「ファクトチェックは検閲ではない」IFCN宣言/都知事選にまつわる誤情報/国連「情報の誠実性のためのグローバル原則」

「ファクトチェックは検閲ではない」IFCN宣言/都知事選にまつわる誤情報/国連「情報の誠実性のためのグローバル原則」

ボスニア・ヘルツェゴビナのサラエボで世界のファクトチェッカーが集うグローバルファクトが開催され、日本ファクトチェックセンター(JFC)も参加しました。国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)が、「表現の自由とファクトチェックに関するサラエボ宣言」を公表。都知事選をめぐる誤情報が引き続き拡散しています。国連のグテーレス事務総長が「情報の誠実性の国連グローバル原則」を発表しました。

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IFCNグローバルファクト開催

ファクトチェックと検閲の違いとは 「情報を消すのではなく追加する」 IFCNサラエボ宣言

世界のファクトチェックをリードする国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)は6月25日、「表現の自由とファクトチェックに関するサラエボ宣言」を公表しました。日本ファクトチェックセンター(JFC)を含む世界80カ国130のファクトチェック組織が署名しています。

ファクトチェックと検閲の違いとは 「情報を消すのではなく追加する」 IFCNサラエボ宣言
世界のファクトチェックをリードする国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)は6月25日、「表現の自由とファクトチェックに関するサラエボ宣言」を公表しました。日本ファクトチェックセンター(JFC)を含む世界80カ国130のファクトチェック組織が署名しています。 ファクトチェックと表現の自由の関係 ファクトチェッカーはオンライン検閲者か 情報の真偽を検証するファクトチェックは、特に2016年のアメリカ大統領選や2020年からの新型コロナウイルスに伴う大量の偽情報・誤情報の拡散に対し、その重要性が注目され、世界に広がりました。 この間、IFCNの認証を受けたファクトチェック組織は2016年9月の35団体から2024年にはJFCを含む177(再審査中含む、6月26日現在)にまで増えています。 一方でファクトチェッカーに対する批判も世界中で見られます。その一つが「オンラインの検閲者だ」というものです。ファクトチェックで誤りを指摘することを、表現の自由や言論の自由への弾圧だと捉える批判です。 「検閲は情報を削除するが、ファクトチェックは追加する」 「ファ

JFCのファクトチェック記事

新紙幣の発行後は旧紙幣が使えなくなる?

2024年7月3日から、新しい日本銀行券(1万円札、5千円札、千円札)が発行され、旧紙幣が使えなくなるという言説が拡散していますが、誤りです。同様の言説は過去にも拡散していますが、一円札以上の旧紙幣は今後も使うことができます。(2024年6月25日修正)

新紙幣の発行後は旧紙幣が使えなくなる?【ファクトチェック】
2024年7月3日から、新しい日本銀行券(1万円札、5千円札、千円札)が発行され、旧紙幣が使えなくなるという言説が拡散していますが、誤りです。同様の言説は過去にも拡散していますが、一円札以上の旧紙幣は今後も使うことができます。(2024年6月25日修正) 検証対象 2024年2月12日、新しい紙幣の発行後は旧紙幣が使えなくなり、タンス預金があぶり出されるなどと主張する言説が投稿された。同様の言説はたびたび拡散している。 中には「コンビニのローソン」など、特定の店を名指しする投稿もあった。100万を超える閲覧のある投稿や動画がある。 検証過程 政府は、2024年7月3日に1万円札、5千円札、千円札の新しい紙幣を発行する。20年ぶりだ。 新しい紙幣の発行にともなって、旧紙幣が使えなくなるという言説が繰り返し拡散している。しかし、国立印刷局の特設ウェブサイトは、古い紙幣も引き続き使えると説明している。 サイトによると、1885年に発行された一円札も使うことができるといい、全部で18種類ある。 日本銀行も6月10日、Xの公式アカウントで「従来のお札は、新

小池百合子氏 都知事選演説で「カイロ大学首席卒業」の垂れ幕? ネットミームに

東京都知事選をめぐり、小池百合子都知事が「カイロ大学首席卒業」と書いた幕を掲げて演説する画像が拡散しましたが、誤りです。白紙の垂れ幕に、第三者が文字を埋め込んだコラ画像で、複数のパターンが拡散しています。

