斎藤知事は「全国知事会議」の出席率36%? 2つの会議を混同【ファクトチェック】

斎藤知事は「全国知事会議」の出席率36%? 2つの会議を混同【ファクトチェック】

兵庫県の斎藤元彦知事が、百条委員会の尋問を欠席して政府主催の全国知事会議に出席すると報じられました。この件について「斎藤知事のこれまでの全国知事会議出席率=36%」という主張が拡散しましたが、誤りです。全国の知事が集まる会議には、斎藤知事が今回出席する政府主催の「全国都道府県知事会議」と、全国知事会が主催する「全国知事会議」があり、拡散した表は全国知事会主催の出欠です。斎藤知事1期目の全国都道府県知事会議への出席率は約7割です。

検証対象

2024年11月19日、「斎藤知事のこれまでの全国知事会議出席率=36%」という投稿が拡散した。投稿には「全国知事会議 知事出席状況」という表が添付され、斎藤知事は1期目の2021年8月30日から2024年8月2日までの11回中4回出席(出席率36%)したことになっている。

投稿は2024年11月22日時点で約6000件のリポストと約230万件のインプレッションを獲得している。

「今まで通り休むべき。百条委員会の方が大切だ」「2期目当選して最初の知事会、最優先に決まってるやろ」と賛否のコメントが付く一方で、「今回は政府主催の全国知事会議ですね。通常の全国知事会議とは異なります」といった指摘もある。

検証過程

百条委員会とは

百条委員会は、地方自治法100条1項の規定により、地方議会がその地方自治体の事務に関する調査をするため、関係者などの出頭や証言、記録の提出を請求することができる特別委員会の通称だ。正当な理由がないのに出頭を拒否したり、証言や記録の提出をしなかったときや、虚偽の陳述をしたときは刑事罰の対象となる(地方自治法100条3項、同7項)。

斎藤知事のパワハラ疑惑などをめぐり、兵庫県議会は2024年6月に百条委員会を設置した。委員会は11月25日の証人尋問に斎藤知事の出頭を要請していたが、斎藤知事は「重要な公務」のために欠席すると議会に届け出た(県議会)。

斎藤知事が出席する「全国知事会議」とは

斎藤知事の欠席理由は「政府主催の全国知事会議」に出席するため。県議会も正当な理由として欠席を認めた(神戸新聞)。

政府主催の全国知事会議とは、毎年1回、11月頃に総理官邸で開かれる「全国都道府県知事会議」のことだ(総務省)。

これとは別に、全国の知事で組織する「全国知事会」が主催の「全国知事会議」もある。毎年2〜3回ほど、東京・永田町の都道府県会館や各都道府県の会議場で開かれる。政府主催の「全国都道府県知事会議」と全国知事会主催の「全国知事会議」の両者は全く別の会議だ。ただし、二つの会議を同じ日に開くこともある(全国知事会)。

拡散した表は2つの会議を取り違えている

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、斎藤知事の「全国都道府県知事会議」への出席率を検証した。

JFCが作成した斎藤知事の全国都道府県知事会議と全国知事会議への出欠状況の表

政府が主催する「全国都道府県知事会議」は、斎藤知事が1期目に就任した2021年8月以降、2021年11月26日、2022年11月7日、2023年11月13日の計3回開かれている。

兵庫県広域調整課によると、2021年度と2023年度は出席、2022年度は欠席したという。ここから計算すると、出席率は約66.7%だ。

一方で全国知事会主催の「全国知事会議」は2021年8月以降、2021年に2回、2022年に2回、2023年に3回、2024年に1回の計8回開かれている。全国知事会公式サイトの出席者名簿によれば、斎藤知事は2021年11月2022年7月2023年7月2024年8月の4回出席し、2021年8月2022年7月2022年11月2023年7月2023年8月2023年11月2024年8月の7回欠席している。これは拡散した表の出欠状況と同一だ。

拡散した表は2つの会議を取り違え、「全国知事会議」の出欠状況を示している。

判定

「斎藤知事のこれまでの全国知事会議出席率=36%」として拡散した表は誤り。政府が主催する「全国都道府県知事会議」と全国知事会が主催する「全国知事会議」を取り違えたものだ。斎藤知事は1期目の在任中に3回開催された全国都道府県知事会議へ2回出席していて、出席率は約66.7%だ。

あとがき

兵庫県知事選挙を巡っては、テレビや新聞などのマスメディアの影響力が低下しソーシャルメディアでの選挙情報が拡大する中で、斎藤知事と対立候補の稲村氏の双方に対して偽・誤情報が拡散しました。

これまでにJFCでは選挙や政治家に関する偽・誤情報に対して党派や主義主張を問わずファクトチェックしています。ソーシャルメディアで選挙情報が氾濫する現代における偽・誤情報の解説記事も参考にしてください。

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検証:リサーチチーム、木山竣策
編集:古田大輔、藤森かもめ、宮本聖二

判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

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元兵庫県議の急死をめぐる自らの投稿を立花孝志氏が投稿を削除しましたが、その背景に新聞によるファクトチェックがありました。去年11月の兵庫県知事選挙で、県警内部で斎藤氏以外の候補を応援するよう通達が出たという誤った情報を姫路市議が拡散させました。川田参院議員の発言で拡散したコロナワクチンの特定のロットで接種者全員が死んでいるという情報を検証しました。官民共同で偽・誤情報対策のためのリテラシー向上の啓発活動が始まることになりました。 ✉️日本ファクトチェックセンター(JFC)がこの1週間に出した記事を中心に、その他のメディアも含めて、ファクトチェックや偽情報関連の情報をまとめました。同じ内容をニュースレターでも配信しています。登録はこちら。 JFCからのお知らせ セミナー「新たなテクノロジーと偽情報 -AIの脅威と活用-」中止 1月30日に予定していたセミナー「新たなテクノロジーと偽情報 -AIの脅威と活用-」(共催:日本ファクトチェックセンター(JFC)、Code for Japan、早稲田大次世代ジャーナリズム・メディア研究所、協力:アメリカ大使館)は、

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