(イスラエル・パレスチナ)「イスラエル人がテントで野営している」という画像はAIで生成【ファクトチェック】

(イスラエル・パレスチナ)「イスラエル人がテントで野営している」という画像はAIで生成【ファクトチェック】

イスラエル・パレスチナでの武力衝突に関連し、「シオニストのために建てられた野営地」という画像付き言説が拡散しました。イスラエル人が仮設テントで避難生活を始めたかのような内容ですが、誤りです。この画像はAIで生成されたものです。

検証対象

2023年10月23日、X(旧Twitter)上で「シオニストのための最初の野営地が建てられた」などの言説が画像とともに拡散した。画像には、砂地の上にイスラエルの国旗と同じ青色と白色のテントが並び、ユダヤ人の象徴とされる六芒星「ダビデの星」の紋様のついたテントも映っている。

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同じ画像を使った別のポストには、「イスラエルは、南からハマスの、北からはヒズボラの圧迫を受けて戦争に負けつつある」「イスラエル人の入植者たちは各地から避難した」などのコメントがつき、イスラエル人がテント暮らしを始めたと主張している。

検証過程

画像検索ツールで探しても、主要なメディアでこの写真を報道に使っているところはない。

画像を確認すると、まず画面左側で風になびく旗は、イスラエル国旗にも見えるが、中のダビデの星は形が崩れている上、国旗であれば1つのはずの星が2つ描かれている。

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また、旗の下には群衆のような姿が映っている(①)が、一人一人の頭や腕、脚などは確認できず、人間らしいシルエットにしか見えない。右上(②)も画面手前のテントに比べると何が映っているのか分かりにくく、突然奥だけ画質が悪くなったように曖昧な物体にしか見えない。

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この写真については、イギリスBBC調査報道部門「BBC Verify」やインドのニュースメディア「The Quint」などもAI生成だとファクトチェックしている。

判定

画像に使われている旗や群衆の姿、画面奥のテントのように見える物体の造形などから、AIによって生成された「偽画像」だと判定した。

あとがき

戦争や災害などの混乱時には、AIで実際には存在しない場面を生成したり、加工したりし、見た人を混乱させる「偽画像」が多く拡散します。

今回の画像では、画面奥の群衆や物体の造形が曖昧で滲んでいるように見えますが、これまでのAI生成では群衆などはもっと雑なものでした。この画像では手前の人物や物体はしっかり再現されており、AI生成の画像や動画は精巧になりつつあります。

驚くような画像や動画を見たときは、まず立ち止まってディテールを確認してみるなど注意が必要です。

検証:リサーチチーム
編集:宮本聖二、野上英文、藤森かもめ、古田大輔

イスラエル・パレスチナをめぐる検証まとめ

イスラエル・パレスチナ情勢をめぐり大量の誤情報/偽情報 検証方法を解説【ファクトチェックまとめ】
イスラエル・パレスチナの武力衝突に関連し、大量の誤情報/偽情報が世界的に拡散しています。互いの憎悪を煽るような投稿もあり、混乱に拍車をかけています。日本ファクトチェックセンター(JFC)がこれまでに検証した事例とともに、対応策をまとめました。 ※新たな検証があれば記事を更新します(最終更新2023年11月17日)。 対立煽る誤情報/偽情報 間違った情報に関して、一般的には「フェイクニュース」や「デマ」という言葉が使われることが多いですが、その内実は複雑です。 真偽が不確かな情報で社会が混乱する「情報汚染」を情報の意図と正誤で3つに分類すると、図のようになります。「誤情報:意図的ではないが誤っている」「悪意ある情報:意図的だが誤っていない」「偽情報:意図的に誤っている」の3つです。 ロシアとウクライナの戦争がそうであるように、イスラエル・パレスチナをめぐっても、大量の誤情報/偽情報/悪意ある情報が拡散しています。情報汚染は対立を煽り、混乱を悪化させます。発信元の確認や他の情報源との比較をするようにしましょう。 誤情報/偽情報の検証方法 大量に流れる情

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