん(原文のまま)は横田夫妻と面会してました。米軍基地が横田基地と言われるのは毎月横田さんが来るからです」と主張している。

検証過程

1977年11月、当時中学1年生の横田めぐみさんは帰宅途中、北朝鮮に拉致された。2002年、北朝鮮は複数の日本人を拉致したことを認めて謝罪したが、めぐみさんについては「死亡した」と主張し、日本への帰還が実現していない。帰国した別の拉致被害者の証言などによると、めぐみさんは朝鮮語の教育を受けたり、工作員に日本語を教えたりしていたというが、消息は明らかではない(外務省NHK)。

また、外務省によると、めぐみさんは北朝鮮で娘のウンギョンさんを出産している。

日本ファクトチェックセンター(JFC)は横田めぐみさんと母親の早紀江さんが、「毎月密会していた」かどうかを検証した。

検証対象の写真をGoogle検索すると、日本経済新聞の記事(2016年6月9日)が見つかる。記事によると、投稿された写真は、めぐみさんの娘ウンギョンさん(左)、横田早紀江さん、ウンギョンさんの娘の3人を、2014年3月にウランバートルで撮影したものだ。めぐみさんと早紀江さんが面会する写真ではない。

画像

外務省も、横田めぐみさんについて安否未確認としている。
 JFCが「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)」に問い合わせたところ、西岡力会長の名前で以下の回答を得た。

「(横田夫妻とめぐみさんが面会した事実は)ありません。全くのデマです。無責任なデマを広げることに強く抗議します。拉致問題は重大な人権侵害であり国家主権の侵害です。デマを広めることはその解決を妨げます」

なお、検証対象の引用元が主張する「横田基地」の名前の由来は、福生市観光協会によると「当時、基地の東にあった村山村(現在の武蔵村山市)にあった地名から取られた」とされており、横田めぐみさんとは一切関連がない。

判定

添付されている写真は、めぐみさんの母・早紀江さんと、めぐみさんの娘・ウンギョンさんが2014年に面会した写真で、めぐみさんではない。救う会などへの取材からも密会していた事実はなく、誤りと判定した。

検証:リサーチチーム
編集:藤森かもめ、野上英文、宮本聖二

検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。

「ファクトチェックが役に立った」という方は、シェアやいいねなどで拡散にご協力ください。誤った情報よりも、検証した情報が広がるには、みなさんの力が必要です。

X(Twitter)FacebookYouTubeInstagramなどのフォローもよろしくお願いします。またこちらのQRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、真偽が気になる情報について質問すると、AIが関連性の高い過去のJFC記事をお届けします。詳しくはこちらの記事を

もっと見る

(動画)「トランプ前大統領が『岸田首相はグローバリストの操り人形』と発言」は誤り 生成AIによる映像【ファクトチェック】

(動画)「トランプ前大統領が『岸田首相はグローバリストの操り人形』と発言」は誤り 生成AIによる映像【ファクトチェック】

トランプ前大統領が「岸田首相はグローバリストの操り人形でビジョンもリーダーシップもない」と発言している動画が拡散しましたが、誤りです。AIによって作られた音声と映像です。 検証対象 2024年4月29日に、X(旧Twitter)でアメリカのトランプ前大統領が岸田首相をおとしめるような言葉を語る動画が拡散した。この25秒の動画の中でトランプ氏は、「日本の総理大臣の岸田文雄は、大変災難なことに、グローバリストの操り人形(パペット)にすぎず、ビジョンもリーダーシップのスキルもない、日本を愛するナショナリスト安倍晋三とは大違いだ」などと英語で話している。 この動画と内容をテキストにした投稿は、71万を超える閲覧、2800以上のリポストがある。「バイデンのいいなりだ」「その通り」など賛同の書き込みがある一方で「言ってることは良いけど音声とリップシングが少し同期外れる瞬間があるね」「AIだろAI」などと指摘する書き込みも多い。 検証過程 この25秒の動画は途中に4ヶ所の編集点があって、5つのカットがつなぎ合わされている。注意して見ていくと同じ5秒ほどのカットが繰り

