国民民主党は強制的親子別姓を推奨? 公約は選択的夫婦別姓【ファクトチェック】

国民民主党は強制的親子別姓を推奨? 公約は選択的夫婦別姓【ファクトチェック】

2024年の衆議院選挙をめぐり、国民民主党が「強制的親子別姓を推奨」というような言説が拡散していますが、誤りです。国民民主党の公約は選択的夫婦別姓の導入で、「強制的親子別姓」とは異なります。

検証対象

2024年10月15日、「玉木さんの国民(民主党)は強制的親子別姓を推奨よね?」という言説が投稿された。

2024年10月17日現在、この投稿は80件以上リポストされ、表示回数は1.5万件を超える。投稿について「個人的には反対してほしい」「その一件で国民民主党 の選択肢はなくなりました」というコメントの一方で、「デマ」という指摘もある。

「強制的親子別姓」というような言説は、選択的夫婦別姓を批判するものとして、これ以外にも多数拡散している(例1例2)。

検証過程

選択的夫婦別姓制度は「強制」ではない

一般に「選択的夫婦別姓制度」と呼ばれるが、民法等の法律では、「姓」や「名字」のことを「氏(うじ)」と呼んでいることから、法務省は「選択的夫婦別氏制度」と呼んでいる。選択的夫婦別氏制度とは、夫婦が望む場合には、結婚後も夫婦がそれぞれ結婚前の氏を称することを認める制度だ(法務省)。

選択的夫婦別姓制度に対する政党ごとの姿勢は2024年衆議院選挙でも注目されている。NHKのアンケートによると、公明党、共産党、れいわ新選組、社民党の4党は候補者全員が「賛成」と答え、次いで、立憲民主党、国民民主党、日本維新の会の順に「賛成」の度合いが高くなっているという(NHK 衆院選 候補者アンケート 「ジェンダー」)。

拡散した言説には「強制的親子別姓」とあるが、そのような制度の導入を訴えている政党はない。ネット上では「選択的夫婦別姓が導入されたら、親子で別姓になるのではないか」という観点から、この言葉が使われる事例が見られる。

しかし、そもそも「選択的夫婦別姓」は夫婦が望む場合に別姓を使いつづける制度なので、すべての親子への「強制」ではない。

また、夫婦別姓の場合の子どもの名字については、法務省はウェブサイトで「平成8年の法制審議会の答申では、結婚の際に、あらかじめ子どもが名乗るべき氏を決めておくという考え方が採用されており、子どもが複数いるときは、子どもは全員同じ氏を名乗ることとされています」と回答している。

国民民主党は否定

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、国民民主党に取材した。

国民民主党は「2024政策パンフレット」を公開しており、選択的夫婦別姓制度導入を公約としている。そこには「選択的夫婦別姓制度を導入します。多様な家族の在り方を受け入れる社会を目指します。婚外子差別となっている戸籍法の改正を目指します。法の狭間で苦しむ無戸籍・無国籍問題についても引き続き取り組みます」と書いている。

その上で、「強制的親子別姓とは一言も書いていません」とJFCの取材に回答した。

判定

2024年の衆議院選挙をめぐり、「玉木さんの国民(民主党)は強制的親子別姓を推奨」という言説が拡散したが、誤り。国民民主党は、公開した公約に選択的夫婦別姓制度の導入を公約にあげているが、そこに「強制的親子別姓」とは書いていない。また、選択的夫婦別姓は夫婦による「選択」なので「強制」ではない。

検証:木山竣策
編集:宮本聖二、古田大輔

判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

ファクトチェックやメディア情報リテラシーについて学びたい方は、こちらの無料講座をご覧ください。ファクトチェッカー認定試験や講師養成講座も提供しています。

理論から実践まで学べるJFCファクチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介
日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験
JFCファクトチェック講師養成講座を開講 お申し込みはこちら
日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックや関連するメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を開始します。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 開講は10月26日で、お申し込みはこちら。1回の受講で修了となり、今後の開講予定はウェブサイトやニュースレターなどで公開します。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にどのような知識と行動が偽・誤情報対策として有効かを分析し、誰でも無料で視聴できる「ファクトチェック講座」を2024年7月に公開しまし

