「サッカーW杯で日本サポーターがゴミを散らかしている」という動画は誤り【ファクトチェック】

「サッカーW杯で日本サポーターがゴミを散らかしている」という動画は誤り【ファクトチェック】

中東・カタールで開催中のサッカーワールドカップ(W杯)で、「日本サポーターがゴミを散らかしている」という英文のツイートが動画と共に世界で拡散しました。これはゴミを片付けている動画を逆回転して、散らかしているように見せており、誤りです。

検証対象

W杯の会場で、「日本のサポーターが袋からゴミを取り出し、スタジアムのあちこちに笑いながら捨てている。恥ずべき光景だ」という内容の英文ツイートが動画とともに拡散した。添付された動画では、日本代表のユニフォームや法被姿の人たちが、袋からゴミを取り出してスタジアムの座席付近に置いているように見える。

画像

リプライを見ると、大多数の人が「動画は逆再生されている」と指摘している。「冗談じゃないか」というコメントもある。

だが、このツイートのスクリーンショットが海外のネット掲示板に貼られ、日本への嫌悪感を示すコメントが書き込まれるなどの影響も出ている。

画像

検証過程

Google Chromeの拡張機能InVIDを使って動画から画像を切り出し、その画像をGoogleレンズで検索すると、ペルーのニュースサイトの記事が見つかる。

画像

11月23日に公開されたこの記事では「ワールドカップ:日本サポーターがドイツ戦の勝利のあとに世界に教えてくれること(原文はスペイン語)」と題して、サポーターがスタジアムを掃除していることを紹介し、動画付きのツイートも掲載している。

これが検証対象の元動画と同一のものと見られ、検証対象は逆再生していることがわかる。逆再生している動画では音声が聞き取れない音声が、元動画ではゴミを集めている男性が「いやー、勝ちましたね」などと話していることも確認できる。

判定

検証対象の動画は、実際には客席を掃除している日本のサポーターを、映像の逆再生によってゴミを捨てているように見せており、誤り。

あとがき

たとえ冗談のツイートでも、信じてしまう人もいます。さらにそのスクショ画像などが広がっていくことで影響は拡大します。

日本ファクトチェックセンター(JFC)では、日本語で拡散する誤情報や偽情報だけでなく、国外で拡散する日本に関する誤情報や偽情報も検証していきます。

検証:リサーチチーム、古田大輔
編集:藤森かもめ

検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。

「ファクトチェックが役に立った」という方は、シェアやいいねなどで拡散にご協力ください。誤った情報よりも、検証した情報が広がるには、みなさんの力が必要です。

X(Twitter)FacebookYouTubeInstagramなどのフォローもよろしくお願いします。またこちらのQRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、真偽が気になる情報について質問すると、AIが関連性の高い過去のJFC記事をお届けします。詳しくはこちらの記事を

もっと見る

「(動画)『裏金議員、増税メガネを選んだのは国民』と著名人が語りかけている」は誤り 投票を呼びかける2022年の映像を加工【ファクトチェック】

「(動画)『裏金議員、増税メガネを選んだのは国民』と著名人が語りかけている」は誤り 投票を呼びかける2022年の映像を加工【ファクトチェック】

著名人が選挙の投票を呼びかける動画に「裏金議員、増税メガネを選んだのは国民」などの字幕がついた投稿が拡散しましたが、誤りです。元の動画は、2022年の参議院議員選挙で政治参加や投票の大切さを訴えた動画です。字幕は後から加えられたものです。 検証対象 2024年4月8日、「裏金議員、増税メガネを選んだのは国民」「無関心、無投票は無責任」「立ち上がれ日本!」という文言とともに、著名人らが政治参加や投票について語る動画がX(旧Twitter)で拡散した。このポストは2024年4月24日時点で130万回以上表示され、1400件のリポストを得ている。 「裏金議員や国民を苦しめる政党ではいけないという事を芸能人達が伝えてる動画ですね」や、「自民党をぶっ壊せ!」などのコメントがつく一方で「動画自体は投票はあなたの声2022という運動の一環で作成されたもの」という指摘もある。 検証過程 動画は「中立的な」市民グループが制作 拡散した動画の元動画は、政治への関心を高めて投票率をあげる目的で、市民団体「VOICE PROJECT」が、2022年6月の参議院選挙に合わせ

