AI活用に関するガイドライン

AI活用に関するガイドライン

生成AIによる偽・誤情報の作成や拡散の影響が拡大し、日本ファクトチェックセンター(JFC)でも日々、それらの真偽検証に取り組んでいます。

無尽蔵に精巧な偽画像や偽動画などを作り出せるAIに対して、人間によるファクトチェックだけで対抗することはできません。「目には目を、AIにはAIを」です。JFCは、ファクトチェック記事の作成や配信、業務効率化のためにAIを積極的に活用します。

上手に活用すれば非常に役立つ道具ですが、同時に使い方を誤れば、JFC自身が誤情報を拡散させる結果にも繋がりかねません。このガイドラインでは、JFC編集部がAIを使用する上での基本原則を定め、信頼性向上のために公開します。

このガイドラインはAIの進化や活用手法の拡大にともなってアップデートしていきます(2024年8月13日)。

AI活用の原則

ルール1: 確認

生成AIが作成した文字情報をそのままJFCの記事や公開情報として活用しない。必ず、人間が確認し、事実と確認された内容だけを記事などに活用する。

ルール2: 明示

生成AIで作成した画像や動画を使用する際は読者や視聴者がわかる形でそのことを明示する。引用・転載の場合も生成AIで作られた、またはその可能性が高い場合はそのことを明示する。

ルール3: 改変の禁止

JFCのコンテンツに活用する画像や動画をAIで改変しない。ただし、生成AIについて解説するためなどの限定的な場合にはそのことを明示した上で利用する。

ルール4: 機密事項の入力の禁止

生成AIに機密事項や個人情報を入力しない。判断に迷う場合は、事前に編集長の許可をとる。

AI活用事例

JFCではすでにAIをコンテンツの制作や配信に活用しています。それらの事例をこちらで紹介していきます。

Logically Facts Accelerate

イギリスのテックスタートアップLogicallyが開発したAIを活用した動画の検証サポートツールです。疑わしい動画を各種プラットフォームから検知し、動画内の音声やキャプションを自動文字起こしします。

LINEチャットボット

アメリカの非営利組織Meedanが開発したAIを活用したチャットボットです。LINEでJFC公式アカウントをフォローし、質問をすると、その質問に関連するJFCの過去記事を回答します。過去記事がない場合、その質問がJFCの検証対象選びの参考となります。


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

ディープフェイクや影響工作など偽・誤情報問題は異なる次元へ/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

ディープフェイクや影響工作など偽・誤情報問題は異なる次元へ/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

あからさまなデマ、根拠のない誹謗中傷、生成AIで作った動画... 、2025年はこれまで以上に多くの偽・誤情報が拡散しました。私たちを取り巻く情報環境は、残念ながら悪くなる一方です。 偽・誤情報の総量を調べることは不可能です。しかし、2025年になって急増した生成AIによるディープフェイクや政治系動画など、昨年までとは異なる次元に入っています。そこに海外からの影響工作も絡んできます。詳しくは今週の解説記事を御覧ください。 2025年は参院選で昨年の衆院選の5倍以上のファクトチェック記事が公開された年でもありました。全国の新聞社やテレビ局で、偽・誤情報対策への関心が高まったことは、数少ない朗報です。 ただ、嘘は1秒でつけるけれど、検証には時間がかかる。ファクトチェックだけでは、スピードと数で必ず押し負けます。状況を改善していくためには、メディア情報リテラシー教育の普及や法制度、テクノロジー開発が不可欠です。 日本はこれらの対策で出遅れました。だからこそ、他国の先進事例から成功や失敗を学び、より効果的で効率的な手法を取り入れられるはずです。 日本ファクトチェックセンタ

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
2025年の偽・誤情報、ファクトチェック、認知戦 何がどのように広がったか

2025年の偽・誤情報、ファクトチェック、認知戦 何がどのように広がったか

1年前に2024年のファクトチェックの状況を振り返る記事を書いた際に「2024年はこれまで以上に大量の誤情報/偽情報が拡散した」と述べました。残念ながら、2025年は状況の悪化がさらに加速しました。 全体状況や2025年に特に注目すべきテーマを解説します。 偽・誤情報の増加とファクトチェック 「偽・誤情報は実際にどれだけ拡散しているのか」という問いに直接答えるのは困難です。 真偽不明の情報は、YouTube、TikTok、X、Instagram、LINEオープンチャット、Telegramなど多数のプラットフォームにまたがって無数に広がっています。しかし、それらが本当に偽・誤情報かは検証しなければ確認できません。すべての情報を検証することは不可能なため、偽・誤情報の総量を掴むことも不可能です。 確実に言えるのは、日本ファクトチェックセンター(JFC)が2025年の1年間で公開したファクトチェック記事は365本で、2023年173件、2024年330本から右肩上がりが続いているということ。 これはJFCが体制を強化したというだけでなく、JFCが目にする怪し

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
エコーチェンバー【JFC用語解説】

エコーチェンバー【JFC用語解説】

エコーチェンバーとは、自分と似た意見ばかりに囲まれ、自分の考えが世の中の正解であると思いこんで特定の思想に偏ってしまう現象です。日本語では「反響室」。閉ざされた部屋で同じような声が反響している様子に例えています。 XやFacebookやYouTubeやTikTokなど、ソーシャルメディアには「フォロー」や「チャンネル登録」などの機能があります。ユーザーは自分に価値観が近い人、好ましい人をフォローする傾向があります。 結果として、そこから発信される記事や動画だけでなく、そのコメント欄も含めて同質性の高い情報を見る確率が高まります。 これに似た概念がフィルターバブルで、フィルターバブルはアルゴリズムによるコンテンツの選別という技術的で受動的な構造を、エコーチェンバーは主にユーザーの能動的な選択や心理を表しています。 フィルターバブルとは【JFC用語解説】フィルターバブルとは、フィルター(膜)がバブル(泡)のように周りをつつみ、そのフィルターを通ってきたコンテンツ(記事や動画など)ばかりを目にする状態を意味します。 例えば、あなたが料理動画、それも日本の食べ歩きが好きで、YouTub

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
埼玉県川口市で検挙された4人に1人が外国籍? 繰り返し拡散する誤情報【ファクトチェック】

埼玉県川口市で検挙された4人に1人が外国籍? 繰り返し拡散する誤情報【ファクトチェック】

「川口市の検挙人数178人のうち、外国籍135人(約76%)」「検挙された人の約4人に3人が外国籍」という情報が拡散しましたが、誤りです。2024年に川口市内で、刑法犯で検挙された外国人のうち、トルコ・中国・ベトナムの3国籍が7割を占めるというデータを誤って解釈しています。この情報は繰り返し拡散しています。 検証対象 拡散した投稿 2025年12月22日、「【令和6年】川口市の検挙人数178人のうち、外国籍135人(約76%)」「検挙された人の約4人に3人が外国籍。大野知事「治安悪化のファクトない」私「ファクトしかない」という投稿が拡散した。 検証する理由 12月25日現在、この投稿は9100件以上リポストされ、表示回数は63万回を超える。投稿について「これから全国に広がっていきますよ」「めちゃくちゃだわ」というコメントの一方で「検挙人数が国籍無関係で178とは考えにくい」という指摘もある。 検証過程 根拠とされた記事の内容は 拡散した投稿は、産経新聞の2025年6月14日付の記事を引用している。「川口の外国人犯罪『トルコ国籍比率ずば抜けて

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は1月24日(土)午後2時~3時30分で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei0124.peatix.com 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にどのような知識

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験

JFCファクトチェッカー認定試験

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)