小池百合子氏 都知事選演説で「カイロ大学首席卒業」の垂れ幕? ネットミームに【ファクトチェック】
東京都知事選をめぐり、小池百合子都知事が「カイロ大学首席卒業」と書いた幕を掲げて演説する画像が拡散しましたが、誤りです。白紙の垂れ幕に、第三者が文字を埋め込んだコラ画像で、複数のパターンが拡散しています。 検証対象 2024年6月23日、「#小池百合子 演説会」というコメントとともに、小池氏が「カイロ大学首席卒業」という垂れ幕の前で演説している写真を添付したポストが拡散した。 6月25日現在、このポストは1500件以上リポストされ、表示回数は47万回を超える。 検証過程 ポストの画像をGoogle画像検索で調べると、類似画像が大量に見つかる。「カイロ大学主席卒業」以外にも「質問は受け付けません」など複数のパターンがある。 最も古いものを探すと、6月22日放送の日本テレビのニュースの映像が見つかる。小池氏が都知事選の街頭演説で6月22日、東京・八丈島を訪れた時のものである事がわかる。 小池知事が海沿いで演説し、白い幕には何も書かれていない。 日本テレビニュース以外の画像でも、JFCが確認できた最も最も古いものは6月22日午後4時ごろのポストで、白幕

今週のJFC動画

元参院議員で東京都知事選に立候補した蓮舫氏が「尖閣諸島は日本の領土?」という質問に対し×札をあげている画像が拡散しましたが誤りです。画像は加工されており、2016年ごろから何度も拡散しています。

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米連邦最高裁、政府によるSNS上の偽情報削除要請を認める判断

米連邦最高裁は26日、SNS運営企業に偽情報の投稿削除を求めた連邦政府の措置について、認める判断を示しました。

SNSの投稿削除措置「認める」 米最高裁、偽情報の拡散阻止
【ワシントン共同】米連邦最高裁は26日、X(旧ツイッター)やフェイスブックなどの交流サイト(SNS)運営企業に偽情報の投稿削除を求めた連邦政府の措置について、認める判断を示した。措置を制限する命令を…

国連グテーレス事務総長が「情報の誠実性の国連グローバル原則」を発表

6月24日、国連のグテーレス事務総長が、誤情報、偽情報、ヘイトスピーチの拡散に対応するため「情報の完全性のための5原則」を発表しました。JFCも制定に向けた議論に日本から参加しました。

誤情報、偽情報、ヘイトスピーチの拡散から生じる危害を抑止するための緊急行動に向けた提言を国連が発表 ― 「情報の誠実性のための国連グローバル原則」は、AIの進化がもたらすリスクに対処(2024年6月24日付プレスリリース・日本語訳) | 国連広報センター
©UNニューヨーク、2024年6月24日 — 世界は、人権を強固に擁護しながら、オンライン上で拡散される憎悪と嘘が引き起こす危害に対応していかねばならない―。ア…

新型コロナ感染拡大とロシアのウクライナ侵攻に関する偽情報はコインの裏表か

2020-21年のパンデミックと2022から23年のロシアのウクライナ侵攻時の欧州で拡散した偽情報の類似点と相違点を明らかにしようという論考が「ネイチャー」のサイトで公開されました。欧州4国のファクトチェック記事812本の内容分析とインタビューに基づく研究です。

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「ファクトチェックしたことない」半数、フィルターバブルなどの知識も普及せず 情報インテグリティ調査から見える課題と対策

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偽・誤情報の影響やその対策などの状況を総合的に把握するため、日本ファクトチェックセンター(JFC)は電通総研と共同で「情報インテグリティ調査」を実施しました。予備調査2万人、本調査5000人を対象に、JFCが実際に検証した15の偽・誤情報を使った影響調査の他、望ましい対策などを聞きました。 偽・誤情報の影響として「ストレスや不安を感じる」(48.3%)や、「ニュースに関する関心が低下した」(44.4%)などの回答が目立っています。 一方で「ファクトチェックをおこなったことがない」(47%)、「検証方法を学んだことはない」(64.3%)など、個人でも実践できる対策は普及しておらず、デジタル時代の情報環境を理解するための基礎的な用語の理解もほとんど広がっていないことが明らかになりました。 詳細版は月内に発表予定で、ここでは概要を紹介します。 偽・誤情報の影響「ストレス感じる」「ニュースに対する関心が低下した」 調査によると、「インターネット上の誤った情報・ニュースの存在があなたのニュースに対する態度や行動にどのような影響を与えていますか」という質問に対して「

