菅義偉元首相が「外国では移民が増えても犯罪がない」と発言? インバウンド観光の発言を改変【ファクトチェック】
自民党の菅義偉元首相が「外国では移民が増えても犯罪がない、だから10分で決めて観光立国化してどんどん外国人を入国させた」と発言したとする動画が拡散しましたが誤りです。日本へのインバウンド外国人観光客についての発言を改変したものです。
検証対象
2025年1月4日、菅氏が「外国では移民が増えても犯罪がない、だから10分で決めて観光立国化してどんどん外国人を入国させた」と発言したという情報がXで拡散した。
2025年1月7日現在、この投稿は5900件以上リポストされ、表示回数は32万件を超える。投稿について「日本を崩壊させる」「嘘つき」というコメントがついている。
検証過程
検証対象のリンクは、まとめサイト「JAPAN NEWS NAVI」の記事を引用している。まとめサイトは、Xユーザーが2024年8月24日に投稿した菅氏と実業家の堀江貴文氏が対談している動画を引用している。
菅氏と堀江氏の対談をGoogleで検索すると、2022年3月に堀江氏のYouTubeチャンネルに投稿された動画「総理時代はやりたいことをやった!菅前総理の功績と今後の展望とは?【菅義偉×堀江貴文】」が見つかる。
動画は計14分で、観光について語っているのは「縦割り行政の打破」というテーマの一部だ(10:52〜)。菅氏は、行政の縦割りを打破する例として観光について語っている。該当部分を発言の意味を変えずにまとめると、以下の通りだ。
日本のインバウンドを増やそうとしたが日本のビザは取りにくい。法務省と警察庁がこの鍵を握っていたが、(観光客による)犯罪を恐れていた。しかし海外は入れても犯罪がない。官房長官になり、安倍総理からの方針として観光立国を目指すことになった。関係閣僚を集め、特に法務大臣と国家公安委員長にお願いをして10分で決めた。
つまり、菅氏は日本に一時的に滞在する外国人観光客に関して「海外は入れても犯罪がない」と話しており、移民受け入れの話ではない。
国際移民について、正式な法的な定義はないが、一般的に「定住国を変更した人々」を意味する(国連広報センター)。外国人観光客は含まれない。
菅氏は、官房長官だった時と首相就任後、観光庁の予算拡充や地方のインフラ整備などで観光立国を推進。2019年には訪日外国人旅行者数が当時として過去最高の3188万人となった(日本政府観光局)。
まとめサイトが引用した動画は、オリジナルの動画から切り取り、細かく編集をした37秒のもので、さらにオリジナルを左右反転させている。
判定
菅氏は海外から日本への観光客を増やすという話題の中で「海外は犯罪がない」と語っており、移民については発言していない。よって誤りと判定した。
検証:木山竣策
編集:藤森かもめ、宮本聖二、野上英文、古田大輔
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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