衆院補選「小池と乙武だけに警察が出動しているのは明らかに違法」?【ファクトチェック】
衆議院補選での街頭演説に関して「公務員が特定の政治団体に肩入れしてはいけないので、小池と乙武だけに警察が出動しているのは明らかに違法」という言説が拡散しましたが、誤りです。小池百合子氏に限らず都知事は警察の警護対象となっています。
検証対象
2024年4月19日、小池都知事と衆院補選に東京15区から出馬している乙武洋匡氏を指して、「公務員が特定の政治団体に肩入れしてはいけないので、小池と乙武だけに警察が出動しているのは明らかに違法」という言説が動画と共に拡散した。
リンク先のYouTube動画のタイトルは「東京15区衆議院補選、城東警察署に今から出頭LIVE」。アカウント名は「チャンネルつばさ ・黒川あつひこ」で、衆院補選東京15区に候補者を立てているつばさの党の黒川敦彦代表の名前で運営されている。
動画は、屋内で7~8人の男性を前に、撮影者側が「小池がいるからあんだけ警察来たよね?」「なんで公務員のお前らが乙武と小池のだけ来てんだよ」「犯罪者だからね テメェら」などと発言している。
Xの投稿のアカウントは、今回東京15区で立候補している人物のものだ。
この動画は、4月26日時点で37万回以上表示され、450件以上のリポストを獲得している。
投稿について「警察権力の暴走」「明らかに不公平」というコメントがつく一方で「都知事なんだから警備がつくのは当たり前」という指摘もある。
検証過程
乙武氏は衆院補選に東京15区から出馬している。小池都知事が街頭演説の応援に駆けつけ、乙武氏が、その様子をXに投稿している。投稿主はその警備について発言していると思われる。
警察法施行令に基づき制定された警護要則は、「警護対象者とは内閣総理大臣、国賓その他その身辺に危害が及ぶことが国の公安に係ることとなるおそれがある者として警察庁長官(以下「長官」という。)が定める者」としている。
都知事の警護は警護官が担当し、東京新聞は<都知事そもそも> で「首都の代表は厳重に身辺を守られる。首相や閣僚、主要政党幹部ら国の要人と同様、警視庁の警護官(SP)による警護を受ける」と紹介している。
警視庁は警護対象者の決め方を公表していないが、舛添元都知事は任期中に「基本的に、家を一歩出た瞬間から、常に警護官、SPさんがついています」と発言している(舛添前知事「知事の部屋」)。石原慎太郎氏が都知事の時も、自宅の前に警察官の詰め所が設けられ、報道各社は、その周りで石原氏が現れるのを待っていた。都知事は選挙や演説の際に限らず身辺を守られる対象となっている。
日本ファクトチェックセンター(JFC)が警視庁に取材したところ、以下の回答があった。
都知事が警視庁の警護の対象になっているかどうかについては、「警護要則において警護対象者として明示しているのは内閣総理大臣、国賓のみであり、その他については 、個々具体的にいずれの者を警護対象者として指定されているかについては明らかにできません」と答えた。
また、選挙の応援時に、警視庁だけでなく、現地の警察署にも協力を求めて都知事を警護するかどうかという質問については、「警護を実施する場面や体制を明らかにすると、今後の警備に支障を来すおそれがあるため、お答えを差し控えさせていただきますが、警護については、警護対象者をめぐるその時々の情勢等に応じて必要な措置を講じています。なお 、選挙警備であるか否かにかかわらず、警護警備は警察署と本部が連携して実施しています」という回答だった。
判定
「小池と乙武だけに警察が出動しているのは明らかに違法」という言説は誤り。警視庁の警察官は特定の候補のために出動しているのではなく、現職都知事の警護のために出動している。
検証:リサーチチーム、宮本聖二
編集:野上英文、藤森かもめ、古田大輔
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