外国人留学生には学費免除と10数万円の生活費が税金から支払われる? 対象は留学生の約3%【ファクトチェック】(修正あり)

外国人留学生には学費免除と10数万円の生活費が税金から支払われる? 対象は留学生の約3%【ファクトチェック】(修正あり)

「外国人留学生には学費免除と10数万円の生活費が税金から支払われる」という言説が繰り返し拡散していますが、ミスリードで不正確です。留学生全体が対象のように読めますが、実際の対象者は留学生の約3.2%です。

検証対象

2024年9月17日、「奨学金返済できない日本人の学生もいるのに、中韓からの留学生には月15万円支給。自民党、親韓じゃん 。。。」という投稿が拡散した。9月20日現在、120万回以上の閲覧回数と9400件以上のリポストを獲得している。

外国人留学生に関しては過去に「学費免除の他、生活費として別に13万程度が税金から支給」「外国人留学生には返還不要の奨学金14万3000円」などの言説も拡散している(例1例2)。

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、外国人留学生は学費免除で、15万円程度の生活費が支払われているかどうかを検証する。

検証過程

「国費外国人留学生制度」とは

文部科学省のサイトによると、日本には「国費外国人留学生制度」という、1954年に始まった政府による留学生支援制度がある。

海外から優秀な留学生を受け入れることにより、国際交流・友好親善の促進及び諸外国の人材育成に資するとともに、我が国における大学等の国際化の進展、それを通じた教育研究力の向上、ひいては社会全体の国際化・活性化に貢献し、我が国と世界の発展に寄与することを目的としている(文科省 国費外国人留学生制度について)。

対象は「日本政府と国交のある国の国籍を有すること」が条件で、日本の在外公館を通じて選ばれる。

2025年度の支給予定額は、学部レベルが月額11万7000円で、大学院レベルは予備教育機関・非正規生が月額14万3000円、修士課程が月額14万4000円、博士課程が月額14万5000円だ。また、教育費、大学における入学金、授業料及び入学検定料は徴収しないとしている(2025 年度 日本政府(文部科学省)奨学金留学生募集要項)。

つまり、国費留学生に月に11万円以上支給され、学費が免除になることは事実だ。

2023年の国費留学生は外国人留学生総数の約3%

一方で、留学生全員が国費留学生として支給を受けられるわけではない。独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)によると、2023年5月時点の外国人留学生総数は27万9274人(JASSO)。そのうち国費留学生は約3.2%の9182人だった。

JASSO「2023(令和5)年度 外国人留学生在籍状況調査結果」より

また、2024年に拡散した言説には「中韓からの留学生には月15万円支給」とあるが、2020年時点の国費留学生数8761人のうち、中国からの国費留学生は834人(9.5%)、韓国は565人(6.4%)だ。

判定

日本政府が一部の外国人留学生に対して、学費免除や生活費を支給していることは事実。ただし、すべての外国人留学生が対象なのではなく、外国人留学生の約3%(2023年時点)だ。よって不正確と判定する。

検証:リサーチチーム
編集:宮本聖二、藤森かもめ、古田大輔

修正

当初の記事ではサムネイルの判定が「誤り」となっていましたが「不正確」です。修正しました(2024年9月20日)。

判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

ファクトチェックやメディア情報リテラシーについて学びたい方は、こちらの無料講座をご覧ください。ファクトチェッカー認定試験や講師養成講座も提供しています。

理論から実践まで学べるJFCファクチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介
日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

もっと見る

岩手・大船渡の山火事は兵器によるもの? 災害時の陰謀論に注意【ファクトチェック】

岩手・大船渡の山火事は兵器によるもの? 災害時の陰謀論に注意【ファクトチェック】

岩手県大船渡市の山火事をめぐって「兵器によって起こされた」「スマートシティ化のために狙ってやっている」などの主張が拡散していますが、誤りです。アメリカの火災でも同様の情報がありました。災害時にはこうした陰謀論が拡散します。 検証対象 2025年2月27日頃から、岩手県大船渡市の大規模な山林火災をめぐって「火災は兵器によって引き起こされた」「DEW(指向性兵器)で焼き払っている」「大船渡市のスマートシティ化のために土地を確保して住民を追い払うことを狙って起こされた」などの主張が複数拡散している(例1、例2、例3)。 中には44万を超える閲覧と1700のリポストを獲得しているものもあり、「狙い済まして町を潰すってときに今後もこういうことが起きますね」「不自然な火事が多すぎる」「やはり立候補地でしたか」など投稿内容を真に受けるコメントが多くついている。 これらの情報に関しては、NHKが「根拠のない情報」「偽情報」などと注意喚起する記事を出している。 検証過程 岩手・大船渡の山火事 2月26日頃、岩手県の大船渡市で山火事が発生した。3月1日の朝までに焼失

