マクドナルドのハンバーガーは30年前は65円?【ファクトチェック】

マクドナルドのハンバーガーは30年前は65円?【ファクトチェック】

「30年前」と「令和」におけるハンバーガーの価格や預金金利、平均年収などを比較した画像を添付したツイートが拡散しましたが、不正確です。マクドナルドがハンバーガーを65円で販売したのは2000年2月から2002年2月。他にも複数の誤りがありました。

検証対象

「30年前」と「令和」におけるハンバーガーや預金金利、平均年収などを比較した画像がTikTokやTwitterで拡散(例1例2)した。

例2のツイートをした元衆議院議員で前明石市長の泉房穂氏は「30年間、経済成長もせず、給料も上がらず、負担ばかり増え続けているのは、世界の中で日本ぐらいだ。悪いのは『国民』じゃなく『政治家』だ」との批判を展開する根拠として、この画像(例1のスクリーンショット)を添付した。

泉氏のツイートは2万回以上リツイートされ、5万件以上のいいねを獲得している。リプライには泉氏に賛同する声もある一方で、「この30年の中の都合いいところだけを持ってきていませんかね」「さらに昔は今より高かった」などの指摘もある。

検証過程

拡散した画像には、それぞれ内容の異なる8つの言説が含まれている。日本ファクトチェックセンター(JFC)は画像内の言説について一つずつ検証した。

マクドナルドのハンバーガー
マクドナルドのホームページを確認すると、現在の販売価格は170円(10%の消費税込み)で正しい。30年前の「65円」はどうか。ホームページには、1995年4月にハンバーガーを210円から130円へと値下げしたとの記述があり、朝日新聞やCBCテレビ(記事12)がハンバーガーの価格の推移を伝えている。

30年前の1993年のハンバーガーの値段は210円(3%の消費税込み)で、現在の販売価格よりも40円高かったことが分かる。また、日本マクドナルドの沿革には、平日半額キャンペーン時にハンバーガーを65円で販売したとの記載があるが、キャンペーンは2000年2月に始まったものであり、30年前の価格とは異なる。

よって「30年前、マクドナルドのハンバーガーは65円」は誤り。

吉野家の牛丼
現在の牛丼(並盛)の価格は408円(税抜)で、正しい。2001年に牛丼が400円から280円に値下げされたとプレジデントオンラインや現代ビジネスが伝えている(記事12)。しかし、30年前の1993年の販売価格は400円で、現在の価格より8円安い金額だった。

よって「30年前、吉野家の牛丼は280円」は誤り。

東京ディズニーリゾート
画像内で示されているのは「1デーパスポート」(大人)の価格であると考えられる。読売新聞や朝日新聞(記事12)が価格の推移を伝えており、1993年の1デーパスポートの料金は4800円で正しい。また、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは、東京ディズニーランドと東京ディズニーシーの2021年3月20日以降の入園チケットに変動価格制を導入した。2023年6月現在、1デーパスポート(大人)の価格は7900円から9400円の間で推移している。さらに、オリエンタルランドは、2023年10月からは祝休日を中心に日によっては1万円を超える料金を設定することを発表している。

金額に差はあるが、価格は数千円単位で上がっているので、ほぼ正確と判定した。

消費税
消費税の導入は、消費税法が施行された竹下登内閣の1989年4月。その後、消費税率は上昇していった。国税庁のホームページによると、消費税率は1997年に5%、2014年に8%に上がり、2019年からは10%となっている。なお、財務省のホームページによると、食品などの一部の品目を対象に税率を8%とする軽減税率制度がある。

よって正確。

預金金利
投稿の「預金金利」が「普通預金金利」を指すのか、「定期預金金利」を指すのか両面から検証する。

「普通預金金利」と考える場合
日本銀行の統計検索サイトで普通預金金利を検索すると、直近1年間の金利はいずれの月も0.001〜0.002%だった。日本銀行の統計によると、1993年の普通預金金利は0.22〜0.38%だった。元となるデータは日本銀行ホームページの「統計の注釈」から入手できる。

