ファイザー社のワクチンに酸化グラフェンが含まれている?【ファクトチェック】
「ファイザー社のワクチンに、非常に毒性の高い導電性物質である酸化グラフェンが含まれている証拠が発見された」と主張するツイートが拡散されました。これは誤りです。酸化グラフェンはワクチンの効果を検証するために使われますが、ワクチンの成分や製造過程には含まれていません。
検証対象
拡散したツイートには、The Exposeという英国を拠点とするニュースサイトの記事の写真に加えて、以下の文言が記されている。
ファイザー社のワクチンに、非常に毒性の高い導電性物質である酸化グラフェンが含まれていることを確認する証拠が最近発見された。裁判所がFADに提出させたファイザー社の機密文書で明らかになった。ここまで次から次へと陰謀論が真実になると5G関連も本当なのかもしれません。
投稿は2023年6月26日時点で100万回以上表示され、2100RTを超えている。返信欄には、「知ってた」「打たなくてよかった」という反応に加え、「これフェイクニュースサイトの記事ですよね?」などと指摘するコメントもあった。
The Exposeに対しては、ニュースサイトの信頼性をチェックするNewsGuardが「新型コロナウイルスやワクチン、ウクライナに関して繰り返し間違った、あるいはミスリーディングな発信をしている」と注意喚起している、
新型コロナのワクチンに酸化グラフェンが含まれているという言説は他にも拡散しており、USA Todayが検証記事で誤りだと判定してる。Reutersもワクチンには酸化グラフェンは含まれていないと検証している。
検証過程
The Exposeの記事は、ファイザー社が2023年2月1日に裁判で提出した資料を引用している。ICANという裁判資料データベースで「10741」という裁判資料番号を検索すると確認することができる。
この資料の5ページの「Objective」、または12ページの「Conclusion」を確認するとわかる通り、この資料の内容はワクチンの生産工程ではなく、効果検証の研究結果を記載したものだとわかる。7ページ目には「Graphene oxide(酸化グラフェン)」という記述がある。これはmRNAワクチンのタンパク質を低温電子顕微鏡法を用いて観察をする過程を説明した部分だ。
また、元ツイートの「FAD」という文言はアメリカ食品医薬品局(FDA)と考えられるが、FDA自身もツイートで「酸化グラフェンはワクチンの成分ではない」とはっきりと否定しており、7ページの記載についても「実験手順を説明するためのもの」と述べている。
また、ファイザー社のワクチン成分については、別のFDA資料で全て確認することが可能であり、ファイザーのグローバルメディアリレーション担当のKeanna GhazviniはReutersの記事にて、「ファイザーのCOVID-19ワクチンの製造に酸化グラフェンは使用されていません」と答えている。
判定
酸化グラフェンは低温電子顕微鏡法という観察手法で検証をする際に使われているが、製造工程や成分に含まれていない。以上のことから、誤りと判定した。
あとがき
英語圏で広がった誤情報が翻訳されて日本でも広がるケースが後を絶ちません。すでに海外で検証されていることもありますので、Googleが提供しているFact Check Toolsというファクトチェック記事データベースを使ってみると良いでしょう。
検証:堀口野明
編集:古田大輔、藤森かもめ
検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。
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