「沖縄県知事選3ヶ月前から那覇市だけでも100人以上人口増」は不正確【ファクトチェック】

「沖縄県知事選3ヶ月前から那覇市だけでも100人以上人口増」は不正確【ファクトチェック】

2022年9月に行われた県知事選挙の前に「3ヶ月前から那覇市だけでも100人以上人口増加」というツイートが拡散しました。実際には人口は今年の1月から減少傾向にあり、投票に直接影響する選挙人名簿登録者数も減っています。投稿は不正確です。

検証対象

2022年9月4日にTwitterに投稿された「3ヶ月前から沖縄県那覇市だけでも100人以上人口増加」というツイートが7000件以上のリツイート、2万件近いいいねを獲得した。

リプライを見ると、「知らなかった、なんか闇がありそう…」や「活動家達の選挙権獲得移住ですね。」など選挙不正を疑う声もある。

検証過程

まず、那覇市が公開している人口動態を見てみる。最新のもので8月末時点までのデータが公開されている。JFCでグラフ化すると、3月末から5月末には2カ月連続で計399人増えているが、5月末から8月末にかけて、右肩下がりで減っていることがわかる。1月末から見ても1000人以上減っている。

画像
作成:JFC 本橋瑞紀

琉球新報が9月に実施したファクトチェックでは、沖縄での選挙で、これまでにも「不自然に人口が増えている」などと選挙不正を疑う情報が流れたが、選挙のあるなしに関わらず、多少の増減はごく一般的に存在すると指摘した。

JFCでは、今回の言説が県知事選挙に関するものであるため、Twitterが指摘する那覇市について、選挙時に使われる那覇市の選挙人名簿登録者数の推移もグラフ化した。

画像
作成:JFC 本橋瑞紀

選挙人名簿は市区町村の選挙管理委員会が管理しており、定期的な登録の他、選挙時にも告示日(公示日)前日を基準として登録している。那覇市では、今回の県知事選の登録者数は赤字で示した25万7835人で、2018年3月からの過去4年半で2番目に低い水準となっている。

判定結果

「那覇市の人口増加」は、一時的には存在するものの全体的に減少傾向にあり、かつ、選挙人名簿登録者数も減っているため、不正確と判定した。

あとがき

2021年7月の那覇市議選と2022年6月の参院選の際の登録者数が高い水準となっていますが、これは選挙人名簿の制度設計が理由です。

那覇市によれば、選挙人名簿の被登録資格は「住民票が作成された日(他の市町村からの転入者は転入届をした日)から引き続き3カ月以上住民基本台帳に記録されている人」であるのに対し、登録の抹消は「死亡、または日本国籍の喪失」の他に「転出したときは、転出日から4カ月を経過したとき」とあります。

新年度に合わせて転入した人が選挙人名簿に登録された一方、転出した人の抹消はまだだったことで選挙人名簿の人数が増えたと考えられます。

検証:本橋瑞紀
編集:野上英文、藤森かもめ

検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。

「ファクトチェックが役に立った」という方は、シェアやいいねなどで拡散にご協力ください。誤った情報よりも、検証した情報が広がるには、みなさんの力が必要です。

X(Twitter)FacebookYouTubeInstagramなどのフォローもよろしくお願いします。またこちらのQRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、真偽が気になる情報について質問すると、AIが関連性の高い過去のJFC記事をお届けします。詳しくはこちらの記事を

もっと見る

「(動画)『裏金議員、増税メガネを選んだのは国民』と著名人が語りかけている」は誤り 投票を呼びかける2022年の映像を加工【ファクトチェック】

「(動画)『裏金議員、増税メガネを選んだのは国民』と著名人が語りかけている」は誤り 投票を呼びかける2022年の映像を加工【ファクトチェック】

著名人が選挙の投票を呼びかける動画に「裏金議員、増税メガネを選んだのは国民」などの字幕がついた投稿が拡散しましたが、誤りです。元の動画は、2022年の参議院議員選挙で政治参加や投票の大切さを訴えた動画です。字幕は後から加えられたものです。 検証対象 2024年4月8日、「裏金議員、増税メガネを選んだのは国民」「無関心、無投票は無責任」「立ち上がれ日本!」という文言とともに、著名人らが政治参加や投票について語る動画がX(旧Twitter)で拡散した。このポストは2024年4月24日時点で130万回以上表示され、1400件のリポストを得ている。 「裏金議員や国民を苦しめる政党ではいけないという事を芸能人達が伝えてる動画ですね」や、「自民党をぶっ壊せ!」などのコメントがつく一方で「動画自体は投票はあなたの声2022という運動の一環で作成されたもの」という指摘もある。 検証過程 動画は「中立的な」市民グループが制作 拡散した動画の元動画は、政治への関心を高めて投票率をあげる目的で、市民団体「VOICE PROJECT」が、2022年6月の参議院選挙に合わせ

