外国人でも実在しなくても自民党員になれる? 国籍や紹介者などの条件がある【ファクトチェック】

外国人でも実在しなくても自民党員になれる? 国籍や紹介者などの条件がある【ファクトチェック】

自民党総裁選は、党所属の国会議員、党員・党友しか投票できません。この党員について、「外国人でも、実在しなくても、誰でもなれる」などという言説が拡散しましたが、不正確です。党員になるには、議員の紹介など、様々な条件を満たす必要があります。また、投票できるのは、日本国籍を持つ20歳以上で、党費や会費を2年間納めた人です。

検証対象

「自民党員には外国人でも4000円納めれば簡単になれる」「党員の国籍は調べていない」「実在しなくても(死者でも)投票用紙が届く」などの言説が拡散している(例1例2)。

こうした投稿に「一般の日本人が投票できない総理大臣選挙を、中国人が多数投票しているとすれば、とんでもない問題」「自民党は既に外国勢力の影響下にあると考えるべきだろう」などのコメントがついている。

検証過程

自民党員の資格とは

自民党ウェブサイトの「入党」というページには、党員資格として3つの条件が書かれている。

・我が党の綱領、主義、政策等に賛同される方
・満18歳以上で日本国籍を有する方
・他の党の党籍を持たない方

この条件を満たした上で 「入党申込書」に氏名、住所、電話番号などを記入し、党費(一般党員 年額4000円、家族党員 年額2000円、特別党員 年額20000円以上)を払い、申し込む必要がある。また、党員の紹介が必要だ(自民党「入党」)。

したがって、外国籍の人は要件を満たさない。

身元確認の方法は

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、身元の確認方法について、自民党本部に取材した。

自民党本部組織運動本部党員担当によると、入党の受付と審査は地方支部連合会が担当しており、「原則として国籍確認が必要だが日本国籍であることの確認の手法は、地方支部連合会に任せている」という。

JFCは自民党の地方支部の一つ、都支部連合会にも話を聞いた。都連はパスポートや住民票などの提示は求めていないが「国会議員や地方議会議員など党籍のある紹介者が必要で、両者の信頼関係の中で入党手続きが進められており、日本国籍を持たない外国人が容易に入党するなどは現実的にはあり得ない」と説明した。

また、総裁選の投票に関しては「原則は2年間以上継続している方だが、今回はできるだけ多くの党員の意思を反映させるために特例で令和5年(2023年)に入った方も投票できる」(自民党本部)という。

判定

自民党員になるには日本国籍が必要だ。ただし、公的な書類での国籍確認はしておらず、議員など党員の紹介者との信頼関係で成り立っている。よって「外国人や実在しなくても自民党員になれる」という言説は不正確と判定する。

あとがき

選挙に関する偽・誤情報で、候補者を持ち上げたり、貶めたりするものと並んで拡散しがちなのは「選挙の正当性を疑わせる情報」です。自民党総裁選に大量の外国人が投票していると指摘するような情報は、それにあたります。

検証:宮本聖二
編集:古田大輔、藤森かもめ


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

増え続ける政治系偽情報への対応は/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

増え続ける政治系偽情報への対応は/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

選挙運動に関する各党協議会に招かれ、衆議院議員会館で選挙に関わる偽情報の広がりや外国からの情報操作の現状について話しました。 政治に関する偽・誤情報は以前からありましたが、2024年からさらに増えました。理由は東京都知事選、総選挙、兵庫県知事選と注目の選挙が続き、しかも、YouTubeなど動画で選挙や政治に関する情報を見る人が増えたからです。 あるトピックが見られるとわかれば、そのトピックの動画をつくる人は増えます。見る人が増えれば、ソーシャルメディアのアルゴリズムはその動画をより多くの人に届けるようになります。こうして需要と供給のスパイラルが加速します。 「選挙運動に関する偽情報」と言っても、そういった情報は選挙のときだけに流れているわけではありません。ソーシャルメディア上には、常に根拠不明な動画が拡散し、そこには海外からのものと見られる不自然な投稿の急増なども見られます。しかも、それは日本語に限りません。 各党協議会では、法的な規制の是非やファクトチェック団体への支援などに関する質疑もありました。どのような議論をするにしろ、対応を急ぐ必要があります。AIの発展や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
地震のたびに拡散する「人工地震説」や「地震予知」は何が間違っているのか 専門家が解説