By 宮本聖二
イーロン・マスクが石破政権を批判? 政権への言及はない【ファクトチェック】

イーロン・マスクが石破政権を批判? 政権への言及はない【ファクトチェック】

イーロン・マスク氏が石破政権の少子化対策を批判したという動画が拡散しましたが、不正確です。発言の引用元とされる動画で、マスク氏はAIについて発言しているだけで、日本や出生率については話していません。また、マスク氏は日本の少子化についてはたびたびXで私見を投稿していますが、政権批判とは結びついていません。 検証対象 2025年2月16日、「イーロンマスク、🇯🇵政権の無能っぷりをぶった斬る」という文言とともにマスク氏が石破政権や、日本の政策を批判したという内容の動画が拡散した。 2025年2月27日現在、この投稿は7900件以上リポストされ、表示回数は47万回を超える。投稿について「情け無い」「イーロンさん、助けてください」というコメントがついている。 検証過程 引用元の動画で、マスク氏は日本について触れていない 拡散した動画には以下のような字幕がついている。 「当たり前のことを言うようだが、出生率が死亡率を上回るような変化がない限り、日本はいずれ存在しなくなるだろう」「しかし日本政府を見ているとまるで少子化を推進するような経済政策を行ってきたと

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
石破首相「自民党は公約を守る気が一切ありません」と国会答弁? 文脈を無視した切り取り【ファクトチェック】

石破首相「自民党は公約を守る気が一切ありません」と国会答弁? 文脈を無視した切り取り【ファクトチェック】

石破茂首相が国会で、「自民党は公約を守る気が一切ありません」などと答弁したかのような動画が拡散しましたが、ミスリードで不正確です。石破首相の発言を切り取り、キャプションには発言していない内容も加えています。 検証対象 2025年2月1日、「石破茂『自民党は公約を守った事ありません、私もやりません』現役の総理大臣が公約を守る気が一切無いと国会答弁で言い切りやがった」というタイトルを付けたショート動画がYouTubeにアップロードされた。 この動画は、長さが59秒で最初から43秒間は国会で石破首相が発言している様子、その後の16秒間は、れいわ新選組の山本太郎代表の国会ではない場で発言する様子で構成されている。動画は2月26日時点で約120万回再生されている。 「政治家として1番言ってはいけないこと」「堂々と、『私総理大臣は、詐欺します』と国民に宣言してしている」などのコメントが付く一方で、フェイクや切り取りを疑う声もある。 検証過程 59秒に編集された動画 拡散した動画は59秒間。「石破茂『自民党は公約を守る気が一切ありません』」「石破茂 内閣総理大

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
最高裁が外国人への生活保護は違法と確定? 判決は「対象となりうる」【ファクトチェック】

最高裁が外国人への生活保護は違法と確定? 判決は「対象となりうる」【ファクトチェック】

「外国人への生活保護は2014年に最高裁で違法判決が出て確定している」といった主張が複数拡散しましたが、誤りです。外国人への生活保護をめぐる2014年7月の最高裁判決は、外国人は生活保護法の対象である「国民」には含まれないものの、自治体の裁量によって保護の対象となりうると示したもので、外国人への生活保護を違法だと確定したわけではありません。この主張は過去に何度も拡散し、誤りだと指摘されています。 検証対象 2025年2月中旬、外国人への生活保護について、「2014年に最高裁で違法判決が出て確定している」などといった主張がXで複数拡散した(投稿1、投稿2、投稿3)。 「最高裁第2小法廷 千葉勝美裁判長〝生活保護法が保護の対象とする「国民」に外国人は含まれない〟初の判断」とテロップの入ったニュース画面のスクリーンショットを添付している投稿もある。 これらの投稿には「ずっとおかしいって思っていました」「まともな感覚の最高裁判事がいてくれた」などのコメントがつく一方で、「旧厚生省の通達や自治体の裁量による行政措置を違法認定していません」などの指摘もある。 検証

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)