(動画)ハマスがイスラエルの子どもたちを檻に入れている?【ファクトチェック】

(動画)ハマスがイスラエルの子どもたちを檻に入れている?【ファクトチェック】

イスラム組織ハマスによるイスラエルへの攻撃をめぐり、子どもたちを檻に入れているという言説が映像とともに拡散しましたが、誤りです。映像は、ハマスによる攻撃よりも以前に投稿されていました。

検証対象

2023年10月8日、「ハマスが人質にしたイスラエルの子どもたちを檻に入れている」という投稿が、映像とともにX(Twitter)やFacebook、TikTokなどで拡散した。映像には幼児でも立ち上がれないほど狭い檻に連なるように入れられた子どもたちが映っている。

Xの投稿では英語で「この野蛮人のくず共は、地球上から抹殺すべきだ」という文言がつけられ、再生回数は230万超となっている。

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さらに同じ映像を使った別の投稿には、「ハマスが、昨日誘拐して檻に入れたイスラエルの子どもたちのビデオを公開し、モサドに捕らえられたテロリストの釈放を求めた」とスペイン語のコメントがついている。すでに削除されているが、アーカイブで確認できる。

これらの投稿に対して「それでもパレスチナを解放しろというのか」「こんな小さな子どもを傷つけるのは人間ではない」「世界は、イスラムの本当の姿を見ている」など、ハマスやパレスチナ人、イスラム教徒全体を非難する言葉が書き込まれている。

一方で、同じ動画に全く逆の「イスラエル側が、パレスチナの子どもを人質にしているという投稿もあった。これもアーカイブで確認できる。

ハマスがイスラエル人を人質にとっていることは、各報道機関も報じている事実だ。日本ファクトチェックセンター(JFC)は子どもたちが檻に入れられている動画について検証した。

検証過程

この動画はYouTubeがガイドライン違反で削除しているもあるが、ネット上で残っているものもある。

ロゴが入っていることから、元々はTikTokで​​"@user6903068251281"が投稿したものだとわかる。このアカウントのオリジナル投稿はすでに消されているが、ネット上で拡散した動画のスクリーンショットをGoogle画像検索すると、同様の画像が多数見つかる(例1例2)。

イスラエル・パレスチナに関する多くの誤情報を検証しているファクトチェック機関のX(Twitter)アカウント@FakeReporterは、投稿がハマスがイスラエルへ大規模攻撃をしかけるよりも前に投稿されていたと確認したという。「4d ago(4日前)」という投稿日への下線がそれを意味する。

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ハマスの攻撃は10月7日に始まった。9日に投稿されたXへの投稿に「4日前」と記されており、少なくとも、今回の戦闘に関する動画ではないことがわかる。

オリジナル動画を投稿したユーザーは、10月11日になって自ら語る18秒の映像を投稿した。そこで彼は「この子どもたちは私の身内であり、シオニストの子どもではありません。このビデオは状況が悪化する3日前に撮影されたものです。絶対にコメントを信じないでください」とアラビア語で話している。

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さらに、この子どもたちの映像はもっと前に撮影された可能性もある。「檻に閉じ込められたパレスチナの子どもたち(Palestinian Children Locked in Cages)」というタイトルの映像がYouTubeに投稿されていたことがわかった。すでに動画は削除されているが、アーカイブで確認するとプレビュー画面に2020年1月に投稿されたことが表示されている。

この動画は世界各国のファクトチェック団体が検証し、それぞれ今回の攻撃に関するものではないと判定している。今回の戦闘開始前の動画だといち早く指摘したFakeReporterは「どこから来た動画かはわからない」と述べている

判定

映像はハマスの攻撃開始前に投稿されていたもので、誤りと判定した。

検証:宮本聖二
編集:古田大輔、藤森かもめ、野上英文

イスラエル・パレスチナ情勢をめぐる検証まとめ

イスラエル・パレスチナ情勢をめぐり大量の誤情報/偽情報 検証方法を解説【ファクトチェックまとめ】
イスラエル・パレスチナの武力衝突に関連し、大量の誤情報/偽情報が世界的に拡散しています。互いの憎悪を煽るような投稿もあり、混乱に拍車をかけています。日本ファクトチェックセンター(JFC)がこれまでに検証した事例とともに、対応策をまとめました。 ※新たな検証があれば記事を更新します(最終更新2023年11月17日)。 対立煽る誤情報/偽情報 間違った情報に関して、一般的には「フェイクニュース」や「デマ」という言葉が使われることが多いですが、その内実は複雑です。 真偽が不確かな情報で社会が混乱する「情報汚染」を情報の意図と正誤で3つに分類すると、図のようになります。「誤情報:意図的ではないが誤っている」「悪意ある情報:意図的だが誤っていない」「偽情報:意図的に誤っている」の3つです。 ロシアとウクライナの戦争がそうであるように、イスラエル・パレスチナをめぐっても、大量の誤情報/偽情報/悪意ある情報が拡散しています。情報汚染は対立を煽り、混乱を悪化させます。発信元の確認や他の情報源との比較をするようにしましょう。 誤情報/偽情報の検証方法 大量に流れる情

検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。

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