岸田首相が、日本人は10%で残りの90%は移民や不法難民で構わないみたいな発言?【ファクトチェック】
岸田文雄首相が「日本人の割合は10%で残りは移民や不法難民で構わない」と発言したかのような動画が拡散しましたが、誤りです。動画は、岸田首相の発言の一部を切り取ったもので、「国内の外国人が9割で構わない」という発言はしていません。
検証対象
2024年2月10日、「日本国に暮らす日本人の割合は10%で残りの90%は移民や不法難民で構わないみたいな発言の岸田文雄総理大臣…」という説明付きで岸田首相が発言する動画が拡散した。2月12日現在で240万を超える閲覧件数があり、5800のリポスト、1万7000のいいねがついている。
この投稿には「ヨーロッパの惨状を良く見てよ!」「人口が100万人に減ったら言えばいい」など岸田首相がしたとする発言に反発する書き込みのほか「元の動画で確認したが、キリトリです」と指摘する書き込みもあった。
検証過程
2024年2月に拡散した投稿の動画は、2023年7月22日に令和国民会議(令和臨調)が開いた1周年大会での岸田首相の発言だ。令和臨調は「日本社会と民主主義の持続可能性について」をキーワードに経済界、労働界、学識経験者など有志が集まって2022年に発足した。
1周年大会では、岸田首相など一部の党首が招かれて「政党との対話」を実施。令和臨調共同代表の増田寛也・日本郵政社長が2070年に総人口の1割以上を外国人が占めるという推計をもとに、岸田首相に「受け入れ環境の整備に努めるべきだ」と質した。
これに対する岸田首相の回答の一部を切り取ったのが今回拡散した動画だ。 令和臨調が公開している動画で発言全体を確認できる。
増田共同代表の質問に対して、まず少子化対策について話し、「時間がかかる」と説明した上で、外国人の受け入れについて話した(動画50分30秒から)。
外国人との共生事例として、中東3カ国(サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタール)を訪問したことを引き合いに、「アラブ首長国連邦とカタールは外国人が90%を占め共生している」と話した。これが動画で切り取られた部分だ。
この部分に続いて岸田首相は「こういった国と日本の状況は比べるべくもなく、日本らしい、日本の現実にあった共生社会を考えていく、これが当然のことだと考えています」と答えた(令和臨調「第2回 政党との対話」発言要旨)。
つまり、岸田首相が「外国人が9割」と言ったのは中東2カ国を事例として挙げた部分で、日本も9割で構わないとは発言していない。
「国立社会保障・人口問題研究所」が2023年4月に出した推計(出生・死亡とも中位のケース)では、2070年に日本人の人口は今より37.1%減少し7761万人になる一方で、外国人は939万人と10.8%を占める。増田共同代表はこのデータに基づいて岸田首相に質問していた。
判定
「岸田首相が、日本人の割合は10%で残りの90%は移民や不法難民で構わないみたいな発言」という動画は、誤り。動画は岸田首相の発言の一部を編集で切り取ったもの。
検証:宮本聖二
編集:古田大輔、野上英文、藤森かもめ
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