By 宮本聖二
「大阪では8%以上が高校に進学せず中学が最終学歴」は誤り 大阪府の統計では98%以上が進学【ファクトチェック】

「大阪では8%以上が高校に進学せず中学が最終学歴」は誤り 大阪府の統計では98%以上が進学【ファクトチェック】

「大阪では高校に進学せず中学が最終学歴になる生徒が既に8%を超えている」という言説が拡散しましたが、誤りです。2023年度の大阪府の統計によると、中学校卒業者の高校等進学率は98.5%です。 検証対象 2024年4月27日、X(旧Twitter)で「大阪では高校に進学せず中学が最終学歴となる生徒が既に8%超え」というポストが拡散した。併せて「数年先には確実に10%を超えると言われている」「1割もの生徒が高校に進学しないなんて大阪だけ」とも主張し、大阪府の教育行政を批判している。ポストには吉村洋文・大阪府知事のニュース記事のリンクも付いている。 拡散したポストは約3000件のリポストを獲得し、15万回以上表示されている。 リプライや引用リポストでは大阪維新の会の政策を批判する意見が多数ある一方で、出典を示すように求める声もある。 検証過程 大阪府が2024年1月に公開した「令和5年度(2023年度)大阪の学校統計」の「II 卒業後の状況調査」では、2023年度の大阪府の高等学校等進学率は98.5%(男子98.5%・女子98.6%)で、前年比0.1ポイン

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
(画像)「トランプ氏が『キシダというのはどこがいいんだ?』と発言」は不正確 文脈無視の切り抜きでミスリード【ファクトチェック】

(画像)「トランプ氏が『キシダというのはどこがいいんだ?』と発言」は不正確 文脈無視の切り抜きでミスリード【ファクトチェック】

米国のトランプ前大統領が、2024年4月24日(日本時間)に自民党の麻生太郎副総裁と会談した内容について「キシダというのはどこがいいんだ?」と発言したとする画像が拡散しましたが、ミスリードで不正確です。発言には続きがあり、投稿はテレビ番組の一部を切り取っています。 検証対象 2024年4月28日、米国のトランプ前大統領が、麻生副総裁との会談で「岸田のどこがいい?」と発言したとする言説がX(旧Twitter)で拡散した。投稿には、テレビ画面のような画像が添付され、右上に「日曜報道」とロゴがある。 画面には麻生氏が「岸田首相をよろしく」と述べ、トランプ氏が「シンゾーは素晴らしかった でもキシダというのはどこがそんなにいいんだ?」と返している様子が描かれている。 このポストは4000件以上のリポストを獲得し、630万回以上表示された。リプライや引用リポストで「バイデン民主党の下僕がトランプ大統領に気に入られるはずがない」「トランプも流石に岸田の無能さとそれを信じ続ける無能な国民に呆れてんだろうね」などと岸田首相を批判するコメントが相次ぐ一方で、「切り取り」と指

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
「『条』の『木』を『ホ』と書くのは中国の表記で日本語ではない」は誤り 常用漢字表にも記載【ファクトチェック】

「『条』の『木』を『ホ』と書くのは中国の表記で日本語ではない」は誤り 常用漢字表にも記載【ファクトチェック】

「9条で世界平和を」と訴える横断幕について、「条」という漢字の書き方が日本語ではなく中国で使われる「簡体字」ではないかとの言説が広まりましたが、誤りです。横断幕の「条」の部首は「木」でなく「ホ」と書かれていて簡体字と一致しますが、日本の「常用漢字表」でも記載されています。 検証対象 2024年4月21日、X(旧Twitter)で「9条の『条』に注目」というコメントと共に、「9条で世界平和を」と書かれた横断幕の画像が拡散した。画像の「条」の文字は、部首の「木」が「ホ(縦の棒ははねている)」と表記されている。 このポストは18万回以上表示され、700件以上リポストされている。このポストのリプライや引用リポストには「日本人ではない漢字使い」「中国共産党の指示が裏にあるんですかねぇ」「中国の工作員ですね」などといったコメントが付き、部首の「木」を「ホ」と表記することは、日本の書体では誤りで、

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)