もっと見る

秋田県知事「熊に小型の爆発物を食べさせて爆破すればハンターは必要ない」と発言? 後半部分が捏造【ファクトチェック】

秋田県知事「熊に小型の爆発物を食べさせて爆破すればハンターは必要ない」と発言? 後半部分が捏造【ファクトチェック】

秋田県の佐竹敬久知事が「熊に小型の爆発物を食べさせて爆破すればハンターは必要ない」と発言したとする情報が拡散しましたが、不正確です。拡散した投稿はまとめサイトのXアカウントからで、見出しは掲示板サイトのスレッドタイトルを引用しているだけです。後半部分が捏造です。 検証対象 2024年12月18日、「秋田県知事『熊に小型の爆発物食べさせて爆破すればハンター必要ない』」という情報が拡散した。 2024年12月20日現在、この投稿は340件以上リポストされ、表示回数は8万回を超える。投稿について「狂ってる」「それはちょっと」というコメントの一方で「マジでいった?」という指摘もある。 検証過程 まとめサイトは掲示板サイトのタイトルを引用 検証対象のリンクは、まとめサイト「TweeterBreakingNews-ツイッ速!」の記事だ。 タイトルは掲示板サイト5ちゃんねるのスレッド「【悲報】秋田県知事「熊に小型の爆発物食べさせて爆破すれはハンター必要ない」←🧸」で、読売新聞オンラインが2024年12月17日にライブドアニュースで配信した記事「秋田県知事、ク

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
年金支給開始年齢は80歳からにすべきと小泉進次郎氏が発言? AIが誤情報を再生産【ファクトチェック】

年金支給開始年齢は80歳からにすべきと小泉進次郎氏が発言? AIが誤情報を再生産【ファクトチェック】

「小泉進次郎氏が2024年9月に年金支給開始年齢は80歳からにすべきと発言した」という情報が拡散しましたが、誤りです。拡散した情報はAIが生成したもので、小泉氏の発言は年金受給開始の選択の幅を広げる内容のものでした。 検証対象 2024年12月19日、「忘れっぽい日本国民の皆様のために貼っておきます」という文言と共に、「年金支給開始年齢は80歳からにするべきだと発言していた政治家は誰ですか?」という質問に生成AIが「小泉進次郎です」と回答したという情報が拡散した。 2024年12月20日現在、この投稿は8300件以上リポストされ、表示回数は224万回を超える。投稿について「元取れるの100歳超え」「AIが社会問題解決する」というコメントの一方で「少し調べればデマ」という指摘もある。 検証過程 以前にも拡散した誤情報をAIが再生産 自民党の小泉進次郎氏が「年金支給開始年齢は80歳からにすべき」と発言したという情報は以前にも拡散している。 自民党総裁選に絡んで2024年9月、日刊ゲンダイの記事をもとにしたまとめ記事などによる情報が拡散したもので、日本

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
WHO事務局長が「コロナ感染に効くワクチンは無い」と発言? ワクチン開発前のニュースの切り取り【ファクトチェック】

WHO事務局長が「コロナ感染に効くワクチンは無い」と発言? ワクチン開発前のニュースの切り取り【ファクトチェック】

世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長が「コロナ感染に効くワクチンは無い」と発言したとの主張が拡散しましたが、ミスリードで不正確です。2020年8月3日の会見で「(新型コロナウイルスの)感染から守ってくれるワクチンをみんなが期待している。しかし現時点で特効薬はなく今後もないかもしれない」と発言していますが、当時は新型コロナウイルスのワクチンを開発中でした。 検証対象 2024年12月18日、「WHO テドロス事務総長 コロナ感染に効くワクチンは無い と言う」などと主張する投稿が拡散した。 投稿にはニュース番組と思われる22秒の動画が添付されている。「WHO ワクチンに期待高まるも「感染から守る特効薬ない」などの字幕が出た後、以下のようにニュースが読み上げられる。 アナウンサー:WHOは、新型コロナウイルスのワクチン開発が進んでいる一方、現時点では感染から守る特効薬はないとして過度な期待に警鐘を鳴らしました。 テドロス事務局長(字幕):感染から守ってくれるワクチンをみんなが期待している。 しかし、現時点で特効薬はなく、今後もないかもしれない。

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
田村元厚労相が国会で「年収200万円は低収入でない」と答弁?そのような直接的な発言はない【ファクトチェック】

田村元厚労相が国会で「年収200万円は低収入でない」と答弁?そのような直接的な発言はない【ファクトチェック】

自民党の田村憲久・元厚生労働大臣が「年収200万円は低収入でない」と国会答弁したとの主張が拡散しましたが、ミスリードで不正確です。一定以上の所得がある後期高齢者の医療費窓口負担増をめぐり衆議院予算委員会審議で、共産党の宮本徹衆院議員の「年収200万円の75歳以上の方が低所得者なのか高所得者なのか」という質問に「75歳以上の後期高齢者の所得の中では単身で年収200万円は上位30%に該当する」と述べており「年収200万円が低収入ではない」と答弁したわけではありません。 検証対象 2024年12月14日、「田村元厚労相が国会答弁で年収200万は低収入でないと言ってた」などと主張する投稿がX(旧Twitter)で多数拡散した(例1、例2、例3)。 「200万じゃ生活できない」「そう言ってる国会議員の年収を200万にしたらいい!」などのコメントが寄せられる一方で、情報源を疑う声もある。 検証過程 田村元厚労相が200万円に言及した国会の答弁 日本ファクトチェックセンター(JFC)は、国会会議録検索システムで、発言者を田村元厚労相に限定して「二百万」というキー

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)