熊本知事選で不正開票?【ファクトチェック】
「熊本知事選の開票で不正があった」などという言説が開票速報の動画とともに拡散しましたが、誤りです。報道各社が事前の取材と開票所の出口調査などに基づいて、投票を締め切った直後に当選確実を報じたもので、一般的な選挙報道の手法です。不正ではありません。
検証対象
2024年3月24日投開票の熊本県知事選挙について不正があったという言説が、地元テレビ局「RKK熊本放送」の開票速報の映像とともに拡散した。「熊本県知事選の不正発覚の瞬間」「熊本知事選!不正発覚の瞬間を撮ってる人がいました!!」などのX(旧Twitter)の投稿には開票速報のTikTok動画が添付されている。
TikTok動画にはRKK熊本放送の開票速報特番の冒頭部分が映っている。熊本市内の開票所から中継しているアナウンサーが「開票は9時15分から始まる」と伝えた直後に、場面がスタジオに切り替わる。途中で、右下に候補者の陣営からの中継映像も入り、キャスターが「どうやら、他の局の一部の報道で…」と言いかけた後、「RKKでは木村さんに当選確実を打ちました」と伝えている。
TikTokの投稿には「不正開票の瞬間(笑)拡散希望です!!」「(投票箱の)鍵が開いていない、投票箱も集まっていない」などのテキストがつけられており、開票が始まっていないのに当選確実だと出たのは「不正開票の証拠だ」としている。
TikTok動画をつけたXの投稿は850万の閲覧があり、「これって、不正だよね?」「まだ開票してないのに『祝 当選』???」などのコメントがついた一方で、「選挙では出口調査というものをやっていて、今回のように半数以上取っていれば開票前でも当確は確実だから不正でもなんでもないよ」という投稿もあった。
検証過程
選挙報道で、投票の締め切り直後に当選確実と報じられるたびに「票が開いていないのに、当選はおかしい、不正選挙だ」という言説が拡散する。
「当選確実(当確)」とは、報道各社が事前に、どの候補者に投票するかを有権者に聞く情勢調査や投票所での出口調査、候補者や政党への取材などに基づいて、他の候補が逆転する可能性はないと判断した段階で、選挙管理委員会による最終結果の公表の前に「〇〇候補の当選が確実だ」と報じることをいう。投票締め切り直後で、開票作業が始まる前の段階で「当確」と報じることを「ゼロ票打ち」とも言う。
今回の熊本知事選では投票を締め切った8時すぎにRKKだけでなく、他の報道機関も続々と当確を打った。日本ファクトチェックセンター(JFC)では、8時ちょうどに当確を打った KKT熊本県民テレビに取材した。
KKTによると、同社は今回、読売新聞と共同で調査をした。具体的には、期日前投票や選挙当日に投票所の出口で、投票を済ませた人から、どの候補に投票したかを聞き取ったという(出口調査)。
KKTでは、出口調査の結果や候補者陣営への取材など、これまでに蓄積したデータをもとに、木村敬氏(自民、公明推薦)が県内の多くの地域で他候補を抑えて優勢で、当選は間違いないと判断して、投票締め切り直後の午後8時に当確を打ったという。
最終的な投票結果は熊本県選挙管理委員会が公表し、木村氏が当選している。
判定
「熊本知事選挙で不正発覚」「不正開票の瞬間が行われた」という言説は、誤り。投票締め切り直後の当選確実の報道は、事前の情勢取材や出口調査などに基づくものだ。
あとがき
投票締め切り直後に報道機関が当選確実を打つたびに、「票が開いていないのにおかしい、不正」だと言った言説が拡散します。
JFCではこれまでも選挙に不正があるといった言説に対してはファクトチェック記事を出しています。(「大阪府知事選、当確が早すぎ不正選挙だ」は誤り、ゼロ票打ちによるもの、「アルフィヤ候補に1分で6000票の不正疑惑」は誤り。有効票の確認によるもので開票速報では一般的)
検証:木山俊策、宮本聖二
編集:古田大輔、藤森かもめ
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