アメリカ・ヴァンス副大統領が日本のSNS規制を批判? 欧州に向けた発言【ファクトチェック】

アメリカのJ・D・ヴァンス副大統領が日本のSNS規制を批判したという言説が拡散しましたが、誤りです。ヴァンス氏は2025年2月に欧州のSNS偽情報対策を批判する演説をしていますが、日本に向けた発言ではありません。
検証対象
2025年2月24日、「JDヴァンス副大統領が日本のSNS規制を批判」という情報が動画と共に拡散した。
2025年3月3日現在、この投稿は6700件以上リポストされ、表示回数は83万回を超える。この投稿について「ヴァンス副大統領の言う通りです」「ありがとう!」というコメントの一方で「どこ情報?」という指摘もある。
検証過程
動画の内容は
拡散した投稿の動画は1分5秒。ヴァンス副大統領と石破茂首相の画像を使って、独自のナレーションをつけている。以下のような内容で、ヴァンス氏が日本政府を批判したと説明している。
「アメリカの副大統領ヴァンス氏は日本政府が進めるSNS規制について言論の自由を脅かすものだとして強烈な批判を展開している」「ヴァンス氏はSNS上の言論を政府が規制することが単なる情報のコントロールにとどまらず民主主義の根幹を揺るがす事態になる可能性が高いと警鐘を鳴らしている」
ヴァンス氏は欧州の言論の自由について発言
ヴァンス氏は2025年2月14日、ドイツで開かれた「ミュンヘン安全保障会議」で演説し、欧州の問題はロシアや中国など外部からではなく「内部からの脅威だ」と欧州の民主主義国家のあり方を厳しく批判した(CNN、BBC)。
その中でSNSの偽情報対策を「言論の自由の弾圧」と糾弾した(時事通信)。
ホワイトハウスはこの演説をYouTubeで公開しているが、19分30秒の中で日本には全く言及していない(Vice President JD Vance Delivers Remarks at the Munich Security Conference)。
ヴァンス氏のX投稿などを確認しても、日本のSNS規制に関する発言は見つからない。
なお、ヴァンス氏の演説については、ドイツ公共放送ドイチェ・ヴェレがファクトチェックし、EUのSNSに対する法規制について述べた箇所はミスリードだと検証している。
日本と欧州の違い
欧州は世界的に、プラットフォーム上の情報に関する法的な規制が進んでいることで知られる。2024年2月にEUでの適用が開始されたデジタルサービス法(DSA)は、違法情報への規制だけでなく、偽情報に関しても対応を求めている(EU DSA)。
DSAは偽情報を大きなリスクと捉え、プラットフォーム事業者に明確な対応を義務付ける。一方、日本の法規制は違法情報を中心とし、偽情報に関しては、既存の法律に違反するものでなければ自主的な対策が主となるという違いがある。
判定
ヴァンス氏は欧州のSNS偽情報対策について「言論の自由の弾圧」と批判しているが、日本政府に向けたものではない。よって誤りと判定した。
検証:木山竣策、宮本聖二
編集:野上英文、古田大輔
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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