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
ファクトチェック記事の増加と多様化 メディアリテラシー教育やAIツール開発など検証の実践的な知見を活用【JFC活動報告】

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日本ファクトチェックセンター(JFC)は2022年10月の設立からの活動をまとめた報告書を公開しました。詳しくはJFCサイトの「JFCとは」で章ごとにまとめていますので、そちらを御覧ください。 JFCとは日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェック(事実の検証)の実践とメディア情報リテラシーの普及に取り組む非営利組織です。民主主義の基盤であるデジタル公共空間の健全性を維持・向上させることを目的として活動します。 JFC活動報告「情報インテグリティのために」 JFCの設立経緯と組織構造:独立性を保つために JFCの設立経緯、体制、ファクトチェック組織としての独立性を保つための取り組みなどを説明しています。 JFCの設立経緯と組織構造日本ファクトチェックセンター(JFC)は、民主主義の基盤となるインターネットの言論空間の健全性を向上させることを目的とし、ファクトチェックとメディアリテラシー普及に取り組む非営利組織です。 拡散する不確かな情報について、証拠に基づいて真偽を確かめる「ファクトチェック(事実の検証)」、現代の情報環境への理解と対応力を高める「メディアリ

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
仏政府「第三次世界大戦が来る」と国民に食料備蓄指示? まとめサイトによるもの【ファクトチェック】

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フランス政府が「第三次世界大戦が来る」として国民に食料備蓄を指示したとする投稿が拡散しましたが、誤りです。拡散した投稿はまとめサイトのXアカウントで、見出しは掲示板サイトのスレッドタイトルを引用しているのみです。 検証対象 2025年3月25日、「フランス政府、国民に食糧備蓄を指示『今年第三次世界大戦が来る』」という投稿が拡散した。この投稿は2025年3月31日までに296万回以上の閲覧回数と4500件以上のリポストを獲得している。 検証過程 検証対象のリンクは、まとめサイト「ツイッター速報〜BreakingNews」の記事だ。タイトルは掲示板サイト5ちゃんねるのスレッド「フランス政府、国民に食糧備蓄を指示『今年第三次世界大戦が来る』」で、The People’s Voice(TPV)が2025年3月20日に配信した記事「France Orders Citizens to Stockpile Food: “World War 3 Is Coming This Year”」を引用元にしている。 TPVは「大手メディアの扱わないニュースを扱うことで読者に真

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運営委員会報告書及び監査委員会報告書を公開

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運営委員会報告書及び監査委員会報告書を公開しましたのでお知らせいたします。JFCでは運営委員会を設置し、編集部がファクトチェックガイドラインに則って検証を実施しているかなど評価しています。運営委員会の内容は、運営委員会報告書として掲載されます。 また運営委員会と編集部全体のガバナンスが適正か確認する監査委員会を設置し、運営委員会報告書を閲覧するなどして監査を行っています。監査委員会の内容は監査委員会報告書として掲載されます。  なおこれらの適切な運用を図るためにルールを制定しており、「日本ファクトチェックセンター設置規程」(規程全文はこちら)及び「日本ファクトチェックセンター監査委員会運営規程」(規程全文はこちら)を公開しています。 これからもJFCは透明性確保のため、情報公開に努めて参ります。 運営委員会報告書2024年12月12日(報告書全文はこちら) 第1 運営委員の任命並びに委員長及び副委員長等の任命プロセス 第2 編集部メンバーの採用等編集に関わる人員 第3 外部機関との連携 第4 プラットフォーマー連携 第5 ファクトチェック記事の公開状況 第6 財務報告 第7 国

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は4月19日(土)午後2時~3時半で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei0419.peatix.com/ 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にどのような知識と

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験  教材と申し込みはこちら

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日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)