兵庫県知事選に出馬した稲村和美氏が自身の退職金を5倍にした? 本来額からはむしろ減った 【ファクトチェック】
2024年の兵庫県知事選に出馬した稲村和美氏が自身の退職金を5倍にしていたという情報が拡散しましたが、誤りです。1期目に本来は3400万円の退職金を公約で470万円に減額。2期目は正式な審議会で決まった2260万円が支払われており、従来額からはむしろ減っています。
検証対象
兵庫県知事選のさなかだった2024年11月13日、「稲村和美氏が自身の退職金を5倍にしていた」という情報がYouTubeで拡散した。
このショート動画では稲村氏について「市長時代に自身の退職金を470万円から2260万円の約5倍に引き上げていて話題になっている」と説明している。
検証過程
稲村和美氏は2010年から3期に渡り尼崎市長を務め、2022年に退任。その後2024年11月の兵庫県知事選挙に無所属で立候補したが落選した。
検証対象の動画が投稿され、拡散したのは兵庫県知事選の投開票日(11月17日)の4日前だ。
稲村氏が受け取った退職金
尼崎市長には任期ごとに退職手当が支給され、稲村氏は尼崎市長時代、1期目に約470万円、2期目以降は約2260万円の退職金を受け取っている。1期目から金額を比較すると実際に約5倍ほどに増えている。金額は稲村氏のウェブサイトや尼崎市の資料から確認することができる。
1期目は3400万円を公約で470万円に
1期目当時、尼崎市が定めていた市長の退職金は約3400万円だった。稲村氏と、前市長白井文氏は公約で本来の退職金より少ない金額を設定し、稲村氏は1期目の終わりに約470万円を受け取った(いなむら和美公式サイト)。
市長、副市長の退職金を1000万円ほど減額
尼崎市の市長、副市長の退職金はそれまで約30年間、算出方法が変わっていなかった。このため、2011-2012年に、尼崎市特別職報酬等審議会を開いて算出方法を変更し、市長退職金は従来の3400万円から約1000万円減額し、約2260万円となった。
尼崎市「市長及び副市長に対する退職手当の適正な水準並びに給与の在り方についての答申書」より
つまり、もともとは約3400万円もらえるはずだった退職金を自身の公約で1期目に470万円に減額。その後、正式な議論を経て本来額から1000万円超減った約2260万円を2期目にもらったということだ。1期目と2期目の数字だけを比較すると約5倍になる。
なお、稲村氏はウェブサイトで「議論には市長は関与していません」と説明している。日本ファクトチェックセンター(JFC)が議事録を確認したところ、稲村氏は第1回の市長挨拶のみの参加で、以降7回の審議会には出席していない。
早稲田大学政治経済学部のジャーナリズム・メディア演習(瀬川ゼミ)のゼミ生が発信するWebマガジン「Wasegg(ワセッグ)」もファクトチェックし、「ミスリード」と判定している。
判定
稲村氏の退職金が約5倍に増えたのは1期目に公約で減額したため。稲村氏の任期中に市長の退職金を減額するための審議会が開かれ、本来額より1000万円減った。また審議会の議論に市長は参加していない。よって誤りと判定する。
検証:木山竣策
編集:古田大輔、宮本聖二
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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