地震のたびに拡散する「人工地震説」や「地震予知」は何が間違っているのか 専門家が解説

大きな地震が起きるたびにインターネット上では「人工地震だ」とか「予知されていた」「次の地震は〇月〇日」などの情報が拡散します。科学的な根拠はなく、これまでに日本ファクトチェックセンター(JFC)は何度も「誤り」と検証してきました。次の拡散を防ぐために、JFCは東京大学地震研究所/情報学環・学際情報学府の酒井慎一教授に改めて解説してもらいました。 地震予知は可能? Q「30年以内に地震が発生する確率は何十%」といった長期的な予測は政府も公表します。一方で、大きな地震が起きると「巨大地震は予知されていた」とか「次の地震は〇月〇日」など、日付や場所を特定した「予言」が拡散します。このようなピンポイントの地震予知は現代の科学で可能なのでしょうか。 できません。地震のメカニズムは、今でも多くのことが分かっていません。多くの人はプレート(岩盤)同士が押し合い、跳ね返ったり壊れたりして地震が起こると考えていますが、実際はもっと複雑です。地震は地下にある断層面にそって、岩盤同士が急激にズレることで起こります。断層面はでこぼこしており、触れ合っている岩盤と岩盤が摩擦力で固着し

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
伊東市長選挙は不正選挙だった? 画像は市議選、選挙不正の根拠なし【ファクトチェック】

伊東市長選挙は不正選挙だった? 画像は市議選、選挙不正の根拠なし【ファクトチェック】

2025年12月14日投開票の伊東市長選挙をめぐり、開票作業で不正があったと示唆する画像付きの投稿が拡散していますが、誤りです。根拠とされた画像はそもそも市長選ではなく市議選のもの。伊東市選挙委員会は開票作業について「不正はなかったと認識している」と話しています。 検証対象 検証する投稿 12月15日、「伊東市長選挙は不正選挙が行われていた?」という画像付き投稿が拡散した。画像には、票が積み上げられた画像と共に「TVで放送された卓上に積み上がっている票束の高さと選挙管理委員会から発表の票数差に不安を抱きました」と書かれている。 検証する理由 この投稿は戸田市議会議員の河合ゆうすけ氏によるもので、12月18日現在、290件以上リポストされ、表示回数は23万回を超える。 「あると思います」「不正しちゃってるね…」と同調するコメントがつく一方で「意に沿わない結果は何でも不正なのか」という指摘もある。 検証過程 伊東市長選と拡散した画像 伊東市長選挙は、学歴詐称疑惑で2度の不信任決議を受けた田久保真紀前市長の失職に伴い14日に投開票され、田久保氏

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)
ユースファクトチェック選手権優勝の大学生チームが語る検証能力を鍛える鍵 「普段の生活でも使える能力ばかり」

ユースファクトチェック選手権優勝の大学生チームが語る検証能力を鍛える鍵 「普段の生活でも使える能力ばかり」

高校生や大学生ら若者世代を対象に情報検証スキルを競う「ユースファクトチェック選手権」。日本、台湾、タイ、インド、モンゴルの各国内大会を勝ち上がった計25チームによる世界大会が12月13日に開かれ、日本から参加したチームが優勝しました。 選手権はGoogleが運営していた前身の大会を引き継ぐ形で、アジアのファクトチェック団体が協力して昨年から開催。日本では日本ファクトチェックセンター(JFC)とメディア情報リテラシー教育に取り組む学生スタートアップ「Classroom Adventure」が共催しています。 75チーム194人が参加した国内大会を首位で勝ち抜き、世界大会では昨年上位を独占した台湾のチームを抑えて優勝したチーム「YAYO-SAN」の2人、札幌大谷大1年の渡辺魁哩さん(20)と北海道大2年の千葉蛍太さん(20)に検証スキルを鍛える秘訣と大会の感想を聞きました。 昨年大会の経験活かし、生成AIで「自主練」 昨年の大会に「軽いノリで参加した」という渡辺さんが、今度は本気でやってみようと誘ったのが、高校の同級生の千葉さんでした。 教育学を専攻する千葉

By 古田大輔(Daisuke Furuta)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は1月24日(土)午後2時~3時30分で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei0124.peatix.com 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にどのような知識

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験

JFCファクトチェッカー認定試験

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)