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
国民民主党玉木代表の偽アカウント出現 次々に現れる「なりすまし」に注意

国民民主党玉木代表の偽アカウント出現 次々に現れる「なりすまし」に注意

国民民主党の玉木雄一郎代表のX(旧Twitter)のなりすましアカウントが現れて、玉木氏が自身の公式のアカウントで注意を呼びかけています。なりすましアカウントは次々に出現し、詐欺的なサイトへの誘導や個人情報を取られる危険があるため注意が必要です。 玉木代表が注意喚起 2024年4月23日、玉木代表がXの公式アカウントで、自身のなりすましアカウントが登場しているとしてユーザーに注意を呼びかけた。 なりすましだとする投稿にバツマークを書き入れて、「詐欺アカウントです。騙されないでください!通報に協力してください。」と書いている。 なりすましアカウントを見分ける なりすましアカウントは、玉木氏のアカウントのデザインとほぼ同じだ。 しかし、おかしな点が二箇所ある。IDが@tamakiyuiaihiro、ローマ字読みで「タマキユイアヒロ」となっている。また、フォロワーが公式アカウントは36万人以上いるが、なりすましアカウントは4人しかいない。 あとがき 著名人のなりすましアカウントや偽の広告は、SNSに次々と出てきています。詐欺サイトへの誘導や個人情報を

By 宮本聖二
「ゼレンスキー、辞職」は誤り ウクライナ政府から発表はない【ファクトチェック】

「ゼレンスキー、辞職」は誤り ウクライナ政府から発表はない【ファクトチェック】

ウクライナのゼレンスキー大統領が辞任するとの言説が広まりましたが、誤りです。ウクライナ政府の発表はありません。ゼレンスキー政権で閣僚の一部が辞任するのではないかという議員の発言がありますが、大統領ではありません。 検証対象 2024年4月20日、「【速報】ゼレンスキー、辞職」という、ツイッター速報の記事のリンク付きのポストが拡散した。拡散したポストは、4月22日現在で130万回以上の表示回数と1100件以上のリポストを獲得している。 検証対象についた記事は、インターネット掲示板「5ch」の書き込みを引用元に挙げているが、その書き込みの情報源は何も書かれていない。また、同じく5chを引用元とする言説は、他のまとめサイトでも拡散している。 検証過程 日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ゼレンスキー大統領が辞任するという発表があったかを検証した。 まず、ウクライナ大統領府の公式ページを確認した。この情報が拡散した2024年4月20日の一週間前の4月13日ごろから4月23日まで、ゼレンスキー大統領の辞任に関連するニュースなどは見つからない。 一方で、

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
四国の地震で過去映像など拡散 画像検索などで確認を

四国の地震で過去映像など拡散 画像検索などで確認を

2024年4月17日深夜、豊後水道を震源とする大きな地震が発生し、愛媛県と高知県で震度6弱を観測しました。地震発生後、無関係な過去の映像や画像が拡散しました。これは被害状況の把握や避難、救護活動に悪影響を及ぼしかねません。 災害時に拡散する過去映像 地震発生直後「6.6 Earthquake Hit Shikoku, Japan(6.6の地震が日本の四国で発生))」と英語で書かれているが、今回の地震ではなく能登半島地震の動画をつけた投稿が拡散した。 こちらも海外の投稿で能登半島地震の画像を使い、「マグニチュード6.3の強い地震が日本の南西部を直撃した、震源は九州と四国の間の(豊後)水道だ」などと英語で書いている。 次の投稿も同様に能登半島地震の画像を使っている。英語で「30分前にマグニチュード6.3の地震が四国を襲った」と書いている。 今回の地震は深夜11時過ぎに発生したが「四国の地震」だと記しつつ、明らかに昼間の地震の映像が数多く投稿されている。 同じ映像はYouTubeにも投稿されてタイトルに「Tsunami Warning」と書かれている

By 宮本聖二