衆院選で白票が167万票? 白票を含む無効票の数【ファクトチェック】

衆院選で白票が167万票? 白票を含む無効票の数【ファクトチェック】

2024年の衆議院議員選挙をめぐって、白票が167万票という投稿が拡散しましたが、誤りです。167万票は白票を含む無効票の合計です。拡散した投稿はまとめサイトを引用し、まとめサイトの見出しはネット掲示板のスレッドタイトルを引用しているだけです。

検証対象

2024年11月4日、「【悲報】白票167万票  日本」という投稿が拡散した。投稿にはまとめサイトのリンクが添付されている。

2024年11月12日時点、この投稿は7300件以上リポストされ、表示回数は134万回を超える。投稿について「無駄な行為」「マスコミの政治部が率先して白票に誘導」というコメントの一方で「元々のソースは無効票」という指摘もある。

検証過程

まとめサイトと添付記事の内容が不一致

検証対象はまとめサイトのリンクを添付している。リンクはまとめサイト「Tweeter Breaking News-ツイッ速!」の記事だ。掲示板サイト5ちゃんねるのスレッド「【悲報】白票167万票 日本、一億総知的障害だった」で、日本経済新聞が2024年11月2日に配信した記事「衆院選「無効」167万票 自民党、政治不信で参院選懸念」が引用元だとしている。

日本経済新聞の記事は、「10月27日に投開票された衆院選で、全国の小選挙区の『無効票』がおよそ167万票だったことが総務省の集計(速報値)で分かった」という内容だ。

記事には、「無効票が167万票だった」としか書かれておらず、無効票の内訳については書かれていない。

白票と無効票の違い

白票とは候補者名や政党名を書かずに真っ白のまま投じる票だ。投票所へ足を運ぶものの、支持したい候補が無いという意思表示にも受け取れるため、SNSでは「白票は政治の不満を伝える手段」などといった言説も拡散していた。

しかし、神戸大大学院の品田裕教授(政治学)は白票が政治に与える影響について「実効性のある決定には何もつながらない。政治家に突きつける刃(やいば)としては決して強くない」と指摘している(毎日新聞 白票は政治の不満、伝える手段? 「刃」としては力不足とも)。

無効票とは、白票を含む無効投票の総計だ。小選挙区の場合、候補者でない人の氏名を記載したもの、複数の名前を書いたもの、候補者と関係ないことを記載したものなどが含まれる。

例えば、無効票の内訳を公表している奈良県の資料によると、奈良市第一開票区では無効票の合計が2830票に対し、白票は1764票だ。

判定

拡散した投稿はまとめサイトを引用したもので、「白票167万票」とあるが引用元の記事には無効票としか書かれていない。無効票とは白票を含む無効投票の総計だ。よって誤りと判断した。

検証:木山竣策
編集:宮本聖二、藤森かもめ、古田大輔

判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

ファクトチェックやメディア情報リテラシーについて学びたい方は、こちらの無料講座をご覧ください。ファクトチェッカー認定試験や講師養成講座も提供しています。

理論から実践まで学べるJFCファクチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介
日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験
JFCファクトチェック講師養成講座 11月の申込はこちら
日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は11月30日で、お申し込みはこちら。 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にどのような知識と行動が偽・誤情報対策として有効かを分析し、誰でも無料で視聴できる「ファクトチェック講座」を
日本ファクトチェックセンターのエディターなど募集【採用】
日本ファクトチェックセンター(JFC)は業務拡大により、エディターやソーシャルメディア担当などを募集しております。リモートワークや勤務時間など様々な働き方を想定しています。 待遇はスキルや経験、勤務条件に応じます。年功序列や新卒一括採用などはありません。その人の能力に応じて、裁量がある仕事をお任せします。ファクトチェック、メディアリテラシー教育、ソーシャルメディアの分析、海外の協力団体とのコラボなど、興味がある方は、ぜひご応募ください! エディター/ファクトチェッカー 業務内容 編集部でファクトチェックを中心にコンテンツの編集や企画を担当します。自由な勤務形態を推奨しており、時間や勤務地など応相談です。 応募要件 * 必須 * 記者、編集者などメディア関係や事実検証に関わる職務経験 * JFCファクトチェックガイドラインや指針などの遵守 * チームワーク * 憎しみを原動力にしないこと * 歓迎 * デジタルメディアの経験がある方は、特に重視します * ファクトチェックや調査報道の経験 * データ収集・

