2億円かけて作られた万博のトイレ? 画像は一部【ファクトチェック】

大阪・関西万博について「2億円かけて作られた万博のトイレ」という画像が拡散しましたが、ミスリードで不正確です。画像はトイレの一部分で、トイレ建設の平米単価は一般的な公衆トイレを下回っています。
検証対象
2025年3月10日、「2億円かけて作られた万博のトイレだそうです。さすがに我慢の限界です。怒りで震えています。明細を国民に見せて下さい」という画像付き投稿が拡散した。
2025年3月14日現在、この投稿は3.5万件以上リポストされ、表示回数は2500万回を超える。
このトイレを巡る画像は他にも拡散している(例1、例2)。投稿について「本当に2億なのか?」「一体どうやったら2億円になるんだ?」というコメントがついている。
検証過程
拡散した画像は「トイレ5」
大阪・関西万博では会場内のトイレや休憩所など20施設のデザインを若手建築家が担当している。全施設の完成予想図は大阪万博公式サイトのプレスリリース(2024年5月30日)で確認できる。
今回拡散した画像は、米澤隆建築設計事務所が設計した「トイレ5」の一部を撮影した写真だ。下記の完成予想図の赤丸部分と特徴が一致している。
日本国際博覧会協会の資料によると、「トイレ5」の延床面積は246.04 ㎡で鉄骨造。積み木のようにユニットを積み重ねる仕組みで、万博の閉会後は、ユニットごとに公園や広場などへ移設できるという。
落札価格は約1.5億円
大阪・関西万博は「会場整備にかかる工事等入札結果一覧表」を公開している。会場内のトイレは個別に落札されており、「トイレ5」は、大阪市内の会社が建設・撤去工事一式を計約1.5億円で落札した。
読売新聞の2024年6月13日付けの記事によると、建設費に関しては当初から「2億円トイレ」という批判があった。入札は2度不成立の後、床面積を縮小して価格を約2000万円引き下げて1億5300万円(税抜き、撤去費含む)で落札された。
平米単価は約62万円
落札価格を平米数で割ることで平米単価を出すことができる。「トイレ5」の平米単価は撤去費込みで約62万円だ。経済産業省商務・サービスグループが万博のトイレ工事発注時に公開した資料によると、2016年〜22年の公衆トイレ施設の平米単価は約74万円だという。万博のトイレは、公衆トイレの平米単価を約12万円ほど下回っている。
設計者「部分的に切り取られた建築写真が流出」
情報の拡散を受け「トイレ5」を設計した米澤隆氏がXに「設計者として説明させていただきます」と投稿し、以下のように発信している。
- 広く出回っている写真は建築の一部であり、実際には46基のトイレがある。
- 公共の一般的なトイレの予算の基準を大きく下回っておりリッチなものをつくるほどの余裕はなかった。
- とはいえ半年だけの会期のために多額の費用をかけるのは経済的にも環境的にも負荷が大き過ぎるのではないかという問題意識には、私自身も設計当初から考えてきたものでもあり、おおかたのかたが批判されている内容に共感もする。
判定
画像は施設の一部分を切り抜いたもので、実際には46基のトイレがある。建設費用は撤去費込みで約1.5億円、平米単価は約62万円となっており一般的な公衆トイレ施設の平米単価を下回っている。よってミスリードで不正確と判定した。
検証:木山竣策
編集:宮本聖二、古田大輔
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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