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
国民民主党玉木代表の偽アカウント出現 次々に現れる「なりすまし」に注意

国民民主党玉木代表の偽アカウント出現 次々に現れる「なりすまし」に注意

国民民主党の玉木雄一郎代表のX(旧Twitter)のなりすましアカウントが現れて、玉木氏が自身の公式のアカウントで注意を呼びかけています。なりすましアカウントは次々に出現し、詐欺的なサイトへの誘導や個人情報を取られる危険があるため注意が必要です。 玉木代表が注意喚起 2024年4月23日、玉木代表がXの公式アカウントで、自身のなりすましアカウントが登場しているとしてユーザーに注意を呼びかけた。 なりすましだとする投稿にバツマークを書き入れて、「詐欺アカウントです。騙されないでください!通報に協力してください。」と書いている。 なりすましアカウントを見分ける なりすましアカウントは、玉木氏のアカウントのデザインとほぼ同じだ。 しかし、おかしな点が二箇所ある。IDが@tamakiyuiaihiro、ローマ字読みで「タマキユイアヒロ」となっている。また、フォロワーが公式アカウントは36万人以上いるが、なりすましアカウントは4人しかいない。 あとがき 著名人のなりすましアカウントや偽の広告は、SNSに次々と出てきています。詐欺サイトへの誘導や個人情報を

By 宮本聖二
「ゼレンスキー、辞職」は誤り ウクライナ政府から発表はない【ファクトチェック】

「ゼレンスキー、辞職」は誤り ウクライナ政府から発表はない【ファクトチェック】

ウクライナのゼレンスキー大統領が辞任するとの言説が広まりましたが、誤りです。ウクライナ政府の発表はありません。ゼレンスキー政権で閣僚の一部が辞任するのではないかという議員の発言がありますが、大統領ではありません。 検証対象 2024年4月20日、「【速報】ゼレンスキー、辞職」という、ツイッター速報の記事のリンク付きのポストが拡散した。拡散したポストは、4月22日現在で130万回以上の表示回数と1100件以上のリポストを獲得している。 検証対象についた記事は、インターネット掲示板「5ch」の書き込みを引用元に挙げているが、その書き込みの情報源は何も書かれていない。また、同じく5chを引用元とする言説は、他のまとめサイトでも拡散している。 検証過程 日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ゼレンスキー大統領が辞任するという発表があったかを検証した。 まず、ウクライナ大統領府の公式ページを確認した。この情報が拡散した2024年4月20日の一週間前の4月13日ごろから4月23日まで、ゼレンスキー大統領の辞任に関連するニュースなどは見つからない。 一方で、

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
四国の地震で過去映像など拡散 画像検索などで確認を

四国の地震で過去映像など拡散 画像検索などで確認を

2024年4月17日深夜、豊後水道を震源とする大きな地震が発生し、愛媛県と高知県で震度6弱を観測しました。地震発生後、無関係な過去の映像や画像が拡散しました。これは被害状況の把握や避難、救護活動に悪影響を及ぼしかねません。 災害時に拡散する過去映像 地震発生直後「6.6 Earthquake Hit Shikoku, Japan(6.6の地震が日本の四国で発生))」と英語で書かれているが、今回の地震ではなく能登半島地震の動画をつけた投稿が拡散した。 こちらも海外の投稿で能登半島地震の画像を使い、「マグニチュード6.3の強い地震が日本の南西部を直撃した、震源は九州と四国の間の(豊後)水道だ」などと英語で書いている。 次の投稿も同様に能登半島地震の画像を使っている。英語で「30分前にマグニチュード6.3の地震が四国を襲った」と書いている。 今回の地震は深夜11時過ぎに発生したが「四国の地震」だと記しつつ、明らかに昼間の地震の映像が数多く投稿されている。 同じ映像はYouTubeにも投稿されてタイトルに「Tsunami Warning」と書かれている

By 宮本聖二