男女共同参画事業の予算は9兆円? 繰り返し拡散する情報【ファクトチェック】
男女共同参画事業の予算が9兆円だという情報が拡散しましたが、ミスリードで不正確です。2024年度の「男女共同参画参画基本計画関係予算」は全体で10兆円を超える規模ですが、男女共同参画に直接関係する事業にだけ使われるわけではありません。社会保障や教育支援など、少しでも男女共同参画に効果がある施策・事業に関する全省庁の予算をまとめて計上したものです。
検証対象
2024年11月20日、「財源がーーって言うけどさ、多分われわれ国民は男女共同参画のレク?イベント?がなくなってもなんも困らん。これで9兆円が浮くなら万々歳じゃん???」との投稿が拡散した。
添付された画像には「男女共同参画事業イベント一覧」と大きく書かれ、ダンスや健康法などの講座や語学教室など多くのイベントが示されている。
投稿は12月11日時点で約8000件のリポストと約90万件のインプレッションを獲得している。「無駄や中抜きや天下り組織やら潰したら財源なんてありそうなもんだけどな」「どこが男女共同参画なのか理解できませんね。税金を無駄遣いするための中抜きイベントをやめたらいいよ」などのコメントがつく一方で、「よく言われてる誤解らしいですよ」との指摘もある。
検証過程
「男女共同参画に関する予算」は10兆5600億円
日本ファクトチェックセンター(JFC)は内閣府男女共同参画局が公開している2024年(令和6年)度の「男女共同参画に関する予算」を確認した。
男女共同参画基本計画に関係する予算は2項目に分かれている。
「男女共同参画社会の形成を目的とする施策・事業」の予算は約3200億円。「男女共同参画社会の形成に効果を及ぼす施策・事業」の予算は約10兆2400億円。
これらを合わせると約10兆5600億円となり、検証対象の主張する「9兆円」よりさらに大きい額になる。
「目的とする予算」と「効果を及ぼす予算」の違い
JFCは内閣府男女共同参画局に取材した。
1「男女共同参画社会の形成を目的とする施策・事業」と2「男女共同参画社会の形成に効果を及ぼす施策・事業」の違いは何か。
1の「目的とする予算」は、男女共同参画社会の形成を直接的な目的にしている施策や事業に関する予算で、これが約3200億円に上る。例えば、「貧困等生活上の困難に直面する女性等の支援」や「ワーク・ライフ・バランス等の実現」などの施策や事業が含まれる。
2の「効果を及ぼす予算」は、男女共同参画社会の形成を直接的な目的にしていないが、効果を及ぼす施策や事業に関する予算だ。例えば、介護や福祉等の社会保障、保育や子育て等に係る子ども・子育て支援、大学等の修学支援などの教育関係などの施策や事業が含まれる。
2は、男女共同参画とは別に主な目的があるために、男女共同参画社会の実現に限って使われる予算ではない。1・2のどちらの予算も男女共同参画局が関連施策を各省庁から取りまとめて発表しているものだ。
拡散した画像は
検証対象の情報に添付された画像には「男女共同参画事業イベント一覧」として、「ヨガ講座」「タップダンス教室」「ピラティス教室」などが並んでいる。
JFCは総務課調査室にこれらが男女共同参画の事業として実施されているのか確認した。「どのような基準に基づきとりまとめられたのか不明であり、一部のイベントについては具体的に何を指しているのか不明であるものも含まれており、正確に回答することは困難であるため、予断をもってお答えすることは差し控えます」と回答があった。
過去にも拡散して検証済みの情報
男女共同参画に関する予算への批判として、今回の検証対象に添付された画像の「男女共同参画事業イベント一覧」を用いた投稿は過去に何度も拡散している(例1、例2、例3)ほか、防衛費などと予算の規模を比較する主張もある(例4、例5、例6)。
過去にはBuzzFeedが2020年と2022年の2回にわたって男女共同参画に関する予算についての情報をファクトチェックする記事を公開している。どちらの記事でも、2000年代から「男女共同参画事業の予算が10兆円規模である」といった様々な情報が拡散していたことや、政治団体の党首が選挙演説で主張をしていたことに触れながら、いずれも「ミスリード」と判定している。
判定
男女共同参画事業の予算が9兆円だとする主張は、ミスリードで不正確。2024年度「男女共同参画参画基本計画関係予算」は10兆円を超えているが、その全てが男女共同参画社会の実現を直接の目的とする事業に使われるわけではない。社会保障や子ども・子育て支援、教育関係費といった、男女共同参画に何らかの効果がある各省庁の施策・事業予算が全てまとめて計上されている。
検証:リサーチチーム
編集:古田大輔、野上英文
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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