もっと見る

自民・高市氏、選択的夫婦別姓導入で除名になったら「党を割り新党を創りたい」と発言? 本人も否定【ファクトチェック】

自民・高市氏、選択的夫婦別姓導入で除名になったら「党を割り新党を創りたい」と発言? 本人も否定【ファクトチェック】

選択的夫婦別姓に反対する自民党・高市早苗衆議院議員が、法案に反対して除名や党員資格停止になったら「新党をつくりたい」と発言したという情報が拡散しましたが、誤りです。そのような記録はなく、本人も否定しています。 検証対象 2025年1月29日、選択的夫婦別姓をめぐって、自民党の高市議員が「反対して処分されたら党を割って新党を作る」と発言したかのような投稿が拡散した。 この投稿は2025年1月30日現在、69.3万回以上の閲覧回数と5000件以上のリポストを獲得している。 この投稿に対して、「高市氏の本気度に期待します」「とうとう高市さんも」といったコメントのほか「新党を創るなどという発言はしていませんよ」という指摘もある。 検証過程 選択的夫婦別姓と党議拘束 選択的夫婦別姓をめぐっては自民党内で意見が分かれている。森山裕幹事長は1月22日、インタビューで「党議拘束を外すことには慎重であるべきだ」と話している(時事通信)。 また、森山幹事長は24日も「党内でしっかり議論して、一つの意見にまとめて、国会に臨むことが大事なことではないか」と述べている(

By 宮本聖二
岸田文雄前首相「日本人は差別主義者」と発言?発言していない【ファクトチェック】

岸田文雄前首相「日本人は差別主義者」と発言?発言していない【ファクトチェック】

岸田文雄前首相が、首相在任中に「日本人は差別主義者」と発言したかのような情報が拡散しましたが、誤りです。添付された動画で岸田氏は、日本での差別の存在に言及して「差別は許されない」と述べていますが、「日本人は差別主義者」とは発言していません。 検証対象 2025年1月28日、「岸田文雄『日本人は差別主義者』」という投稿が、岸田氏がスピーチする動画とともに拡散した。この投稿は2025年1月30日現在、91万回以上の閲覧回数と2000件以上のリポストを獲得している。 検証過程 拡散した動画をGoogle検索で調べたところ、元動画は2024年2月3日にオンラインで開催された「令和5年度共生社会と人権に関するシンポジウム」に、岸田首相(当時)が寄せたビデオメッセージだった。このメッセージは、首相官邸サイトでも、文字起こしとともに確認できる。 ビデオメッセージは全部で4分40秒で、拡散した動画は一部を切り抜いたものだ。元動画の1分55秒頃から拡散した動画と同じ内容の発言が始まる。動画での岸田氏の発言は、以下の通り。 (以下が岸田氏の発言) しかし、残念ながら、

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
ピラミッド上空に2373年に一度、水星・金星・土星が並ぶ? 10年以上前から拡散する合成画像【ファクトチェック】

ピラミッド上空に2373年に一度、水星・金星・土星が並ぶ? 10年以上前から拡散する合成画像【ファクトチェック】

エジプトのピラミッド上空で水星・金星・土星が並んでいる画像が拡散しましたが、合成画像で実際のものではありません。10年以上前から世界中で拡散しており、「いままさに起こっている」という主張も含めて誤りです。 検証対象 2025年1月13日、「ギザ(エジプト)のピラミッドの上空に水星、金星、土星が見える。これは2373年に1度起こる現象です」「今まさに起こっているのです...」というコメントと共に、三つのピラミッドの上空に、三つの星が並んでいる画像を添付した投稿がXで拡散した。 この投稿は39万件を超える閲覧と1900件以上のリポストを獲得している。 投稿者はリプライで「これ2373年は本当かどうかわからないけど惑星が一列に並ぶ現象が起こるって投稿がありました!」と追加で投稿。他のユーザーが同様の画像を載せたコメントもある。一方で、「理屈で考えたら不自然なことが分かるやろう。(笑)」などの指摘もある。 検証過程 この画像はどこで撮影されたのか ピラミッドが3つ並んだ画像は、エジプト・ギザのピラミッド群だ。 左側のピラミッドが比較的小さく、手前に見え

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
フジテレビ第三者委員会の弁護士は社外取締役? そのような事実はない【ファクトチェック】

フジテレビ第三者委員会の弁護士は社外取締役? そのような事実はない【ファクトチェック】

中居正広氏と女性のトラブルにフジテレビ社員が関与していたなどと報じられたことをめぐり、この疑惑を調査する第三者委員会委員長の竹内朗弁護士が同社の社外取締役との情報が拡散しましたが、誤りです。竹内弁護士がフジテレビジョン、及び親会社のフジ・メディア・ホールディングス(FMH)の社外取締役を務めている事実はありません。 検証対象 2025年1月27日、フジテレビの記者会見の中継画像を引用しながら「第三者委員会の弁護士は、社外取締役という時点でアウト(根回し)」などと主張する投稿が拡散した。 投稿は1月29日時点で166万件以上のインプレッションを獲得している。 検証過程 記者会見で問われた第三者委員会の独立性 1月27日の記者会見では、フジテレビが設置した第三者委員会の独立性について質問が出ていた。第三者委員会がスタートする前に、23日の社員集会の中で嘉納修治会長が委員長として竹内朗弁護士の名前を出していたからだ。 記者会見で嘉納会長は「事務方から第三者委員会の弁護士として竹内弁護士の名前が上がり、挨拶に行った。その際取締役会の決議があって第三者委員

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)