田村元厚労相が国会で「年収200万円は低収入でない」と答弁?そのような直接的な発言はない【ファクトチェック】
自民党の田村憲久・元厚生労働大臣が「年収200万円は低収入でない」と国会答弁したとの主張が拡散しましたが、ミスリードで不正確です。一定以上の所得がある後期高齢者の医療費窓口負担増をめぐり衆議院予算委員会審議で、共産党の宮本徹衆院議員の「年収200万円の75歳以上の方が低所得者なのか高所得者なのか」という質問に「75歳以上の後期高齢者の所得の中では単身で年収200万円は上位30%に該当する」と述べており「年収200万円が低収入ではない」と答弁したわけではありません。
検証対象
2024年12月14日、「田村元厚労相が国会答弁で年収200万は低収入でないと言ってた」などと主張する投稿がX(旧Twitter)で多数拡散した(例1、例2、例3)。
「200万じゃ生活できない」「そう言ってる国会議員の年収を200万にしたらいい!」などのコメントが寄せられる一方で、情報源を疑う声もある。
検証過程
田村元厚労相が200万円に言及した国会の答弁
日本ファクトチェックセンター(JFC)は、国会会議録検索システムで、発言者を田村元厚労相に限定して「二百万」というキーワードで検索した。2021年の第204回国会で24件の「二百万」に言及した発言がある。
この国会では健康保険法などの改正が審議されていた。その中で、一定以上の所得がある後期高齢者について、従来1割だった窓口での負担割合を2割に引き上げる改正案について議論がなされており、田村厚労相(当時)は負担増への理解を求める答弁を繰り返していた。
後期高齢者の窓口負担割合をめぐる議論
2021年2月12日の衆議院予算委員会で、200万円が議論になった。改正案では、後期高齢者の医療費の窓口負担割合が1割から2割に増える対象者が「年間所得200万円以上(単身者)」となっていたからだ。
改正案に対して共産党の宮本徹議員は、後期高齢者の窓口負担増は受診抑制を招くのではないかと問題提起し、「2割負担の対象が単身者で年収200万円、こういう線引きになったわけですけれども、200万円で区切る根拠というのは何なんでしょうか」と質問。田村厚労相(当時)は、単身者で年収200万円という基準が「課税所得28万円以上、75歳以上の高齢者のうちの所得上位30%に該当する」と答弁した。
さらに、5月7日の衆議院厚生労働委員会では、同じく宮本議員の「年収200万円の75歳以上の方が低所得者なのか、高所得者なのか」という質問に「後期高齢者の所得上位30%という一つの区切りの中で、今回、9割給付を8割給付という形にさせていただく」「この層というのは、現役並みの同じような所得層と比べても貯蓄が多い」と答弁した。
田村議員「一切発言していない」
JFCが田村元厚労相の事務所に「年収200万円は低収入ではないと発言したことがあるか」と確認したところ、「田村に確認したところ、国会だけでなく講演やメディアなど国会以外の場でも一切発言していないと申しております」という回答があった。
判定
田村厚労相(当時)が「年収200万円は低収入でない」と答弁したという主張はミスリードで不正確。後期高齢者の医療費窓口負担増の審議の中で、75歳以上の高齢者のうちの所得上位30%というデータに基づいて、200万円というラインに言及しただけで「年収200万円は低収入でない」と述べたわけではない。
検証:リサーチチーム
編集:宮本聖二、古田大輔
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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