「定期預金金利」と考える場合
同様に、日本銀行の統計検索サイトで定期預金金利を検索すると、直近1年間は0.003〜0.018%の間を推移している。1993年は1.2〜4.07%であり、いずれの月も7%には届いていない。

よって「30年前の預金金利は7%」は誤り。

平均年収
年収とは1年間の総支給額を指し、実際に受け取る金額は給与である。画像内の金額は給与であると考えられる。国税庁によると、1993(平成5)年の平均給与は約452万円。国税庁が実施した2021年の民間給与実態統計調査によると、平均給与は約443万円だった。

平均給与が下がっていることから、金額に違いはあるが、ほぼ正確と判定した。

国民年金保険料
日本年金機構のホームページによると、1993年度の保険料(定額)は1万500円、2023年度の保険料(定額)は1万6520円だった。保険料の変遷はこちらからも確認できる。

よって「30年前の国民年金保険料は8400円」は誤り。

退職金
退職金の有無や給付額については、厚生労働省が「就労条件総合調査」(以前の名称は「賃金労働時間制度等総合調査​​」)の中で5年に1度、統計をとっている。現在公開されている最新の調査結果は2018年のもので、平均退職給付額(大学・大学院卒(管理・事務・技術職))は1788万円である。なお、2018年の調査から調査対象の業種に追加された「複合サービス事業」を含めると平均退職給付額は1983万円で、これは画像内の金額と一致する。JFCが入手できた最も古い調査結果は1997年のもので、平均退職給付額は2871万円だった。これは、画像内に示された金額と一致する。

退職金の平均給付額が下がっていることから、金額に違いはあるが、ほぼ正確と判定する。

判定

企業のホームページや統計、過去の報道などを確認すると、正確な情報も含まれる一方で誤りと判定できるものが複数あった。よって、総合的にこの画像全体を不正確と判定した。

検証:住友千花、高橋篤史
編集:古田大輔、藤森かもめ、野上英文、宮本聖二


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

地下鉄御堂筋線の案内板表記が日本語と英語だけになった? 流行の#Grok 検証も誤り【ファクトチェック】(修正あり)

地下鉄御堂筋線の案内板表記が日本語と英語だけになった? 流行の#Grok 検証も誤り【ファクトチェック】(修正あり)

大阪の地下鉄御堂筋線で案内板の表記が「日本語と英語だけになった」という情報が拡散しましたが、誤りです。看板はもともと日本語と英語表記のみです。Xの生成AIにファクトチェックさせた人もいますが、その回答も間違っていました。 検証対象 2025年4月1日「地下鉄御堂筋線 日本語と英語だけになりとても見やすくなった!」という投稿が拡散した。写真の案内板には電車が向かう方面が英語と日本語で書かれている。 2025年4月3日現在、この投稿は1万件以上リポストされ、表示回数は262万回を超える。投稿について「これで元通りです」「スッキリですね」というコメントの一方で「昔からここはそうだと思うが」という指摘もある。 また、この投稿には別ユーザーがxAI社のAI「Grok」によるファクトチェックをリプライ形式で付けている。 Grokによるファクトチェックには「以前は他の言語(たぶん中国語や韓国語)もあったのが削られて、シンプルになってます」などと書かれている。 検証過程 画像はなんば駅上りホーム 拡散した画像は後ろにローソンと電車が写っている。御堂筋線のローソ

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
ミャンマー地震の被害の映像? 生成AIによるディープフェイクなど拡散【ファクトチェック】

