ヨーロッパでは新型コロナワクチンで死亡しても生命保険は出ない?【ファクトチェック】

ヨーロッパでは新型コロナワクチンで死亡しても生命保険は出ない?【ファクトチェック】

「ヨーロッパでは、新型コロナのワクチン接種で死亡しても生命保険は出ない」というツイートが拡散していますが、この投稿は誤りです。欧州保険協会が取材に「事実ではない」と回答し、多くの海外メディアもファクトチェック記事で否定しています。

検証対象

2022年11月3日、「ヨーロッパでは新型コロナのワクチン接種はボランティア扱いとなり、死亡しても生命保険はおりず、大きな社会問題になっている」という内容のツイートが投稿され、拡散した。

画像

このツイートは1000RTを超え、「知ってました。だから打ちません。」「保険会社もグルだったのか…」といったリプライがある一方、「僕は保険屋の中の人として『全くデマです』と責任持って宣言する」「そのような事実はない(デマである)という発表が保険会社から出ていましたよね」といったコメントもある。

検証過程

日本ファクトチェックセンター(JFC)が、欧州の保険会社を代表する欧州保険協会(Insurance Europe)に問い合わせたところ、以下のような回答があった。

「『欧州ではCOVID19ワクチン摂取による死亡が生命保険でカバーされない』というのは事実ではありません。このため、大きな社会問題にもなっていません」「ワクチンを打った何百万人ものケースでごく稀に重篤な副作用がありますが、そのような場合でも死亡を補償しない生命保険があるとは聞いていません」

また、欧州保険協会に加盟する英国保険会社協会(Association of British Insurers)もTwitter上で「COVID19ワクチンを接種すると、生命保険に影響があるとの主張があります。これは誤りです。COVID19の予防接種を受けたとしても、生命保険、民間医療保険、その他の保険のカバーに影響を与えることはありません」との声明を出している。

画像

「新型コロナワクチンの接種によって死亡しても生命保険は出ない」という言説は欧州に限らず、世界中で拡散している。アメリカのSnopesPolitiFact、イギリスのReuters、フランスのLibération、オーストラリアのAAP、アフリカのAfricaCheckなど、多くの海外メディアも、各国の生命保険の適用の有無に関連したファクトチェック記事を配信している。いずれの記事も、生命保険の適用外にはならず、誤った情報だと報じている。

判定

欧州保険協会によると、新型コロナのワクチン接種者に生命保険が適用されないという事実はなく、社会問題化もしていない。よって、「ヨーロッパでは、新型コロナのワクチンで死亡しても生命保険は出ない」というのは誤り。

あとがき

日本においては、生命保険協会がTwitter上でワクチン接種の有無に関わらず、死亡保険金や入院給付金を支払っていますという声明を出しています。

画像

検証:杉江隼
編集:野上英文


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

都議選・八王子で開票に不正? 出口調査と投票結果は異なる【ファクトチェック】

都議選・八王子で開票に不正? 出口調査と投票結果は異なる【ファクトチェック】

2025年6月22日に投開票があった東京都議会議員選挙の八王子選挙区で、参政党の候補者が落選したのは、不正があったからではないか、という主張がXで拡散しましたが、誤りです。根拠とされている情報は選挙で拡散しがちなもので、市選挙管理委員会は「不正はなかった」と説明しています。 検証対象 2025年6月27日、「東京都議選八王子で不正開票疑惑」という内容の動画が拡散した。 2025年6月30日現在、投稿は7700回以上リポストされ、表示は87万件を超える。投稿には、「徹底的に調査してほしい」や「昔だったらそんな事ないだろうだが今はそうかもしれないなあ」などのほか「八王子市の無効投票率は他の地域と比較して特に高いわけではない」というコミュニティーノートの指摘もある。 検証過程 投稿された動画は1分8秒、八王子選挙区で参政党候補者の與倉さゆり氏が落選したのは、不正開票によるものだと指摘している。 根拠は3つ。出口調査の結果と差があること、開票作業で得票数が長時間停止したこと、2598票もの無効票があったこと、を挙げている。 出口調査の結果と違うから不正?