ミャンマー地震の被害の映像? 生成AIによるディープフェイクなど拡散【ファクトチェック】

ミャンマー中部で発生した大地震の映像とされる動画や画像が多数拡散していますが、その中には生成AIでつくられた「ディープフェイク」やミャンマーのものではない映像も多数混じっています。災害後には実際の被害と異なる映像が拡散するため、注意が必要です。 検証対象 2025年3月28日にミャンマー中部で大地震が発生し、3000人以上の犠牲者が出ている。隣国のタイや中国でも大きな揺れがあった。地震発生後、被害の様子の映像や画像が数多く拡散した。 例えば、巨大な亀裂が入った道路を上空から見た動画(例1)がある。 同じ動画や、他の動画と組み合わせて編集されたもの、動画から切り出した静止画などが、TikTokやインスタグラム、Xなど複数のプラットフォームで拡散した(例2、例3)。 また、宗教施設とみられる塔の間で建物が倒壊した様子を上空から見た動画も拡散した(例4、例5)。いずれの動画も複数のプラットフォームで拡散し、多くのインプレッションを獲得している。 検証過程 AI特有の不自然さ 検証対象の動画には、それぞれ不自然な点がある。 例1の動画は、画面左下

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
「ファクトチェックしたことない」半数、フィルターバブルなどの知識も普及せず 情報インテグリティ調査から見える課題と対策

「ファクトチェックしたことない」半数、フィルターバブルなどの知識も普及せず 情報インテグリティ調査から見える課題と対策

偽・誤情報の影響やその対策などの状況を総合的に把握するため、日本ファクトチェックセンター(JFC)は電通総研と共同で「情報インテグリティ調査」を実施しました。予備調査2万人、本調査5000人を対象に、JFCが実際に検証した15の偽・誤情報を使った影響調査の他、望ましい対策などを聞きました。 偽・誤情報の影響として「ストレスや不安を感じる」(48.3%)や、「ニュースに関する関心が低下した」(44.4%)などの回答が目立っています。 一方で「ファクトチェックをおこなったことがない」(47%)、「検証方法を学んだことはない」(64.3%)など、個人でも実践できる対策は普及しておらず、デジタル時代の情報環境を理解するための基礎的な用語の理解もほとんど広がっていないことが明らかになりました。 詳細版は月内に発表予定で、ここでは概要を紹介します。 偽・誤情報の影響「ストレス感じる」「ニュースに対する関心が低下した」 調査によると、「インターネット上の誤った情報・ニュースの存在があなたのニュースに対する態度や行動にどのような影響を与えていますか」という質問に対して「

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
ファクトチェック記事の増加と多様化 メディアリテラシー教育やAIツール開発など検証の実践的な知見を活用【JFC活動報告】

ファクトチェック記事の増加と多様化 メディアリテラシー教育やAIツール開発など検証の実践的な知見を活用【JFC活動報告】

日本ファクトチェックセンター(JFC)は2022年10月の設立からの活動をまとめた報告書を公開しました。詳しくはJFCサイトの「JFCとは」で章ごとにまとめていますので、そちらを御覧ください。 JFCとは日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェック(事実の検証)の実践とメディア情報リテラシーの普及に取り組む非営利組織です。民主主義の基盤であるデジタル公共空間の健全性を維持・向上させることを目的として活動します。 JFC活動報告「情報インテグリティのために」 JFCの設立経緯と組織構造:独立性を保つために JFCの設立経緯、体制、ファクトチェック組織としての独立性を保つための取り組みなどを説明しています。 JFCの設立経緯と組織構造日本ファクトチェックセンター(JFC)は、民主主義の基盤となるインターネットの言論空間の健全性を向上させることを目的とし、ファクトチェックとメディアリテラシー普及に取り組む非営利組織です。 拡散する不確かな情報について、証拠に基づいて真偽を確かめる「ファクトチェック(事実の検証)」、現代の情報環境への理解と対応力を高める「メディアリ

By 古田大輔(Daisuke Furuta)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は4月19日(土)午後2時~3時半で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei0419.peatix.com/ 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にどのような知識と

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験  教材と申し込みはこちら

JFCファクトチェッカー認定試験  教材と申し込みはこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)