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
世界のファクトチェッカーの年次総会がリオで開催/検証7本・関連11本など【今週のファクトチェック】

世界のファクトチェッカーの年次総会がリオで開催/検証7本・関連11本など【今週のファクトチェック】

世界中のファクトチェッカーが集まる年に1度の総会「グローバルファクト」第12回大会がブラジル・リオデジャネイロで開かれました。筆者(古田)は第9回から4年連続の参加。3日間にわたる会合で主なテーマになったのは、アメリカのトランプ第2次政権誕生後のファクトチェックへの逆風、経済的な支援が細る中で、いかに生き残るか、そしてAIをいかに活用するかでした。今後、解説記事で内容を紹介していきます。(古田大輔) ※冒頭にミニコラムをつけるようにしました。ご意見・ご感想などはこちら。 ✉️日本ファクトチェックセンター(JFC)がこの1週間に出した記事を中心に、その他のメディアも含めて、ファクトチェックや偽情報関連の情報をまとめました。同じ内容をニュースレターでも配信しています。登録はこちら。 JFCからのお知らせ JFCファクトチェック講師養成講座はこちら 日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
東京新聞が都議選の開票不正を報じた? そのような記事はない【ファクトチェック】

東京新聞が都議選の開票不正を報じた? そのような記事はない【ファクトチェック】

「東京新聞が都民ファーストの開票不正を暴露した」という情報が拡散しましたが、誤りです。2025年6月27日時点で、そのような報道はありません。 検証対象 2025年6月26日、「6月24日、東京新聞デジタルは都民ファの不正集計疑惑を報じた」「練馬区の開票所で実際に作業していたスタッフによると速報値と実票数が100票近くズレていたんです」という内容の動画がTikTokで拡散した。 この動画は1.2万件以上のいいねを獲得している。この動画はXでも投稿され、2025年6月27日現在、2050件以上リポストされ、表示回数は6.4万回を超える。 投稿について「何で地上波のニュース出ないのかな」「やっぱり不正はあるのだろうやぁ、、参議院選」というコメントの一方で「元記事を貼ってない情報は嘘」という指摘もある。 検証過程 2025年6月22日に投開票を迎えた東京都議会議員選挙は小池百合子都知事が特別顧問を務める都民ファーストの会が31議席を獲得して第1党に返り咲く一方、自民党は30議席から9減らし、過去最低の議席数となった(NHK"都議選2025 開票結果 全42

By 木山竣策
介護福祉士の国家資格は外国人だと不合格でも取得OK? 国籍関係なしの特例運用【ファクトチェック】

介護福祉士の国家資格は外国人だと不合格でも取得OK? 国籍関係なしの特例運用【ファクトチェック】

介護福祉士の国家資格について「外国人は不合格でも取得できる特例がある」という投稿が拡散しましたが、不正確です。特例が適用された外国人が多いのは事実ですが、国籍に関係なく日本人にも適用されます。 検証対象 2025年6月13日、2ちゃんねる開設者のひろゆき氏が、介護福祉士の国家資格について「日本人だと試験に不合格だと資格が取れないが、外国人だと不合格でも資格が取れる。特例適用8000人は外国人が中心。外国人だけ有利にして日本人が損する措置」という趣旨のポストをXに投稿した。 2025年6月25日現在、リポスト数は1.5万、表示回数は323.9万を超える。投稿には「日本人の職場がどんどん奪われている」や「選挙に行かねーとマジでこの地獄から脱却出来ねーぞ」などの反応のほか、誤りを指摘するコミュニティーノートもある。 検証過程 「特例措置適用者の多くが外国人」は事実 拡散した投稿には、読売新聞の記事「介護福祉士の国家資格『不合格でもOK』特例適用8000人超、外国人が中心…継続に賛否」へのリンクがついている。 記事は「介護分野の国家資格『介護福祉士』につ

By 根津 綾子(Ayako Nezu)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は7月22日(火)午後2時~3時15分で、お申し込みはこちら。 https://jfckoushiyousei0722.peatix.com/ 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的に

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験  教材と申し込みはこちら

JFCファクトチェッカー認定試験  教材と申し込みはこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)